なんでもいい

榊 海獺(さかき らっこ)

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銀次郎

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銀次郎が転校して来たのは、小学3年生のことだった。銀次郎は和風の名前の割に、フィリピンとのハーフだった。
そして、彼はアレルギーをいくつか持っていた。
しかしながら、そのアレルギーが彼を一躍時の人にした。

まず、ピーナッツ。
当時僕らの中ではビックリマンチョコが流行った。ウエハース1枚とシール1枚がセットになって売られていた。(今も売られている。)
そう。そのウエハースにピーナッツが含まれていたのだ。
当然のことながら、彼はそのウエハースを食べられなかった。
そこで彼は、その食べられないウエハースを配ったのだ。小学3年生の人気取りには申し分ない。お菓子を買えない子ども達が彼のもとへ募り、一躍時の人となった。(らしい。)

次に卵。
当時の小学校給食は、アレルギーは申告制で(多分今も申告制です。)、アレルギー食材を使う食べ物の時は、アレルギーがある子用に別のものを用意していた。しかしながら、ここでまさかの申告漏れが判明する。
その時の献立は卵チャーハンだった。
卵アレルギーの銀次郎は当然食べれない。
そこで何を思ったのか、彼は卵チャーハンの卵だけを取り除く作業を始めたのだ。
その奇行とも思われる行動は、学年中で話題となり、これまた話題を掻っ攫った。(らしい。)
僕は彼ほどアレルギーをポテンシャルに変えた人間を知らない。

ちなみに僕と彼が仲良くなったのは、小学5年生になり、クラス替えのタイミングで同じクラスになったことがキッカケだった。
クラス替えからすぐに打ち解け、彼の家へ遊びに行くようになった。
しかしながら、そこで彼の部屋からエロ本を見付けてしまうのだ。
ちなみに当時の僕は、お袋の友人が持ち込んだエロ本が家に数冊あったので耐性があった。しかしながら、それを知らない銀次郎は慌てて
「誰にも言わないで欲しい。」
と言っていた。今思うと可愛いエピソードだ。

銀次郎は当時の僕らの間では、かなりませていた。
いち早く彼女を作り、デートをしたり。
僕が他の女の子と同伴し、4人でグループデートをしたこともあった。
香水なのか、いつもいい香りがしていた。

そんな彼は今、地元でバーの雇われ店長をしている。
今でもあの香りを漂わせているのだろうか。
何度かバーに足を運んだが、毎回泥酔して記憶を飛ばすのでよく覚えていない。
頃合いを見て、また足を運ぼうか。
それまで元気で居ろよ。銀。
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