11 / 96
第1章
11.初めてのパーティ
しおりを挟む今日セシルは一人で冒険者ギルドに来ていた。まだ朝8時くらいだがギルドの中は何人もの冒険者たちでざわめいている。ここは本当にいつ来ても活気がある。
周囲の様子を伺いながら掲示板を見にいく。またどこかで魔物の被害にあっている人がいるんじゃないだろうかと不安になる。カカシ村のことを思い出すと今でも胸がきゅうっと苦しくなる。
掲示板を見にいく。するとDランクの依頼のところにレーフェンの町への護衛というのがあった。護衛対象は薬師の商人の親子二人と書いてある。うん、普通の人だけで旅はつらいよね。魔物もいるし。依頼日がだいぶ古いようだけど受ける人が居ないのかな? 困っているんじゃないのかな?
早速その依頼書を手に取ろうとすると後ろからポンと肩を叩かれ声をかけられた。
「その依頼を受けるんだったら俺も加えてもらえないか?」
声の方へ振り返ると180センチくらいの長身で、筋肉質だけど細身で引き締まった体つきの若い男が立っていた。背中に大きな剣を背負っていて短い黒髪と黒い瞳が印象的な彼がにこにこしながらセシルを見ていた。笑顔が爽やかで好青年といった印象だ。
感じのよさそうな人だと思ったので彼の提案を受け入れることにした。
「こちらこそよろしくお願いします。僕はセシルといいます。Fランクです」
そう言って右手を差し出すと黒髪の青年はセシルの右手を握り返してにかっと笑って答える。
「俺はケントっていうんだ。Dランクだ。よろしくな!」
ケントは何とセシルよりも2ランクも上の冒険者だった。足手纏いにならないか心配だ。
ケントと握手を交わしたあと受付へ護衛の依頼書を持っていく。彼が受付のレーナさんに依頼書を渡す。
「この依頼をここにいるセシルと俺で受けたいんだが」
そう言ってギルドカードを差し出すと彼女はカードを確認して答えた。
「Dランク冒険者のケントさんとFランク冒険者のセシルさんですね。お二人のみのパーティでよろしいですか?」
「ああ、大丈夫だ」
「かしこまりました。依頼料は完了報酬で全員で大銀貨10枚です。ではこの町の『止まり木』という宿屋に行って、そこに宿泊しているマルコさんという方に会ってください」
「わかった。ありがとう」
ケントはにっこり微笑んでレーナさんに答えた。
ああ、なんだか大人の冒険者がいるとスムーズに運ぶなあ。いちいち過剰に反応されないし。彼の存在がありがたい。
それから彼はセシルに向かって尋ねる。
「今からすぐ依頼人に会いに行ってもいいか?」
「はい、大丈夫です」
それからケントと宿屋『止まり木』へ向かった。到着してすぐに宿屋の主人にマルコを呼び出してもらう。
ロビーで待っていると、30代後半くらいの男とセシルと同じくらいの年のちょっと気の強そうな少女が2階から階段を降りてきた。
「貴方たちが冒険者の方ですか?」
「はい、ギルドで依頼を受けてきました。冒険者のケントです」
「同じく冒険者のセシルです。よろしくお願いします」
挨拶をすると男はちらっとセシルの方を見たあと嬉しそうに話し始めた。
やっぱりセシルが子供なのが気になるのかな?
「そうでしたか。私がマルコです。依頼を引き受けてくださりありがとうございます。最近近くの村でのゴブリン被害の話があり、護衛を引き受けてくださる方がなかなかいらっしゃらなくて本当に困っていたのです。この子は娘のアルマです」
「アルマといいます。よろしくお願いします。ねえ、貴方たちも親子なの?」
アルマの唐突な言葉にケントは驚いて、少しむっとしたように言い返した。
「いやいやさすがに親子はないでしょう。俺は25ですよ。この子は冒険者仲間です」
「あら、そうなの……。貴方みたいな子供が冒険者……」
アルマはそういうと繁々とセシルを見つめる。この反応にはもう慣れてきていたが少しむっとしてしまう。でも今日はケントが一緒だから依頼を引き受けるのに特に問題はないだろう。
マルコが「失礼なことを言うんじゃない。」とアルマを諫めて話を続ける。
「目的地はレーフェンの町です。荷馬車で向かいますが一晩野営をしたとして大体1日半かかります。ここからだと途中で野営をすることになると思います。到着するまでの食事や毛布などはこちらで準備します」
「分かりました。出発はいつにしますか?」
「できるだけ早く出発したいので、貴方たちがよければ今から1時間後にでも待ち合せましょう。私が御者をやります」
「分かりました。それじゃ1時間後にまたここへ来ます。準備をよろしくお願いします」
ケントはそう言ってセシルを連れて宿を後にした。
宿を出たあと街の広場まで歩いていた。依頼の打ち合わせしてもらって助かったのでケントに向かってお礼を言う。
「ケントさん、ありがとうございます。打ち合わせしていただいて助かりました。ギルドの依頼を受けるときには子供相手だとあまりいい顔されなくて」
「さんづけも敬語もいらないよ。まあそうだろうな。子供が冒険者ってのは確かに目立つよな」
「そうなんで……そうなんだよね。初めてギルドに行ったときも『てんぷら』にあって大変だった」
「天ぷら? ああ、もしかしてテンプレか?」
ケントはセシルの話を聞いてけらけらと笑った。
「他の冒険者に絡まれたのか。それでそのときはどうしたんだ?」
「剣を突きつけて脅したら逃げていったよ。連れの女の子に手を出そうとしてたから」
「へえ、やるじゃないか。しかし、その年でガールフレンドか……。そらお前絡まれるわ。俺なんかもう何年も彼女いないんだぜぇ。お前美少年だからなー、モテるんだろうなー。爆ぜろ」
美少年て……。喜んでいいの? 爆ぜろって何?
「ガールフレンドじゃなくて友達……。そういうケントだって……いや、なんでもない」
「うぉい!」
なんだかケントと話してるととても楽しい。お兄ちゃんがいたらこんな感じなのかな……?
宿屋を出て彼と話しながら市場へ向かう。
「おい、なんか食ってこうぜ。早めの昼飯だ」
「まだお昼までに時間があるけど……なんかいい匂いだね。あ、串焼きおいしそう!」
そんな話をしながら串焼きやらパンやらいろいろ買い込んだ。そしてケントと広場のベンチに座って串焼きにかぶりつく。なんか楽しいなぁ。
あ、護衛任務は日帰りできなさそうだからソフィーに断っておかないといけない。黙って行くと心配させちゃうかも。
2本ほど串焼きを食べたあと彼に向かって話す。
「まだ時間があるようだから、ちょっとお世話になってる家へ行って数日留守にするって伝えてくるよ」
「ああ、そんじゃ時間になる前に宿屋に集合な」
一度ケントと別れたあとソフィーの家へ向かった。
ソフィーの家に着くと彼女が一人で掃除をしていた。ベンノさんは今日から仕事に行っている。大丈夫だろうか。ちょっと心配だ。
早速彼女に護衛の件を伝える。
「ソフィー、今日ギルドで護衛の依頼を受けて数日町を離れることになったんだ」
「えっ、そうなの。じゃあ、ご飯はお父さんと二人きりかあ……」
ソフィーは寂しそうに俯いた。
皆で食べる食事は美味しいもんね。そんな彼女と時間の許す限りお喋りをする。
そしてあっという間に約束の30分前になった。
「それじゃ、ソフィー。行ってくるね! ベンノさんによろしくね。」
「うん、いってらっしゃい。絶対に絶対に気をつけてね!」
そう言ってソフィーが笑って送り出してくれた。後ろ髪をひかれながら貧民街を後にする。
約束の時間の前に『止まり木』に到着すると既にケントが来ていた。
「ケント、もう来てたんだね。待たせてごめん」
「いや、まだ約束の時間まで少しあるしマルコさんはまだ来てないからな」
「そういえば護衛で何か気をつけることある?」
護衛の仕事は初めてだから経験のあるケントにちゃんと聞いておきたい。
「そうだなあ。まず配置を決めようか。俺がマルコさんの横の御者席に座って前方と左右を見張る。セシルはアルマちゃんと一緒に荷台に乗って後方の見張りを頼む」
「分かった」
うん、聞いててよかった。護衛って魔物退治と全然違うものね。
「それでお前は何が使えるんだ? 剣は使うようだが」
「僕は剣と魔法だよ。ケントはやっぱり背中のそれ?」
「おう、俺はこの大剣だ。腕力はあるからな。あと魔法は使えねえ」
そういえばケントからは魔力を全く感じない。魔法を使う使わないに関わらずソフィーやベンノさんでも多少は魔力がある。全くないって人は初めて見たかも……。世の中にはそういう人もいるのかな?
そんなことを考えているうちにマルコとアルマが宿から出てきた。
「お待たせいたしました。それでは行きましょう。お二人とも、よろしくお願いします」
「「よろしくお願いします」」
マルコはそう言って幌馬車に乗り手綱を取る。アルマはひょいっと荷台に上がり荷物のチェックをし始める。ケントとセシルも馬車に乗り込む。
セシルは少しワクワクしながら、これから長い道のりを経て向かう初めてのレーフェンの町に思いを馳せた。
35
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!
明衣令央
ファンタジー
糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。
一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。
だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。
そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。
この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。
2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています
【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!
チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。
お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。
聖女の紋章 転生?少女は女神の加護と前世の知識で無双する わたしは聖女ではありません。公爵令嬢です!
幸之丞
ファンタジー
2023/11/22~11/23 女性向けホットランキング1位
2023/11/24 10:00 ファンタジーランキング1位 ありがとうございます。
「うわ~ 私を捨てないでー!」
声を出して私を捨てようとする父さんに叫ぼうとしました・・・
でも私は意識がはっきりしているけれど、体はまだ、生れて1週間くらいしか経っていないので
「ばぶ ばぶうう ばぶ だああ」
くらいにしか聞こえていないのね?
と思っていたけど ササッと 捨てられてしまいました~
誰か拾って~
私は、陽菜。数ヶ月前まで、日本で女子高生をしていました。
将来の為に良い大学に入学しようと塾にいっています。
塾の帰り道、車の事故に巻き込まれて、気づいてみたら何故か新しいお母さんのお腹の中。隣には姉妹もいる。そう双子なの。
私達が生まれたその後、私は魔力が少ないから、伯爵の娘として恥ずかしいとかで、捨てられた・・・
↑ここ冒頭
けれども、公爵家に拾われた。ああ 良かった・・・
そしてこれから私は捨てられないように、前世の記憶を使って知識チートで家族のため、公爵領にする人のために領地を豊かにします。
「この子ちょっとおかしいこと言ってるぞ」 と言われても、必殺 「女神様のお告げです。昨夜夢にでてきました」で大丈夫。
だって私には、愛と豊穣の女神様に愛されている証、聖女の紋章があるのです。
この物語は、魔法と剣の世界で主人公のエルーシアは魔法チートと知識チートで領地を豊かにするためにスライムや古竜と仲良くなって、お力をちょっと借りたりもします。
果たして、エルーシアは捨てられた本当の理由を知ることが出来るのか?
さあ! 物語が始まります。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる