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15、謁見
第148話 庭で一芝居を打つ
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だるい……
灯っていた火が、身体中からすべて消え去ったように寒い。
リリスは手を借りて、だるい身体をなんとか部屋まで引きずるように帰る途中、先を行く監視兼案内の男に、途中にある庭で休みたいと懇願した。
初めて行った魂寄せが、これほど自分を消耗させるとは思わなかった。
どこかおかしいほどに、酷く疲れて強い脱力感がある。
城には強力な結界が敷いてあるが、結界内で結界を発動させたために感じた反発は胸が苦しいほどだった。
しかしこれは、術のためだけではないのかもしれない。
なにより、火の精霊がいない違和感。
火の術を使うときは、すべてを自分の中から出すしかない。
本当に、火の精霊はどこへ行ってしまったのだろう。
消耗したとき一番いいのは、イネスに教えて貰った地と気を還流させ、自然に満たす術だ。
だが、それを知ってか知らずか、案内の男は頑として首を縦に振らなかった。
「ほんの少しでいいのです。庭でちょっとです。お許し下さいませんでしょうか」
「申し訳ないが、部屋で休んでいただく。
これから審査が終わるまでは、他の者との接触も許可が必要です。
体調が悪ければ、近くの者に申しつけるように。こちらで薬湯を準備させましょう。」
こちらを振り返りもせず、男は無粋に淡々と話す。
薬湯なんて、頼んだら一体何が来るかわかったものではない。
どうにも融通の利かなそうな男に、ミランが珍しく意見した。
「ですが、巫子や魔導師には自然の気も必要だと聞きます。
あの狭い部屋に閉じ込めたままというのも、消耗せよと言っているような物ではないですか?」
「だから、許可を得て下さいと申し上げております。」
「ですから、あなたに許可を申し出ております。」
「私は上から許可が出たらご案内しましょう。」
駄目だ、上へ繋ぐ気さえ元から無い。
取り入ろうともしない男は、許可を申請しても聞きもしないで却下しそうな感じだ。
リリスが廊下を抜けて回廊に出ると、綺麗に手入れのされた中庭から吹き込む外の風に気持ちよさそうに目を閉じる。
ブルースがそれをチラリと見て、ニッと笑い一歩先へ大股で歩み出し派手につまずいた。
「おおっと!おお、これはいかん、靴に石が入ってしまった!」
入るわけもない。綺麗に掃除された回廊、しかもブルースはブーツだ。
しかし彼は、もたもたと列をせき止めるように足を投げ出して座り込み、時間をかけてブーツの紐を解きはじめる。
もたもたとする様子に、男が渋い顔で他の兵と目を合わせた。
「ああ、さすが本城の庭はたいそう手入れされて美しいですな。
レナントもここまでとは行きませぬゆえ、本当に見応えのあるお庭でござる。」
手を止め、ブルースが派手に大きな声を上げる。
ミラン達も芝居に気がつき、クスッと笑って大きく伸びをした。
「ああ、なんと気持ちの良い風でしょう。
さすが本城は良い風が吹く。
この香りはどこから来るのでしょうねえ。」
ミランがクンクン鼻を鳴らす。
文句を言おうかと構えた男や兵も、釣られて鼻を立てふと考えた。
その隙に、リリスの手を取りミランが庭へと歩み出る。
「ほら、この花いい香りがしますよ。リリス殿、この花知ってますか?」
「あっ、これ!」
慌てて追おうとする兵を、ガーラントがズイッと前に出て遮った。
「いっとき頂きたい。」
「しかし……」
「いっときだ。」
問答無用の迫力に気圧され、案内の男が口をつぐむ。
ガーラントがチラリと見ると、リリスはその隙に手で小さく印を結び、ブツブツ呪文を説いている。
地と気を巡らせ、大きく深呼吸する。
風の精霊が彼の周囲に集まり、穏やかに身体の中に風が通り抜けて彼の疲れを癒やしていった。
閉塞感が消え、身体から重い疲れが抜けていく。
洗われるような清々しい空気。
時間稼ぎしてくれる間、そうして術を使って少しでもと回復に力を注ぐ。
目を閉じると、輝く何かがリリスを包み込むようにして身体を通り過ぎて行く。
『ここに、いるよ……』
どこからか、遠くから優しい声が聞こえた。
ふいに、空からキュアが飛んできて肩に留まった。
「どこに行ってたんですか?悪い子ですね。」
リリスが笑って顔を上げ、前で手を組み背伸びする。
よし。
「ああ、気持ちいい。なんだかさっぱり出来ました。」
明るく話し、ブルースたちに礼を込めて微笑む。
そのいつもの明るい顔に、芝居を打った皆もパッと明るい顔になる。
「おお、そうか。それは良かった。」
ひょいとブルースが立ち上がり、渋い顔の男にニッと笑った。
「出来ますれば、またこの素晴らしい庭を堪能させていただきたい。レナントへの土産話にしたいのでな。」
「わかりました、許可を取っておきましょう。」
男もこうまで言われては、むげにも出来ず神妙な顔でうなずいた。
灯っていた火が、身体中からすべて消え去ったように寒い。
リリスは手を借りて、だるい身体をなんとか部屋まで引きずるように帰る途中、先を行く監視兼案内の男に、途中にある庭で休みたいと懇願した。
初めて行った魂寄せが、これほど自分を消耗させるとは思わなかった。
どこかおかしいほどに、酷く疲れて強い脱力感がある。
城には強力な結界が敷いてあるが、結界内で結界を発動させたために感じた反発は胸が苦しいほどだった。
しかしこれは、術のためだけではないのかもしれない。
なにより、火の精霊がいない違和感。
火の術を使うときは、すべてを自分の中から出すしかない。
本当に、火の精霊はどこへ行ってしまったのだろう。
消耗したとき一番いいのは、イネスに教えて貰った地と気を還流させ、自然に満たす術だ。
だが、それを知ってか知らずか、案内の男は頑として首を縦に振らなかった。
「ほんの少しでいいのです。庭でちょっとです。お許し下さいませんでしょうか」
「申し訳ないが、部屋で休んでいただく。
これから審査が終わるまでは、他の者との接触も許可が必要です。
体調が悪ければ、近くの者に申しつけるように。こちらで薬湯を準備させましょう。」
こちらを振り返りもせず、男は無粋に淡々と話す。
薬湯なんて、頼んだら一体何が来るかわかったものではない。
どうにも融通の利かなそうな男に、ミランが珍しく意見した。
「ですが、巫子や魔導師には自然の気も必要だと聞きます。
あの狭い部屋に閉じ込めたままというのも、消耗せよと言っているような物ではないですか?」
「だから、許可を得て下さいと申し上げております。」
「ですから、あなたに許可を申し出ております。」
「私は上から許可が出たらご案内しましょう。」
駄目だ、上へ繋ぐ気さえ元から無い。
取り入ろうともしない男は、許可を申請しても聞きもしないで却下しそうな感じだ。
リリスが廊下を抜けて回廊に出ると、綺麗に手入れのされた中庭から吹き込む外の風に気持ちよさそうに目を閉じる。
ブルースがそれをチラリと見て、ニッと笑い一歩先へ大股で歩み出し派手につまずいた。
「おおっと!おお、これはいかん、靴に石が入ってしまった!」
入るわけもない。綺麗に掃除された回廊、しかもブルースはブーツだ。
しかし彼は、もたもたと列をせき止めるように足を投げ出して座り込み、時間をかけてブーツの紐を解きはじめる。
もたもたとする様子に、男が渋い顔で他の兵と目を合わせた。
「ああ、さすが本城の庭はたいそう手入れされて美しいですな。
レナントもここまでとは行きませぬゆえ、本当に見応えのあるお庭でござる。」
手を止め、ブルースが派手に大きな声を上げる。
ミラン達も芝居に気がつき、クスッと笑って大きく伸びをした。
「ああ、なんと気持ちの良い風でしょう。
さすが本城は良い風が吹く。
この香りはどこから来るのでしょうねえ。」
ミランがクンクン鼻を鳴らす。
文句を言おうかと構えた男や兵も、釣られて鼻を立てふと考えた。
その隙に、リリスの手を取りミランが庭へと歩み出る。
「ほら、この花いい香りがしますよ。リリス殿、この花知ってますか?」
「あっ、これ!」
慌てて追おうとする兵を、ガーラントがズイッと前に出て遮った。
「いっとき頂きたい。」
「しかし……」
「いっときだ。」
問答無用の迫力に気圧され、案内の男が口をつぐむ。
ガーラントがチラリと見ると、リリスはその隙に手で小さく印を結び、ブツブツ呪文を説いている。
地と気を巡らせ、大きく深呼吸する。
風の精霊が彼の周囲に集まり、穏やかに身体の中に風が通り抜けて彼の疲れを癒やしていった。
閉塞感が消え、身体から重い疲れが抜けていく。
洗われるような清々しい空気。
時間稼ぎしてくれる間、そうして術を使って少しでもと回復に力を注ぐ。
目を閉じると、輝く何かがリリスを包み込むようにして身体を通り過ぎて行く。
『ここに、いるよ……』
どこからか、遠くから優しい声が聞こえた。
ふいに、空からキュアが飛んできて肩に留まった。
「どこに行ってたんですか?悪い子ですね。」
リリスが笑って顔を上げ、前で手を組み背伸びする。
よし。
「ああ、気持ちいい。なんだかさっぱり出来ました。」
明るく話し、ブルースたちに礼を込めて微笑む。
そのいつもの明るい顔に、芝居を打った皆もパッと明るい顔になる。
「おお、そうか。それは良かった。」
ひょいとブルースが立ち上がり、渋い顔の男にニッと笑った。
「出来ますれば、またこの素晴らしい庭を堪能させていただきたい。レナントへの土産話にしたいのでな。」
「わかりました、許可を取っておきましょう。」
男もこうまで言われては、むげにも出来ず神妙な顔でうなずいた。
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