Baseball Side Story

榊 海獺(さかき らっこ)

文字の大きさ
36 / 37

ジャイロボールを投げたい

しおりを挟む
 野球少年がみんな一度は憧れるものがある。そう。それはジャイロボールだ。
 ジャイロボールとは、縦回転をする通常のストレートとは違い、銃口から放たれた弾丸のようにスパイラル回転で投げられるボールのことである。

 僕はこのジャイロボールについて、高校生の頃から独自の研究を進めていた。といっても野球部でもなければ、草野球をしているわけでもなく、かといって知り合いにキャッチャーを務めてくれる人間も居なかった。(たとえ居たとしても、実験的試みで怪我をさせてしまう可能性がある為、頼めなかったと思う。)
 では、どうやって研究したのか。それは、ベッドに仰向けで横たわり、天井に向かって軽く軟式のボールを投げて、捕ってを繰り返したのだ。ギリ天井に届かないくらいの高さを狙って軽ーくね。肉眼で回転方向が見えるように軽ーくね。

 この実験を始めてすぐに気付いたことがあった。それは、力加減の難しさ。強すぎると天井に当たってしまうし、弱すぎると上手く捕れない。そして、何より危ない。(そりゃそうだ。笑) 捕球を失敗すれば、顔面にボールが落ちてくる。
 そこで、一先ずボールを軟式ボールから軟式ボールを模したゴムボールに変更した。これで当たっても大丈夫。軟式ボールを模しているだけあって、縫い目を模した模様(以降、縫い目)も同じで指に掛かる。問題なく実験を続けられそうだ。ひたすら投げて、捕ってを繰り返した。握り方や投げ方を変えながら、何十回、何百回、何千回と繰り返して投げて、捕って、投げて、捕って。

 どれくらいの月日が経ったかは忘れてしまったが、とうとうその時がやってきた。放ったボールがジャイロ回転に。慌てて握りを確認する。親指、人差し指、中指の三本と薬指の脇でボールを握って、且つボールに触れる箇所は全て縫い目の上。握りはこれだった。
 次に投げ方。腕の振りはオーバースローとスリークウォーターの間。親指が真上を向く角度でボールを放つ。そうするとジャイロボールになることが分かった。
 何度と何度も繰り返し投げ、慣れてきたところで、軟球ボールに持ち替えて試す。大丈夫。ちゃんとジャイロボールになる。これで完璧だ。こうなると考えることは一つ。「思いっきり投げてみたい。」

 野球好きの友達をキャッチボールの体で呼び出し、その流れからお願いしてみる。
「ちょっとさ、ピッチングもしてみたいからキャッチャーやってくれない?」
「うん。いいよ。」
 しゃがんでグラブを構える友達に向かい、ジャイロボールを放つ。

 シュッ。ストン。

 僕の放ったボールは確かにジャイロボールだった。しかし、何故かキャッチャーの手元でフォークボールのようにストンと落ちた。どういうことだろう。驚きを隠しきれない。しかし、そんな僕よりも驚いたのは友達の方だった。
「あぶねーよ。なんで落とすんだよ。」
「ごめん。ごめん。握りがいけなかったのかもしれない。」
「気を付けてくれよ。」
 実際に投げてみて分かったことがある。それは、通常のストレートと違って球が伸びない為、ジャイロボールを投げるには相当な力が要るということ。その力が足りないと推進力が回転に負け、変化球になる。そして何より、僕の投げ方では手首にとんでもなく負荷が掛かる。これを投げ続けるのは厳しいだろう。僕には難しいことが分かった。
 こうして僕のジャイロボールへの憧れは終わりを告げた。

 ちなみに、今回僕が書いた投げ方は絶対に真似しないで欲しい。僕は人より手首が柔らかく、可動域が広い。そこを利用しての投げ方なので、真似をしたら一球で手首を痛める可能性があります。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...