赤い髪のリリス 戦いの風

LLX

文字の大きさ
146 / 303
15、謁見

第144話 火の指輪と第3の目

しおりを挟む
しばらくして、リリスの元に使者が来てとうとう謁見の時間が来た。

しかしその手には厚い布が差し出され、それを頭に付けてくるように、王の前では絶対に取らないよう厳しく命じられた。
説得するのに顔が見せられないのは辛い。
声だけでは、どうしても訴えが弱くなってしまう。
以前城内では許しが出ていたことを話すが、王命だと聞き入れて貰えず、仕方なく彼はその布を頭からすっぽりかぶり、前が見えない不便さからガーラントに手を引いて貰った。

廊下を歩いていると、あまりの不格好さからクスクス笑い声が聞こえてくる。
まるで、罪人のようだとささやかれながら、謁見の間へと案内された。

「魔導師リリス殿、入ります。」

足下しか見えない中で、謁見の間に到着した。
兵の案内の声に、頭を下げて前に進む。
周りは沢山の人の息づかいの音と、ヒソヒソ声。
それでも、リリスはかえって見えなくて良かったかな?と思いながらどの辺で止まって良いものかわからず、ガーラントの足の動きをじっと見つめた。

「まあ、あの子はなぜいつもあのような布をかぶっているの?」

ささやくような女性の声が、前方から聞こえた。

「ひどく醜いからでございます、陛下。」

ひっそり返す側近の言葉のあと、大きく咳払いが聞こえた。

「リリス殿、御前です。」

ガーラントが声をかけ、慌ててリリスがその場に手をつき、ひれ伏した。

「王陛下の御前である。その方、巫子である許しを得に参ったと聞くが相違ないか。」

「はい。
私は地の巫子セレス様、および先代達の声を聞き、火の巫子であることを知ってここへ参りました。
レナントでは、魔物や魔導師の攻撃に遭い強い力を求められています。
私は魔導師ではありますが、巫子としての力を得ることで更にアトラーナのために、そして王陛下のために働くこと叶えば、これ以上の幸せはございません。
どうか、お許しを頂き、まずはこちらに保管されるという、火の巫子や神殿に伝わるお品をお返し願えればと思いこちらへ参上致しました。」

「返すだと?無礼な物言いよ、それは何か?」

「はい、それは私の知る限りでは火の巫子代々伝わる火の指輪、そしてフレアゴート様の第3の目でございます。」

「指輪……?フレアゴートの目?
それがあると、何かが変わるのか?」

「はい、火の巫子も、そしてフレアゴート様も本来の力を充実させることが出来ると聞きました。」

ざわつく周囲の声に、王が顎に手を置きフムと考える。
何も知らない后は、王の顔を横から見つめた。


やはり………僕の世継ぎの印ラーナブラッドを……

玉座の横で、キアナルーサが眉をひそめる。
キアナルーサは知っているのだ。
フレアゴートの目、それが世継ぎの印であるラーナブラッドだと言う事を。

「レナント領主のガルシア様からの書状、そしてレナント魔導師の長ルネイ様、そして地の巫子セレス様よりのお手紙を合わせて持って参りました。
どうかお納め下さい。」

ガーラントが王の側近へと渡し、王がそれを受け取って次々目を通す。

「父上、なんと書いてあるのでしょう?」

キアナルーサがたまらず横から声をかける。
その手紙を見せてくれるかと身を乗り出したが、王は渋い顔でそれを側近へ無言で渡す。
無視されたようで不安に拍車がかかり、キアナルーサは唇を噛んだ。

「手紙には、そなたが確かに巫子であると書いてある。必要な物を渡して欲しいとな。
だが、この城にはこの城のやり方があり、この国の決まり事がある。
巫子は審議を経て皆の同意を得、ようやく決まるものだ。
ガルシアがなんと言ったか知らぬが、軽々しく決まるものではない。」

ハッとリリスが顔を上げる。

「いいえ!ガルシア様は決してそのように軽々しくお言葉を発する方ではありません!」

「無礼者!王は発言をお許しになってはおらぬ、控えよ!」

一喝されて、慌てて頭を下げる。
王はどんな顔をして今の言葉を言ったのか、ガルシアに対して悪い印象を与えなかったろうか?
周りの様子が見えないのが腹立たしい。
布が厚くて、息苦しさに胸が詰まりそうになる。

「良い、発言を許す。
お前は火の巫子と言ったな、しかし火の神殿はアトラーナにはない。
フレアゴートは存在するが、火の神殿を造ることは未だ叶ってはおらぬ。
つまり、火の巫子も必要のない者だ。
なのに、なぜ火の巫子になろうとする。
現状で、世は火の神殿の再興を許す気はない。」

「だからこそ、でございます、王陛下。
火の神殿は、このアトラーナには必要な物。
私は、巫子となり神殿を再興したく存じます。
なぜなら、アトラーナは精霊の国、精霊の聖地。火の巫子は、望まずともずっとこの国にあるのです。
巫子がなぜ恐れ、敬われるのか、それはその異なる力があってこそ。
そしてそれが神殿に保護されることなく放置されることは、ひいては………
魔物に力を利用され、火の巫子リリサレーン様が引き起こしたようなことの、再来を及ぼす懸念があるからでございます。」

ザワザワと、周りでざわめきが起こった。
リリサレーンが巫子であったことは、ほとんど知られていない。
伝説は、人の口を伝わっているうちに次第に形を変えている。
自分も聞いて、ようやく知ったくらいなのだ。
もしかしたら、これを発言することはタブーかも知れない。でも、だからこそ神殿が必要であることは、知って貰わねばならなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた

今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。 レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。 不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。 レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。 それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し…… ※短め

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

冤罪で追放された令嬢〜周囲の人間達は追放した大国に激怒しました〜

影茸
恋愛
王国アレスターレが強国となった立役者とされる公爵令嬢マーセリア・ラスレリア。 けれどもマーセリアはその知名度を危険視され、国王に冤罪をかけられ王国から追放されることになってしまう。 そしてアレスターレを強国にするため、必死に動き回っていたマーセリアは休暇気分で抵抗せず王国を去る。 ーーー だが、マーセリアの追放を周囲の人間は許さなかった。 ※一人称ですが、視点はころころ変わる予定です。視点が変わる時には題名にその人物の名前を書かせていただきます。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

〈完結〉姉と母の本当の思いを知った時、私達は父を捨てて旅に出ることを決めました。

江戸川ばた散歩
恋愛
「私」男爵令嬢ベリンダには三人のきょうだいがいる。だが母は年の離れた一番上の姉ローズにだけ冷たい。 幼いながらもそれに気付いていた私は、誕生日の晩、両親の言い争いを聞く。 しばらくして、ローズは誕生日によばれた菓子職人と駆け落ちしてしまう。 それから全寮制の学校に通うこともあり、家族はあまり集わなくなる。 母は離れで暮らす様になり、気鬱にもなる。 そしてローズが出ていった歳にベリンダがなった頃、突然ローズから手紙が来る。 そこにはベリンダがずっと持っていた疑問の答えがあった。

【完結】16わたしも愛人を作ります。

華蓮
恋愛
公爵令嬢のマリカは、皇太子であるアイランに冷たくされていた。側妃を持ち、子供も側妃と持つと、、 惨めで生きているのが疲れたマリカ。 第二王子のカイランがお見舞いに来てくれた、、、、

処理中です...