なんでもいい

榊 海獺(さかき らっこ)

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フランス語専攻

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 僕が高校生だった頃、通っていた高校では選択して好きな授業を受講する時間があった。具体的にどんな授業があったのかはよく覚えていないが、僕はフランス語の授業を受講していた。僕がフランス語を選んだのには訳があった。

 僕は英語が苦手だった。中学一年の時に、英語の授業で”Nice to me too”をみんなの前で音読するように言われ、それを”ないすちゅーみーちゅー”と言ってしまって以来トラウマとなり、英語が苦手になってしまった。それが中学一年、二年、三年、高校一年、二年と苦手が払拭されることはなく、気付けば赤点のオンパレードだった。

 高校三年生になってまもなく、選択授業の説明があった。選択科目のリストを見てみると、そこにはフランス語の授業が。それを見た瞬間に。思考のシフトレバーが一気にポジティブ方向に倒れた。

「英語はダメでもフランス語なら行けるかもしれない。」
 
 迷わずフランス語を選択。日本語と英語ではなく、日本語とフランス語のバイリンガルってのもありなんじゃないか。

 数日が経ち、授業当日。指定された教室に向かうと、見たことのない先生が待ち構えていた。ポール先生(男性)。この出逢いが僕の今後を大きく変えることとなる。
 授業自体は簡単な挨拶から始まり、数字の数え方なんかを勉強した。最終的にはフランス語検定を受けるということで、俄然やる気が出た。ここまでは順調だった。ここまでは。

 フランス語を選択していた生徒のうち、男子生徒は僕は1人で、残りは女子生徒が7人だった。夏休み明け、ポール先生がフランスに帰った際にお土産を買ってきてくれた。フランス産のクッキー。当時リプトンが流行っていたことで、大半の生徒がリプトンの紅茶を持っていた。即席のティータイムだ。言わずもがな、紅茶とクッキーの相性は抜群だった。ほのぼのとした時間が流れる。そんな時だった。

「フランス語は別にもういいから、フランスのお菓子もっと買ってきてよ。」
 女子7人の中のリーダー格だった女子が発したこの発言を機に、フランス語の授業は予期せぬ方向に進み始める。

 気付いたらフランス語の授業は、フランス産のお菓子を食べ比べる女子会になった。フランス語検定どころではない。教科書すら開くことはなくなった。
 学校側としても、フランス語は必修科目ではない為、それを特に問題視することはなかった。挨拶覚えたしいいか。みたいな。

 さて、ここで溢れたポール先生と僕の男性陣。僕らは何をしていたのか。

”僕はバンドマンでギタリストだった。”

”ポール先生は、実はフランスのハードコアバンドのギタリストだった。”

 結局フランス語は挨拶と数字の読み方しか身に付かなかったが、ギタースキルだけ爆上がりし、気付いたら学年では負けなしのギタリストになっていた。







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