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15、謁見
第162話 フレアゴートとリリス
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リリスを肩に抱えたまま腰の剣を抜き前に構えるが、気配がつかめないのか左右を忙しく警戒している。
「兄者、わからない。わからない。」
「しっ!」
兄が弟に手を伸ばし、前に出てそして振り向いた。
「ぎゃっ!」
兄から小さな悲鳴が上がり、リリスを担ぐ男がたじろぐ。
「兄者?!」
「ゼ、ゼル、気をつけろ、何か……針だ!は、針が、飛んで……」
突然、兄の背中から大腿にかけて一面を鋭い痛みが走る。
慌てて払おうと手を回すが、何か細い針のようだ。
それは払っても容易に抜けず、身体中がしびれて数本を抜き去るので精一杯だった。
弟はリリスを盾に振り返り、針の来た方角に剣を向ける。
「兄者、木に隠れよう。」
そう言う弟の半身は、すでに大木の中に同化している。
「駄目だ、向こうが上手だ。逃げ……るぞ!ぐおおお!」
「兄者、どうした!」
兄は剣を落として背に手を回し、身もだえながらドサリと前のめりに倒れる。
夜目の利く弟が、兄の身体に手を伸ばそうとして息を飲んだ。
兄の身体中を、無数の髪が針のように伸びて刺し貫いている。
「兄者!」
「巫子を……盾にし………げろ……おま……だけでも……」
そう言って、兄はヒクヒクと身体を震わせる。
弟はリリスを放り、兄の身体に飛びついた。
「兄者!兄者!俺を残して死ぬのか?!俺を残して死ぬのか?!
いやだ!いやだ!俺を残して死ぬな!俺を残して死ぬな!一緒に畑を耕そう!耕そう!」
ザッ、
足音に、弟が涙でグシャグシャになった顔で振り向く。
そこには、ぐったりとしたリリスを抱き上げた髪の長い仮面の男が、無言でまた闇に消えてゆく。
弟は立ち上がり、男の消えた方へ両手を大きく広げて叫んだ。
「おおおおおお!いやだ!いやだ!助けてくれ!助けてくれ!
巫子よ!巫子よ!輪廻の巫子よ!火の巫子よ!兄者を!兄者を!
わしはお前に命を捧げる!
命を捧げる!」
突然、空が燃えた。
弟が、暗闇が燃え上がったような光りに思わず顔を背ける。
空に明るい火の固まりが飛んできて、それが燃え上がりながら大きく翼を広げた。
「その言葉、真か!」
空を覆う大きな火の鳥が、弟の前に降りてきて問うた。
「オオオ!輪廻の鳥よ!鳥よ!わしは、わしは頭が悪い、頭が悪い。
わしの血は、かか様(母様)を殺した。殺した。
兄者を失えば死んだと同じだ。死んだと同じだ。
だが、兄者は賢い。賢い。
わしの命で兄者を助けてくれ、助けてくれ!」
火の鳥は、目を細めて懇願する弟と、すでに虫の息の兄を見下ろす。
ククッと笑うように喉を鳴らし、ボウと身体を燃え上がらせた。
「だが、お前は我が巫子を殺そうとした。
輪廻をはずれ、永劫に闇をさまよいその報いを知れ!」
火の鳥が大きく口を開くと、口からとろとろと溶岩のように火が漏れる。
それは怒りに燃える、フレアゴートの心の業火かもしれない。
二人を焼き尽くそうと身を乗り出した時、あたりにか細いかすれ声がどこからともなく漏れ聞こえた。
「お待ちを………どうか……」
その微かなリリスの声に、チラリと鳥が視線を動かし口を閉じる。
弟にはそれっきりリリスの声は聞こえなかったが、鳥はじっと耳をすまし心の中で彼と会話しているように見える。
目を閉じ、再び弟と向き合うと、火の鳥の全身から吹き出す炎は落ちついて、ただ煌々と神々しく光り輝いた。
「わかった。我が巫子よ、お前に免じて怒りを収めよう。
輪廻の鳥か……久しく聞くことのない言葉よ。
お前は我が眷属の血族か?」
「はい。かか様が、かか様が、火の精霊の婆ちゃんの娘で、で、とと様が地の精霊の子でした。でした。」
「そうか…………
良かろう、我が巫子への無礼は許し難いが、あれの願いを聞くのも心地良い。
この罪、滅びの時までその身であがなうがよい。
我に今できるのは……!」
火の鳥が、カッと口を開き凄まじい炎を吹き出した。
「兄者!」
弟が炎に包まれながら、反射的に兄の身体をかばう。
二人の身体はそのまま火に溶け込み、やがて吐きだした火を再び飲み込んだ火の鳥の中に取り込まれてしまった。
「今の我にできるのは限られている。
良い、心配するなリリスよ、あれらは共に半身で生まれ落ちたために互いを助け合っていた。
ならば我が手で一つに成してやろう。きっとお前の良き守りになろう。」
リリスの意識が、安心したように途切れた。
フレアゴートがふと頭を上げる。
彼は少し心配するように、小さく喉を鳴らした。
「兄者、わからない。わからない。」
「しっ!」
兄が弟に手を伸ばし、前に出てそして振り向いた。
「ぎゃっ!」
兄から小さな悲鳴が上がり、リリスを担ぐ男がたじろぐ。
「兄者?!」
「ゼ、ゼル、気をつけろ、何か……針だ!は、針が、飛んで……」
突然、兄の背中から大腿にかけて一面を鋭い痛みが走る。
慌てて払おうと手を回すが、何か細い針のようだ。
それは払っても容易に抜けず、身体中がしびれて数本を抜き去るので精一杯だった。
弟はリリスを盾に振り返り、針の来た方角に剣を向ける。
「兄者、木に隠れよう。」
そう言う弟の半身は、すでに大木の中に同化している。
「駄目だ、向こうが上手だ。逃げ……るぞ!ぐおおお!」
「兄者、どうした!」
兄は剣を落として背に手を回し、身もだえながらドサリと前のめりに倒れる。
夜目の利く弟が、兄の身体に手を伸ばそうとして息を飲んだ。
兄の身体中を、無数の髪が針のように伸びて刺し貫いている。
「兄者!」
「巫子を……盾にし………げろ……おま……だけでも……」
そう言って、兄はヒクヒクと身体を震わせる。
弟はリリスを放り、兄の身体に飛びついた。
「兄者!兄者!俺を残して死ぬのか?!俺を残して死ぬのか?!
いやだ!いやだ!俺を残して死ぬな!俺を残して死ぬな!一緒に畑を耕そう!耕そう!」
ザッ、
足音に、弟が涙でグシャグシャになった顔で振り向く。
そこには、ぐったりとしたリリスを抱き上げた髪の長い仮面の男が、無言でまた闇に消えてゆく。
弟は立ち上がり、男の消えた方へ両手を大きく広げて叫んだ。
「おおおおおお!いやだ!いやだ!助けてくれ!助けてくれ!
巫子よ!巫子よ!輪廻の巫子よ!火の巫子よ!兄者を!兄者を!
わしはお前に命を捧げる!
命を捧げる!」
突然、空が燃えた。
弟が、暗闇が燃え上がったような光りに思わず顔を背ける。
空に明るい火の固まりが飛んできて、それが燃え上がりながら大きく翼を広げた。
「その言葉、真か!」
空を覆う大きな火の鳥が、弟の前に降りてきて問うた。
「オオオ!輪廻の鳥よ!鳥よ!わしは、わしは頭が悪い、頭が悪い。
わしの血は、かか様(母様)を殺した。殺した。
兄者を失えば死んだと同じだ。死んだと同じだ。
だが、兄者は賢い。賢い。
わしの命で兄者を助けてくれ、助けてくれ!」
火の鳥は、目を細めて懇願する弟と、すでに虫の息の兄を見下ろす。
ククッと笑うように喉を鳴らし、ボウと身体を燃え上がらせた。
「だが、お前は我が巫子を殺そうとした。
輪廻をはずれ、永劫に闇をさまよいその報いを知れ!」
火の鳥が大きく口を開くと、口からとろとろと溶岩のように火が漏れる。
それは怒りに燃える、フレアゴートの心の業火かもしれない。
二人を焼き尽くそうと身を乗り出した時、あたりにか細いかすれ声がどこからともなく漏れ聞こえた。
「お待ちを………どうか……」
その微かなリリスの声に、チラリと鳥が視線を動かし口を閉じる。
弟にはそれっきりリリスの声は聞こえなかったが、鳥はじっと耳をすまし心の中で彼と会話しているように見える。
目を閉じ、再び弟と向き合うと、火の鳥の全身から吹き出す炎は落ちついて、ただ煌々と神々しく光り輝いた。
「わかった。我が巫子よ、お前に免じて怒りを収めよう。
輪廻の鳥か……久しく聞くことのない言葉よ。
お前は我が眷属の血族か?」
「はい。かか様が、かか様が、火の精霊の婆ちゃんの娘で、で、とと様が地の精霊の子でした。でした。」
「そうか…………
良かろう、我が巫子への無礼は許し難いが、あれの願いを聞くのも心地良い。
この罪、滅びの時までその身であがなうがよい。
我に今できるのは……!」
火の鳥が、カッと口を開き凄まじい炎を吹き出した。
「兄者!」
弟が炎に包まれながら、反射的に兄の身体をかばう。
二人の身体はそのまま火に溶け込み、やがて吐きだした火を再び飲み込んだ火の鳥の中に取り込まれてしまった。
「今の我にできるのは限られている。
良い、心配するなリリスよ、あれらは共に半身で生まれ落ちたために互いを助け合っていた。
ならば我が手で一つに成してやろう。きっとお前の良き守りになろう。」
リリスの意識が、安心したように途切れた。
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