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キーパーグローブ

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 2022年12月1日。現在カタールではサッカーのワールドカップが開催されている。何を隠そう、僕にもサッカー選手に憧れていた時期があった。

 あれは2002年。日韓ワールドカップが行われていた時だった。僕はその頃丁度『キャプテン翼』に出逢った頃だったこともあり、どっぷりワールドカップ熱に浮かされていた。
 当時の僕は、ドイツ代表を推していた。当時のドイツ代表といえば、ミロスラフ・クローゼにオリバー・カーン、ミヒャエル・バラックを中心に、ヤンカー、ハマン、ラメロウ、トルステン・フリンクスなんかがいた。オリバー・ノイビルも居たな。中でも、僕はクローゼとカーンが好きだった。

 クローゼのような軽快な身のこなしが出来ないことなど、やる前から分かっていた。そこで僕はゴールキーパーのカーンに強い憧れを抱くことになる。
 形から入るタイプの僕は、まずゴールキーパーのグローブが欲しかった。あのミッキーマウスがしている手袋のようなやつだ。
 数ヶ月分のお小遣いを貯め、それを軍資金にスポーツショップへ。近所にあった個人経営のスポーツショップだった。
「あの、サッカーでゴールキーパーが使う手袋ありますか?」
「サッカーの手袋だね。あるよ。」
「今\3,000しかないのですが、買えますか?」
「えっとね。\800だね。」
 夢にまで見たゴールキーパーのグローブが\800で手に入ると知り、僕は完全に浮かれていた。そして、中身をほとんど見ずに即決で購入。ルンルン気分で帰路に着いた。

 家に帰ってきた僕を待っていたのは、とんでもなくショッキングな出来事だった。購入品の封を開くと、そこに入っていたのはフィールドプレイヤー用の青い手袋だった。いや、滑り止めが付いた軍手のようなものだった。
 そもそもよく考えたら、僕が足を運んだスポーツショップは、野球用品に特化したスポーツショップだった。つまり、そこのお店の人はサッカーに関してはほぼ無知だった。それで間違えられてしまったのだろう。”グローブ”ではなく”手袋”と言ってしまったのも原因か。
 ちなみにその手袋を試しにゴールキーパーグローブとして使ってみた。(無謀)当然のことながら、手に激痛が走ったのは言うまでも無い。

 時は流れ、成人を少し超えた頃、僕は念願のキーパーグローブを手に入れる。上野にあるスポーツショップ ジュエンで、型落ち品を格安で手に入れたのだ。値段は税込で\1,500。なんだ。あの頃のお小遣いで買えたじゃないか。なんて、笑ったのを覚えている。



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