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第6章
65.彼との再会 <ケント視点>
しおりを挟む「遅い……!」
セシルが神殿の中へ入ってからもう1時間は経つ。俺はセシルとともに宿を出て、神殿から少しだけ離れた所で待っていた。こっそりついていこうと思ったがどうせばれるからな。
あいつの婆ちゃんはここに縛られていたわけだから、もし正体がばれたら無事に戻れない可能性がある。
それにさっきから嫌な気配がする。もう行くしかないな。
変装してはいるが、いつでも取り出せるようにアイテムバッグの中に武器を隠している。ローブの下の装備も万全だ。
神殿の門をくぐり中へ進む。祭典の翌日だけあって人が多いな。こんなところで戦闘になったら大変だ。エメリヒに見つからないように気配を抑えていかないと。
開放されている神殿の扉をくぐり中へ入る。やはり段々嫌な気配が強くなる。目の前の礼拝堂へ進まずに気配を強く感じる左の方へ進む。
しばらく歩くと通路を抜け中庭に出た。人はいないようだが誰かに見つかると面倒だ。さっさと進もう。
「久しぶりですね、ケントさん。」
後ろの方から声がする。無視するわけにもいかず、仕方なくその聞き覚えのある声の方を振り返った。
「よう、ワタル君。元気だったか?」
目の前には勇者然としたフル装備のワタルが笑みを浮かべながら立っていた。
「ワタルでいいですよ。同郷なのにちゃんと会話をしたことなかったですね、僕たち。」
ワタルがこちらに少し近づいて話す。
「ああ、そうだな。勇者就任おめでとう、って言っていいのか?」
「ありがとうございます。僕は別に何でもいいんだけど。ところでケントさん、どこに行こうとしてたんです?」
チッ。面倒くさいことになりそうだな。ワタルの気配が臨戦態勢に入ったのを感じ取る。
「ああ、知り合いがこの奥に居そうなんでな。」
「そうですか……。申し訳ないですがこの先には通さないように言われているんですよ。怪我をさせたくないので大人しく引き返してもらえますか?」
ワタルがそう言って腰の剣をすらりと抜き構える。確か彼は『聖神の加護』と『虹の祝福』ってのがついてるって言ってたな。
彼の言葉を聞いた限りではどうやら俺が加護を持っていることは知らないらしい。
「そういうわけにはいかない。お前は感じないか? 奥の方からヤバい気配がしてくるのを。」
「……感じますが、通すなと言われてますので。」
「悪いが通らせてもらう。」
「仕方ありませんね。」
ワタルの持つ剣の剣身が眩く光る。すぐにアイテムバッグから大剣を取り出し構える。
「そんなに大きな剣を軽々と……。ケントさん加護はないって言ってませんでしたっけ?」
「んー、そうだっけ?」
「本当に貴方は食えない人だなっ!」
ワタルは可笑しそうに笑ってそう言い放ち、一気に間合いを詰めてきた。凄いスピードだ。だがリーチは俺のほうが長い。奴が間合いに入るタイミングを狂わすために半歩下がり大剣で横に薙ぎ払う。
彼はそれを予測して身を屈めて躱す。わりぃな、その動きはこっちも予測してたんだよ!
右に振りきる前に大剣の軌道を変えそこから下に振り下ろす。
「くっ!」
ワタルは俺の剣を紙一重で横に躱しすぐに後ずさった。
「あそこで軌道を変えてきますか……。」
「お前も相当素早いな。避けるとは思わなかった。その素早さも剣の光も『聖神の加護』って奴か?」
「そうですね。ケントさん、ずるいですよ。自分だけ何も教えないなんて。」
「俺はほら、魔法とか使えないからな。そのくらいハンデがないと。」
そう言ってワタルを射程に入れるよう間合いを詰め大剣を振り降ろす。彼はぎりぎり届かない程度に後ろに下がる。それを見てから切っ先が彼の頭にさしかかったくらいで大剣を右手のみに持ち替えそのまま腕を伸ばし、彼の胴に向かって突き出す。
「ッ……!」
ワタルはかなり驚いたようだがぎりぎりで見切って再び横に躱す。
チッ。これも躱すか。すばしっこい奴だ。加護の効果なのか素早さが俺より上な気がするな。
だが今度は躱しながら俺の間合いに入ってきた。うっ、やばい。彼は剣を俺の胴に向かって袈裟掛けに振り下ろす。
「っとォ……!」
かろうじてぎりぎりで後ずさってそれを躱した。が、ローブが切れた。っこのやろー!
あの光の剣はやばい。切れたところをよく見るとローブだけでなくて金属製の鎖帷子も少し切れている。○イトセーバーかよ。
らちが明かん。こうしてる間にもセシルが危険な目に合うかもしれん。足の筋肉に全神経を集中させる。俺は誰よりも速く動けると自分に暗示をかける。
ワタルに向かって勢いよく突進する。俺の速さに反応できずに彼が目を見開きその剣身で俺の大剣を防ぐ。
ガキーンッ!
「くぅッ!」
「どうした、それで本気か?」
力じゃ負けない。このまま押し合いもいいが敢えて大剣をスッと引きワタルの力を前に逃がす。そして回転して最速で彼の右側から後ろに回り込む。後ろを取った!
そのまま後ろから大剣の柄頭で彼の肩を思い切り打つ。
――ガッ!
「うッ!!」
人は斬らないってセシルに約束したばっかりだもんなー。
ワタルは前方によろめいてたたらを踏む。そのまま倒れ込むと思ったら思いっきり後ろに振り返りざま剣を横薙ぎにしてきた。
ガキーン!
俺たちの間に黒い影が割り込む。俺の前でワタルの剣を誰かが何かで防いでいる。大きな背中が目の前に立ち塞がっている。
「し、師匠……。」
「師匠……!?」
目の前に現れたのは、ほっそりとはしているががっちりと筋肉のついた金髪の壮年の男だった。
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