なんでもいい

榊 海獺(さかき らっこ)

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ワイヤレス

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 昨今、トレンドなのかと疑うほど様々な物がワイヤレス化している気がする。何を隠そう僕も現在ワイヤレスイヤホンを使用しているのだが、ケーブル至上主義的だった僕は、なかなか手を出すのに苦労したものだ。


 中学生二年生から二十歳過ぎまでMDウォークマンを愛用していた古きを愛す系男子の僕。ケーブルは消耗するのでちょいちょい買い替えたり、ビニールテープで補強したりして使っていた。イヤホンなんかもそうだった。この頃から僕のケーブル至上主義は始まっていた気がする。電子機器はケーブルが繋がっていないと信用ならなかった。

 そんな中、数年前にワイヤレスイヤホンなる物が世に出てきた。走りはApple社だっただろうか。最初にそのことを聞いた時は耳を疑った。
「え。無線で? 大丈夫なん? てか、絶対失くすじゃん。無理無理。」
 なんてね。無線の信用度もあるけど、どちらかと言うと失くす心配が一番強かった気がする。周りの人間が次々にワイヤレスイヤホンデビューする中、頑なに有線イヤホンを使っていた。
「一度ワイヤレス使うともう戻れんな。」
「そんなバカな。」
 みたいな。

 そんなことをしていたら、いつのまにか某感染症下に。外出がなかなか出来ず、飲みにも行けないストレスが思ったより強く感じていた。家にいる間はTSUTAYAに通い、借りてきたドラマや映画のDVDをひたすら観る毎日。家のパソコンは職場でもらった十年選手のノートパソコンだったこともあり、音質は最悪だった。イヤホンやヘッドホンを使わなくては話にならないレベル。そんなところからも溜まるストレス。それでもなんとか耐えていたのだが、ノートパソコンのイヤホンジャックが逝かれた。

 さすがに唯一の楽しみだったドラマや映画鑑賞が出来なくなってしまうというのは、耐えられそうになかったので、近所の電気屋に相談へ。
「それならワイヤレスにしちゃえば? Bluetoothの受信機が一千円であるから、それとワイヤレスイヤホン買えば、今のパソコンのまま使えるよ。」

 満を持してワイヤレスイヤホンデビュー。それはもう凄い快適だった。何より、ケーブルがないから、冷蔵庫に飲み物を取りに行ったり、お手洗いに行ったりする時は動画を止めれば、いちいちイヤホンやヘッドホンを外す必要が無く、ケーブルがないから、寝っ転がったりも出来る。僕の人生で革命でも起きたかのようだった。

 それ以降僕の毎日では無くてはならない物となった。一度使うともう戻れないというのはこういうことだったのか。
 結局、一番心配していた紛失も一度もないまま今に至る。部屋の中で失くしかけても、爆音で音楽を掛ければ場所が分かる。最近知ったのだが、最新のモデルはGPSが付いている物もあるんだとか。便利な世の中になったものだ。





 
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