赤い髪のリリス 戦いの風

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15、謁見

第152話 変容

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一匹のネコがキョロキョロしながらそっと庭に出て、キアナルーサの部屋の方角へと歩き出す。
アイはなんとかリリスの部屋へ入ろうとあらゆるルートを取ったものの、結局彼の部屋に入ることが出来ず諦めて王子の部屋に戻ることにした。
先ほど王の前で行った術を窓からこっそり見ていただけに、どうしても会いたかったが仕方ない。
高揚した気分が削がれ、てくてくいつものルートを歩く。
すでに日も暮れ、まだ下女がろうそくに火を付けていないらしく、廊下が暗い。

「まあ、ろうそくついてても暗いんだけどさ。
この世界って、火が暗いのよニャ。」

そう言えば、火の神殿がないって言ってたわね。
そう言うのも関係するのかな?
リリスが巫子になったら変わるのかしら?

ぼんやり考えながら、足音をひそめて歩いて行く。
フッと、何か黒い影が動いた気がした。
背後に何か気配を感じ、そうっと振り向く。
突然、上から網がかぶせられ、驚いて走り出した。
が、網に足を取られ思うように走れない。
そうしている内捕まって、身体に網をぐるぐる巻きにされた。

「ニャーー!!助けてニャ!リリ……むぐむぐ……」

口にも網が挟まりうまく言葉が出せない。
そして麻袋に押し込まれ、ひょいと抱え込まれた。

「ニャーーッ!」

「あなたがいると、事が面倒なのですよ。
彼にこちらのことが筒抜けになるのは迷惑です。
異世界人なれば、命までは取らないことがせめてもの私の慈悲。どこへとなりと行くが良かろう。」

ゼブラがそう言って指を鳴らす。
一人の兵がかたわらにひざまずき、麻袋を受け取った。

「城を出て森に捨ててこい。」

にゃにいいーー!!

ザアッとアイの血が下がる。
毛が逆立ち、身体中が毛糸玉のように膨れあがった。
外に出ても食い物で困るし、悪くすればもとの日本に戻れなくなる。
頼りのリリスだって、もうすぐここからいなくなるのだ。

「承知しました。」
「王子には、わからぬようせよ。」
「お任せを。」

お任せをじゃニャああーーい!!
リリス!レスラ!助けてえええ!!

「アオー、ニャオー……」

アイ猫の叫びもむなしく、麻袋は木箱に押し込まれ、馬に積まれて城を離れてゆく。
ゼブラはほくそ笑み、清々した顔で自室へと戻っていった。

チリンチリン

自室に戻ると、間もなく王子が呼び鈴を鳴らす音が聞こえた。
立ち上がると、忌々しいあのネコの毛が服に付いているのを見て、慌てて払い王子の部屋に急ぐ。
いつもと違う、キアナルーサの様子に静かに膝をついた。

「お呼びでございましょうか。」

「ゼブラ、僕の気持ちが決まったんだ。」

「お気持ちが?」

「僕は、世継ぎだ。この事実は変わらない。
王の座は僕の物、それを狙う者は許さない。
僕を蹴落とそうとする者には鉄槌を下す!」

ゼブラが、口をポカンと開けて王子を見つめた。
それは、聞いたこともない力強い言葉、彼の発する初めての自信に満ちた、王位継承者らしい容赦ない言葉だったのだ。
しかし、それはこれまでと同じ、口先だけのものかもしれない。
身をただして王子を険しい顔で見ると、ゼブラは声をひそめた。

「では今回の件、いかがなさいましょう。」

頭を軽く下げて、上目遣いで王子の様子をうかがう。
王子はしかし、いつものうろたえる様子もなく、小さく笑い窓を閉めるとくるりとゼブラを向いた。

「障害は、いかなる者も排除する。処分せよ。」

ザワザワ全身の毛が逆立ち、心が自分でも驚くほどに高揚する。

そうだ、自分はこれを待っていた。
これこそ私の仕える王子なのだ。
あるべき姿がここに現れた!

しかし、こうも変われる事がこの王子に出来ただろうか。
いいや、果たしてそれが何によるものなのかは、今は考えるまい。
それがあいつによる物だとしても、自分はこれでいい。
これをずっと待っていたのだ。

「いかように?」

ゼブラが顔を上げ静かに尋ねる。
王子はゆっくりと椅子に腰を下ろし、優雅に足を組んでニヤリと笑った。
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