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New Gear
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中学に上がって初めての誕生日がやってきた。今までは父からいつもより少し多めのお小遣いをもらう感じだったのだが、この時の僕は違った。
「あのさ。新しいグラブが欲しいんだ。」
「は?」
それもそのはず。父からすれば、少年野球で野球を辞めた僕に必要のない物だった。
「野球部にでも入るのか。」
「いや、入らない。」
「じゃあ、なんで。」
「硬式用のグラブが欲しいんだよ。」
「は?」
今自分で書いていても意味が分からない。野球をやらないのにグラブが欲しいとは。オブジェにでもするのか。
今となってはよく覚えていないが、どうにかこうにか父を言いくるめ買ってもらえることに。
「じゃあ、御茶ノ水行くぞ。」
御茶ノ水は楽器屋街で有名だが、坂を下ると今度はスポーツ用品店が多数立ち並んでいた。その中の一つのお店に入り、野球用品コーナーへ。
「た、高ぇ。」
今まで軟式用のグラブしか買ったことが無かったので、初めて見る硬式用のグラブは驚くほどに高価だった。軟式用なら3つくらい買えるんじゃないかくらい。
父の顔をチラッと見る。非常に渋い顔をしている。
「軟式用じゃダメなのか。」
「いや、軟式用にしよう。」
流石にここまで高価だということは想像もしていなかった。野球部でもないのにこの価格帯の物をせがむほど僕は捻くれちゃいない。軟式用グラブのコーナーへ。そこで僕はある物を見付けてしまう。
「濱中モデル。」
そう。治ちゃん(濱中治)モデルのグラブがあったのだ。
「これがいい。」
治ちゃんモデルのグラブを手に父に渡す。
「濱中? 誰だそれ。お前ダイエー好きなんだからダイエーの選手のにしろ。」
そうか。父に治ちゃんが好きなことを話してなかったか。慌てて力説するも、聞く耳を持ってくれない。
仕方がないので、辺りを見渡すとダイエーホークスの選手のモデルは一つしかなかった。
「柴原洋モデル。」
そう。あのダイエーホークスの切込み隊長「柴原洋」モデルだった。
1番ライト柴原洋。ダイエーホークスファンであれば誰しもが知る、リードオフマンだ。よし。これにしよう。
父の元へ持っていくと、無事OKが出た。大切に抱えレジの方へ。
レジに持っていくと店員さんが電子レンジのような物を指差す。
「スチーム使いますか?」
「スチーム?」
僕と父の頭上にクエッションマークが浮かぶ。
「グラブにスチームを当てると柔らかく出来るんです。使いますか?」
父の昭和の知識しかない僕らにとって、文明の力はここまできたのかと感心した。しかしながら、そこは昭和の人間である。
「いや。いいです。」
気付くと父はそう答えていた。
帰り道、ビニールバックに入れてもらったグラブを大切に持って帰った。この後、意外にもこのグラブが役に立つなんて、思いもしないで。
「あのさ。新しいグラブが欲しいんだ。」
「は?」
それもそのはず。父からすれば、少年野球で野球を辞めた僕に必要のない物だった。
「野球部にでも入るのか。」
「いや、入らない。」
「じゃあ、なんで。」
「硬式用のグラブが欲しいんだよ。」
「は?」
今自分で書いていても意味が分からない。野球をやらないのにグラブが欲しいとは。オブジェにでもするのか。
今となってはよく覚えていないが、どうにかこうにか父を言いくるめ買ってもらえることに。
「じゃあ、御茶ノ水行くぞ。」
御茶ノ水は楽器屋街で有名だが、坂を下ると今度はスポーツ用品店が多数立ち並んでいた。その中の一つのお店に入り、野球用品コーナーへ。
「た、高ぇ。」
今まで軟式用のグラブしか買ったことが無かったので、初めて見る硬式用のグラブは驚くほどに高価だった。軟式用なら3つくらい買えるんじゃないかくらい。
父の顔をチラッと見る。非常に渋い顔をしている。
「軟式用じゃダメなのか。」
「いや、軟式用にしよう。」
流石にここまで高価だということは想像もしていなかった。野球部でもないのにこの価格帯の物をせがむほど僕は捻くれちゃいない。軟式用グラブのコーナーへ。そこで僕はある物を見付けてしまう。
「濱中モデル。」
そう。治ちゃん(濱中治)モデルのグラブがあったのだ。
「これがいい。」
治ちゃんモデルのグラブを手に父に渡す。
「濱中? 誰だそれ。お前ダイエー好きなんだからダイエーの選手のにしろ。」
そうか。父に治ちゃんが好きなことを話してなかったか。慌てて力説するも、聞く耳を持ってくれない。
仕方がないので、辺りを見渡すとダイエーホークスの選手のモデルは一つしかなかった。
「柴原洋モデル。」
そう。あのダイエーホークスの切込み隊長「柴原洋」モデルだった。
1番ライト柴原洋。ダイエーホークスファンであれば誰しもが知る、リードオフマンだ。よし。これにしよう。
父の元へ持っていくと、無事OKが出た。大切に抱えレジの方へ。
レジに持っていくと店員さんが電子レンジのような物を指差す。
「スチーム使いますか?」
「スチーム?」
僕と父の頭上にクエッションマークが浮かぶ。
「グラブにスチームを当てると柔らかく出来るんです。使いますか?」
父の昭和の知識しかない僕らにとって、文明の力はここまできたのかと感心した。しかしながら、そこは昭和の人間である。
「いや。いいです。」
気付くと父はそう答えていた。
帰り道、ビニールバックに入れてもらったグラブを大切に持って帰った。この後、意外にもこのグラブが役に立つなんて、思いもしないで。
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