Baseball Side Story

榊 海獺(さかき らっこ)

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バッテリー

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 GBBの非常に不甲斐ない初戦を終え、僕はバッテリー2人と特訓を行うことになった。一度に2人を相手に出来るほど僕は器用ではないので、時間や日を分けて1人ずつ向き合うことにした。

 まず、ピッチャーのハル。
 ハルは小学校入学のタイミングから児童館に来ていたので知っていた。入学時点ではシュンとタクの3人でいつも連んでいた。いつ見ても3人セットだったし。しかし途中から様子が変わった。
 小学生の頃、誰もが一度はおもちゃやゲームの虜になったことだろう。低学年であれば尚更。シュンやタクも例にそぐわず、おもちゃやゲームの虜になっていた。でも、ハルだけは様子が違った。みんながおもちゃやゲームで遊んでいる中に、いつまで経っても入っていかない。
 気になったので、さりげなく本人に聞いてみた。
「一緒にやらないの。」
「うん。ウチは買ってもらえないから。」
 そうか。そもそもその物が無ければ入っていけないか。僕も小学校低学年の頃似たような経験があったので、その気持ちは痛いほど分かった。

 それからというもの、工作好きだった僕はハルと色んなものを作った。おもちゃやゲームがないのなら、それっぽい外観を目指して、どこまで近付けられるかで遊んだ。厚紙でデジモンみたいなのを作ってみたり、カービーのゲームも作ったっけか。  
 実を言うと、新聞野球もその内の一つだった。たまたま一緒に作った新聞グラブが彼の中では思いの外、ハマったのだ。
 ハルとはチームでの練習以外でも練習をしていた。雨の日は、児童館の廊下の突き当たりに的を作って、そこに向かって投球練習をした。(今思うと、まったく迷惑なヤツだ。笑)
 人付き合いはあまり上手いタイプじゃなかったけど、本当に真面目で良い奴だった。僕はそんな彼が気に入ってた。

 さて、もう一人。キャッチャーのブラピだ。
 ブラピはブラッドピットに似ているからブラピ。ではなく、色黒でまんまる体型だったのでブラックピッグ(黒豚)でブラピ。(今思うととんでもないネーミングである。イジメに近いんじゃないか? ごめんよ。ブラピ。) ちなみに本人には「ブラッドピットに似てるから。」で押し通していた。(実は未だに本名は知らない。聞いた気はするんだけどなぁ。なんか杉が付いた名前だった気がする。多分。多分。)

 ブラピは体型的にキャッチャーっぽかったのでキャッチャーになった。本人は最初嫌がってたけど、そこは今で言う、パワハラ的なパワーなハラスメントでなんとか。笑
 とりあえず、「キャッチャーミット着けられるのはチームで一人だけなんだぞ。」的なことで誤魔化した気がする。
 ブラピは、なんだかんだあの頃一番一緒に居た気がする。途中からハルに軟球を投げさせるに当たり、新聞のミットでは流石に可哀想だと、ダンボールで強度を上げたミットを開発したり。それなら防具も作るか!とダンボールと輪ゴムで作ったものだ。一式が完成した時はハイタッチして喜んだ記憶がある。

 GBBを結成して半年を待たずに、チームは空中分解した。その後も練習をしていたハルとブラピも、僕の部活が忙しくなった関係で自然消滅した。
 その後、二人と顔を合わせることもなくなった。
 
 ブラピのその後は分からないが、ハルはその後少年野球を始めたらしい。噂では、最終的に進学先の野球部でエースピッチャーにまでなったらしい。
 あの時の新聞グラブが無かったら、ハルは野球をしていたのだろうか。ハルが野球に出逢うキッカケになったことが、今でも僕のちょっとした自慢だったりする。
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