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第五章:「大陸到着」

第67話 「作戦会議」

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 あれから暫く歩いていると、当初の目的で街が見えてきた。
どうやらここから先が『西の隣国』らしい。

足元には大きな岩が置いてあり、そこには国境を意味する文字が書いている。

ここの街で具体的にどの様に止めるのか考えよう。

「見えて来たな?」

「ふふっ、そうだな?」

だが、街に来たものの…

そこには異様な光景が広がっていた。

綺麗な街には似つかわしく無い。
街自体を囲む様に高い頑強な壁で覆われており、その上には背中に弓矢を担いだ見張りの兵士が居る。

「やっと着いたな…」

「ふふっ、そうだな?」

すると、街の中からマントを靡かせ、鎧を着込んだ騎士団が現れた。

馬にも甲冑を着させている。

それにしても…あのマントの紋章…どこかで見た事があるな…

俺は懐から旅に出る時から受け取った短刀を出し、鞘の部分に視線を移した。

同じ紋章だ。

すると、突然声を掛けられた。

「その短刀…どこで手に入れたんだ?」

声のする方を見ると、そこには騎士団の中の一人の女性が、俺に話し掛けていた。

騎士団だからだろうか?
顔は端正な顔立ちだが、少し男勝り雰囲気を漂わせ
話し方にを感じた。

「これは俺の家のから貰った物です」

だと?少し見せてみろ」

そう言って、騎士は俺の手から短刀を取ると、じっくりと眺めた。

「本物だな…ん?誰のかと思えば…『リーンハルト』の物では無いか!アハハ!」

そう言って俺に短刀を投げ渡した。

「『リーンハルト』…」

「あぁ!そうさ!!」

「彼はこの騎士団のだった!実力がある癖に、『人を殺したくは無い』と言って、偵察とかの任務にも行きたがらなかったからな!てどこにいるのかと思えばをしているとはな!アハハハ!落ちたものだ!」

彼の気持ちも分かる。
人を殺したくは無いだろう…

それに彼は俺の事を案じて、この短刀を渡してくれたんだ。

そんな彼の事を、そこまで言うなんて…
それに…落ちこぼれなのは俺も一緒だ。

「そこまで言う事はないだろう?彼のおかげで俺の家は守られている。それに俺のだ」

俺の言葉に女性騎士は、一瞬驚いた表情を見せた。

「っ!お前…名はなんと言う?」

「サモンだ」

「ふふっ、私はバルバラだ」

「アハハッ!気に入った!!お前達の名…覚えておこう!」

そう言って、仲間の騎士達と共に馬を嘶かせ、走って行った。

すると、一人の女性が騎士達を追う様にして門から出てきた来た。

「あぁ!もう!ギーゼラは!」

そう言って、門の前で地団駄を踏んでいる。
女性は俺達の方に視線を向けると、駆け寄ってきた。

「おや?貴方達旅のお方ですか?」

「えぇ…」

「まぁ!このご時世に旅人なんて珍しいわ!の言い方で、嫌な気分をさせたらごめんなさいね?」

そう言う彼女は少し天然な雰囲気を漂わせている。

「いえ…」

確かに少しだけを感じたのは事実だ。

「ところで…どうしてあの方達を追い掛けて居たんですか?」

俺のその問いに女性は少し考えると、教えてくれた。

「塔に行ったのよ…」

すると何やら女性はあたりをキョロキョロと見渡し、内緒話をするかの様に話し始めた。

「実は…『魔王』が現れたと言う話が、帰って来た兵士達の間で広まっているの…」

恐らくあの時、逃げ去った兵士達だろう。

「それに…『魔王』だけじゃなくて噂では、並ぶ程の『力』を持ったも一緒だったとか…」

並ぶ程の力…恐らく俺の事だろう。

いつの間にか、俺がバルバラと並ぶ程と言われてしまった事に少し驚いてしまった。

「最初は戦争に勝つ為でしたが、今では『魔王』を倒せる物も塔にはあるかも知れないって…でもあの塔って…旅の方なら一度は聞いた事があるでしょう?」

「それで止めに?」

「えぇ、危険なのに…もう何回も行っているんですよ…出来るだけには行って欲しくは無いんですが…聞く耳を持たなくて…はぁ…悩ましいですわ」

俺は妹と言う言葉に、さっきのを思い出した。

ファルシアも帰らざるを得なかったんだ。

騎士団と言えども…次は無事に帰って来れるだろうか…

「そうですか…わざわざ教えて頂きありがとうございます」

そう言って、彼女のお姉さんに挨拶をして街に入った。

聞いていたよりも、治安は良く、すんなりと国に入る事が出来た。

俺はそんな事を思い、少し安心した。

取り敢えず、この街で身体を休めながら考えよう。

そんな事を思いながら、色々と散策していたら、街の端に宿を見付ける事が出来た。

俺達は宿屋に入ると、丁度一階部分は食事が出来るようになっていた。

料理を注文して待っていると。

隣の席から、話声が聞こえて来た。

盗み聞きはあまりしたくは無いが、声が大きくどうしても聞こえてしまう。

――おい!聞いたか!?

――もちろんだ!敗走した兵士が言っていたらしいな!何やら『魔王』が2現れたと!

――それだけじゃない!!『もう一つ』ある!!

――相手の国が近々攻め入るかも知れないぞ!!

――それは本当か!?

「ふふっ、止めるチャンスだな?」

「あぁ、もう二度とあんな悲しい思いはさせない」

人が悲しむのは、もう見たくは無い。

「ふふっ、そう言えば塔には国が互いに躍起になり上り詰めようとしている――そう言っていたな?」

確かにあの人はそう言っていた。

「そうだ」

「噂話と言っていたが、信憑性はあるかもしれないな?」

「どういう事だ?」

「私達が現れた――その事により、お互い塔に上ろうと一層焦るだろう」

確かにバルバラが言っている事は分かる。
追い込まれた国なら、今まで以上に躍起になるだろう。

「もしかすると…相手の国が兵を塔に割いた時に攻め入る気では無いか?」

俺はバルバラの言葉を聞き思わず固唾を飲んだ。

侵攻して真っ先に被害を受ける『この街』では無いか…

隣に座っている客、店員、先程の騎士団、話掛けてくれた女性…

全員被害に遭ってしまう…

俺はそんな事を考えると、心臓が早く脈打つのが分かった。

「バルバラ?」

「ふふっ、どうした?」

――俺達は…『悪』だったな?――

俺の言葉にバルバラは微笑んだ。

――ふふっ、そうだな?私達は『正義の悪』だ――

そう言ってバルバラは運ばれて来た料理を口に運んだ。
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