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15、謁見
第153話 王妃リザリアの願い
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王妃リザリアが窓辺の椅子に腰をかけ、階下を見下ろし指を噛む。
その視線の先には、リリスがいるであろう部屋がある。
だが、中をうかがうことなど出来るはずもなく、王妃はつのる思いを抱えて迷っていた。
会いに行きたい。
でも、あの子はきっと恨んでるに違いない。
あの言葉は、諦めで恨みを覆っているような言葉だった。
ザレルとセフィーリアが養子に迎えるという。
それで果たして良いのか、良いのだと思いたい。
でも……本心は……本当の気持ちは……
「嫌よ!あの子は私の子、取り戻したい。
たとえ何があっても。
守れなかった非を……詫びたいのよ……」
涙があふれてポタポタ落ちる。
生まれて一度も抱いてあげられなかった。
お腹の中で二つの命があると知ってから、すべてを慌てて二つずつ用意していったのに、陽炎のようにあの子は消えて、まるで最初から居なかったように、残された物すべて彼が燃やしてしまった。
許せない……
「……リザリア様……」
ドアの向こうから、ささやくような声がした。
それは聞き覚えのある、侍女の一人だ。
だが、それは特別な侍女だった。
「ミザリー、入りなさい。」
返事を聞いて、その侍女は足音も立てず滑るように入ってくる。
そして膝をつき、覚悟を決めて頭を下げた。
「なぜ呼ばれたか、お前はわかっていますか?」
「はい」
「お前を10才の誕生日に父上から頂いてのち、私の輿入れの時も付いてきて、これまでよく仕えてくれました。
私も、お前だけはと信じていました。」
「はい」
「お前は……知っていましたね?」
ミザリーの顔からうっすらと汗が流れる。
つばを飲み込み、視線を上げる事も出来ず声を詰まらせた。
「は……い……」
王妃がため息をつき、立ち上がる。
そして彼女の元に歩み寄ると片手を振り上げた。
知っている……はずだ。
彼女がミスリルであることは、他に宰相と王しか知らない。
だが、彼女にもミスリルとしての力がある。
それは心眼、人の心を見抜く力だ。
直前から直後の先読みまで、瞬時に読み取って彼女を補佐する。
それは彼女が気の利く聡明な王女として、高く評価される事になった。
通常王族はミスリルを持たない。
しかしミザリーは、父親が彼女のためにと、宰相家のつてを頼みに彼女の為に得たミスリルだ。
王子の后にと話が来て、何とか助けになるようにと選んだだけに、とても助かる力だった。
だからこそ、知っているのが当たり前なのだ。
そして、彼女は自分にだけは隠し事無く仕えてくれていると信じていた。
なのに……なのに……夫に裏切られ、信頼していた彼女にまで裏切られるとは!
震える手を握りしめ、胸に押し当て涙を流す。
わかっている。
彼女は王に口止めされた。
それに逆らえなかっただけ。
でも……
「信じてたのに………」
ミザリーは、びくりと身体を震わせその場に平伏した。
床に額をすりつけ、たとえ彼女に足蹴にされようとも、この場から出て行けと言われようとも、死ねと言われても構わないと思う。
自分は命をかけて仕えようと決めてきた。
だが、あの時、王に最初で最後の願いだと、彼女を思うなら語るなと口止めされたのだ。
錯乱状態でしばらく泣き止むことの無かった彼女の姿に、消えた王子の事を……もう戻ってくる事の許されない王子の事を、どうして語れようか。
だから、せめてあの王子には親族を一人、時折様子を見に行かせていた。
小さい身体で一人旅をするときは、必ず気付かれぬように護衛に付かせ、せめて見守る事だけを続けた。
でも、それが何になるのだろう。
王妃は母として、手元で愛情を込めて育てたかったのだ。
「ミザリー、お前は私を裏切った。私はこのままでは、お前をこれまでのように信用できぬ。
だが、私は友としてお前が好きだ。
だからお前を失うのは惜しい。
お前は……私との間にあいた溝を自らの行為で埋めねばならぬ。
お前はどうしたい?」
王妃の言葉に、ミザリーが愕然と顔を上げた。
自分はリザリアの心をのぞき見た事はない。
だが、きっと自分への怨みが詰まっているだろうと覚悟してきた。
なのに……まだ友と言って下さるのか…………
胸がいっぱいになり、身体が震える。
「私に………そのような機会をお与え下さいますのですか?
私は、リザリア様がすべてでございます。
あなた様が、死ねとおっしゃるならば私は死にます物を。」
「死ぬ事は許さぬ。
お前は生きて、老いて死ぬまで私につぐなうのだ。」
ミザリーがギュッと手を握り胸に当て、膝を立てて深く頭を下げる。
そして、涙をひと筋流し、王妃の顔をじっと見つめた。
「この身は、あなた様だけの物。何なりとお申し付けください。」
「私の王子が望む物を手に入れよ。
そして必ず、お前の手で確実に渡すのだ。
それがあの子を私に近くし、あの子の命を守る事となる。」
「承知致しました。我が主の御心のままに。
この命、かけましても。」
「ならぬ、死ぬ事は許さぬ。良いな」
「はい」
ミザリーは真摯な顔でうなずき、自分に出来るすべての力を使っても、彼女の願いを叶える事を誓った。
その視線の先には、リリスがいるであろう部屋がある。
だが、中をうかがうことなど出来るはずもなく、王妃はつのる思いを抱えて迷っていた。
会いに行きたい。
でも、あの子はきっと恨んでるに違いない。
あの言葉は、諦めで恨みを覆っているような言葉だった。
ザレルとセフィーリアが養子に迎えるという。
それで果たして良いのか、良いのだと思いたい。
でも……本心は……本当の気持ちは……
「嫌よ!あの子は私の子、取り戻したい。
たとえ何があっても。
守れなかった非を……詫びたいのよ……」
涙があふれてポタポタ落ちる。
生まれて一度も抱いてあげられなかった。
お腹の中で二つの命があると知ってから、すべてを慌てて二つずつ用意していったのに、陽炎のようにあの子は消えて、まるで最初から居なかったように、残された物すべて彼が燃やしてしまった。
許せない……
「……リザリア様……」
ドアの向こうから、ささやくような声がした。
それは聞き覚えのある、侍女の一人だ。
だが、それは特別な侍女だった。
「ミザリー、入りなさい。」
返事を聞いて、その侍女は足音も立てず滑るように入ってくる。
そして膝をつき、覚悟を決めて頭を下げた。
「なぜ呼ばれたか、お前はわかっていますか?」
「はい」
「お前を10才の誕生日に父上から頂いてのち、私の輿入れの時も付いてきて、これまでよく仕えてくれました。
私も、お前だけはと信じていました。」
「はい」
「お前は……知っていましたね?」
ミザリーの顔からうっすらと汗が流れる。
つばを飲み込み、視線を上げる事も出来ず声を詰まらせた。
「は……い……」
王妃がため息をつき、立ち上がる。
そして彼女の元に歩み寄ると片手を振り上げた。
知っている……はずだ。
彼女がミスリルであることは、他に宰相と王しか知らない。
だが、彼女にもミスリルとしての力がある。
それは心眼、人の心を見抜く力だ。
直前から直後の先読みまで、瞬時に読み取って彼女を補佐する。
それは彼女が気の利く聡明な王女として、高く評価される事になった。
通常王族はミスリルを持たない。
しかしミザリーは、父親が彼女のためにと、宰相家のつてを頼みに彼女の為に得たミスリルだ。
王子の后にと話が来て、何とか助けになるようにと選んだだけに、とても助かる力だった。
だからこそ、知っているのが当たり前なのだ。
そして、彼女は自分にだけは隠し事無く仕えてくれていると信じていた。
なのに……なのに……夫に裏切られ、信頼していた彼女にまで裏切られるとは!
震える手を握りしめ、胸に押し当て涙を流す。
わかっている。
彼女は王に口止めされた。
それに逆らえなかっただけ。
でも……
「信じてたのに………」
ミザリーは、びくりと身体を震わせその場に平伏した。
床に額をすりつけ、たとえ彼女に足蹴にされようとも、この場から出て行けと言われようとも、死ねと言われても構わないと思う。
自分は命をかけて仕えようと決めてきた。
だが、あの時、王に最初で最後の願いだと、彼女を思うなら語るなと口止めされたのだ。
錯乱状態でしばらく泣き止むことの無かった彼女の姿に、消えた王子の事を……もう戻ってくる事の許されない王子の事を、どうして語れようか。
だから、せめてあの王子には親族を一人、時折様子を見に行かせていた。
小さい身体で一人旅をするときは、必ず気付かれぬように護衛に付かせ、せめて見守る事だけを続けた。
でも、それが何になるのだろう。
王妃は母として、手元で愛情を込めて育てたかったのだ。
「ミザリー、お前は私を裏切った。私はこのままでは、お前をこれまでのように信用できぬ。
だが、私は友としてお前が好きだ。
だからお前を失うのは惜しい。
お前は……私との間にあいた溝を自らの行為で埋めねばならぬ。
お前はどうしたい?」
王妃の言葉に、ミザリーが愕然と顔を上げた。
自分はリザリアの心をのぞき見た事はない。
だが、きっと自分への怨みが詰まっているだろうと覚悟してきた。
なのに……まだ友と言って下さるのか…………
胸がいっぱいになり、身体が震える。
「私に………そのような機会をお与え下さいますのですか?
私は、リザリア様がすべてでございます。
あなた様が、死ねとおっしゃるならば私は死にます物を。」
「死ぬ事は許さぬ。
お前は生きて、老いて死ぬまで私につぐなうのだ。」
ミザリーがギュッと手を握り胸に当て、膝を立てて深く頭を下げる。
そして、涙をひと筋流し、王妃の顔をじっと見つめた。
「この身は、あなた様だけの物。何なりとお申し付けください。」
「私の王子が望む物を手に入れよ。
そして必ず、お前の手で確実に渡すのだ。
それがあの子を私に近くし、あの子の命を守る事となる。」
「承知致しました。我が主の御心のままに。
この命、かけましても。」
「ならぬ、死ぬ事は許さぬ。良いな」
「はい」
ミザリーは真摯な顔でうなずき、自分に出来るすべての力を使っても、彼女の願いを叶える事を誓った。
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