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15、謁見
第165話 迷える者達
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2羽のグルクが飛ぶあとを、追うように青く輝く蝶が風に逆らい飛んでゆく。
ミスリルの村はミスリルしか知らない。
だからこそ、見失わぬようにピタリと一定の距離を置いて、消え入りそうになりながら必死でついて行く。
再度リリスを襲う機会をうかがうため、ただ殺意だけをまとって、しがみつくように。
それはゼブリスルーンレイアの血から生まれ出でた、彼の分身でもある蝶だ。
だが、あまり離れすぎると本体との糸が途切れてしまう。
彼は魔導師ではない。
精霊の道も見えぬ彼だからこそ、その術には彼自身の血が、命の炎が必要だった。
命を削って術を無理矢理発動しているのだ。
駄目ダ、見エナクナル。イマ……イマ、殺サネバ……
蝶の中で彼のつぶやきが漏れ、蝶の姿が乱れて針のように細く鋭利な形へ姿を変えた。
そして一息に、エリンが操るグルクめがけて飛んでゆく。
その針を、突然現れた大きな鳥の足が優しく掴んだ。
その鳥の大きな力の衝撃に、か弱い蝶は針の姿を崩し、今にも消えそうな青い火の玉となった。
それはフレアゴートの中へと吸収されて、ふと気がつくと彼は暖かな光りの中に倒れていた。
「ここは……私は死んだのか?」
顔を上げると、目前に長い角と炎のたてがみを持つ動物が自分を見下ろしている。
それは穏やかな顔で目を閉じ、ブルリと首を振った。
「なにをそれほど悲しんでいる。
何をそんなに諦めきっている。
お前の心はただ、悲しみに満ちて光が見えぬ。希望の一片もない。
まるで泣きながら暗闇を手探りで進む赤子のようだ。人間よ……」
それは、フレアゴートという精霊王ではなかったか。
だが、自分の心を見透かされ、今はそんなことどうでも良かった。
今まで、誰も自分の気持ちを考えてくれたことなど無かった。
誰も、自分を気遣って声をかけてくれることもなかった。
自分の親でさえも…………
「私は………何もかもを諦めねばならなかった。
だからこそ……だからこそなのだ。
この命賭してもあの子を殺さねばならぬ。」
「諦めか……
わしも巫子が殺されるたびに、ただ諦めてきた。
今のわしにはあの子は希望、今までただ諦めるしかなかった暗く沈んだわしの心に、あの子がひと筋の光となってわしを導いてくれた。
お前の、諦めと言う暗闇の先に救いはあるのか?人間よ。
あの子を殺すことが、お前の本当の望みか?」
「ああ!望みさ!あいつがいなければ、王子は確実に王になれる。
王子のために全部諦めてきたんだ、私は!
……私は……
諦めの先に救いだって?
そんなこと……わかっているさ。
でも、家のため、父のため、母のため、王子のため、私は自分を犠牲にして……すべて失ってきた!
諦めるしかないじゃないか!
邪魔者は殺すしかないじゃないか!」
ゼブリスルーンレイアの目から、涙があふれて流れ落ちる。
身体中の水と共に、何かが堰を切ってあふれ出す。
フレアゴートは、ただそれを、優しく見つめて受け止めていた。
「迷える者よ、お前の姿はつい昨日までのわたしのようだ。
光りを探して暗闇を必死で這いずり回り、疲れて探す事さえやめてしまった……
迷える者よ、お前は自ら暗闇だけを見つめているのではないのか?
お前に大切な物は無いのか?
お前の、愛する者はおらぬのか?
お前を、求め愛する者はおらぬのか?
いいや、確かにいるはずだ。
お前はその短い生を、諦めだけで満たして終わって、それでよいのか?
お前が本当にやりたかった事はなんだ?
お前の望みを自らに問うてみよ。」
「うるさい、うるさい!
お前に僕の気持ちがわかる物か!」
「迷える者よ、輪廻に悔恨を残すな。
お前を迷わせたその、青き聖なる炎との契約はわしが預かる。
あれも器を亡くして迷っている。我が配下の者が、お前を惑わせた事には謝罪しよう。
いたずらに命を削る前に踏み出して見よ。
わしは、暗闇からあの子に救われた。
お前を救うのは誰だ?人間。」
「………何を……私の、この大切な力を奪うだと?
やめてくれ……僕は僕しか信じられない。
それは僕の、唯一の頼れる力。ただ一つの大切な物!
やめてくれ、火のドラゴン。
やめてくれ!」
「迷う者は心迷える者を生み出す。
お前の王子を見よ。
道を違える前に、お前にはやるべき事があるはずだ。」
フレアゴートが遠く、遠く離れてゆく。
ゼブリスルーンレイアは、やがて自室の長いすにもたれるようにして眠っている所で目覚めた。
……夢か……?
いや、違う!
涙を拭って、先ほど切った腕の変化にふと気がつく。
急いで血に濡れた布をほどくと、そこにあった切り傷は、うっすらと傷跡を残して閉じていた。
ミスリルの村はミスリルしか知らない。
だからこそ、見失わぬようにピタリと一定の距離を置いて、消え入りそうになりながら必死でついて行く。
再度リリスを襲う機会をうかがうため、ただ殺意だけをまとって、しがみつくように。
それはゼブリスルーンレイアの血から生まれ出でた、彼の分身でもある蝶だ。
だが、あまり離れすぎると本体との糸が途切れてしまう。
彼は魔導師ではない。
精霊の道も見えぬ彼だからこそ、その術には彼自身の血が、命の炎が必要だった。
命を削って術を無理矢理発動しているのだ。
駄目ダ、見エナクナル。イマ……イマ、殺サネバ……
蝶の中で彼のつぶやきが漏れ、蝶の姿が乱れて針のように細く鋭利な形へ姿を変えた。
そして一息に、エリンが操るグルクめがけて飛んでゆく。
その針を、突然現れた大きな鳥の足が優しく掴んだ。
その鳥の大きな力の衝撃に、か弱い蝶は針の姿を崩し、今にも消えそうな青い火の玉となった。
それはフレアゴートの中へと吸収されて、ふと気がつくと彼は暖かな光りの中に倒れていた。
「ここは……私は死んだのか?」
顔を上げると、目前に長い角と炎のたてがみを持つ動物が自分を見下ろしている。
それは穏やかな顔で目を閉じ、ブルリと首を振った。
「なにをそれほど悲しんでいる。
何をそんなに諦めきっている。
お前の心はただ、悲しみに満ちて光が見えぬ。希望の一片もない。
まるで泣きながら暗闇を手探りで進む赤子のようだ。人間よ……」
それは、フレアゴートという精霊王ではなかったか。
だが、自分の心を見透かされ、今はそんなことどうでも良かった。
今まで、誰も自分の気持ちを考えてくれたことなど無かった。
誰も、自分を気遣って声をかけてくれることもなかった。
自分の親でさえも…………
「私は………何もかもを諦めねばならなかった。
だからこそ……だからこそなのだ。
この命賭してもあの子を殺さねばならぬ。」
「諦めか……
わしも巫子が殺されるたびに、ただ諦めてきた。
今のわしにはあの子は希望、今までただ諦めるしかなかった暗く沈んだわしの心に、あの子がひと筋の光となってわしを導いてくれた。
お前の、諦めと言う暗闇の先に救いはあるのか?人間よ。
あの子を殺すことが、お前の本当の望みか?」
「ああ!望みさ!あいつがいなければ、王子は確実に王になれる。
王子のために全部諦めてきたんだ、私は!
……私は……
諦めの先に救いだって?
そんなこと……わかっているさ。
でも、家のため、父のため、母のため、王子のため、私は自分を犠牲にして……すべて失ってきた!
諦めるしかないじゃないか!
邪魔者は殺すしかないじゃないか!」
ゼブリスルーンレイアの目から、涙があふれて流れ落ちる。
身体中の水と共に、何かが堰を切ってあふれ出す。
フレアゴートは、ただそれを、優しく見つめて受け止めていた。
「迷える者よ、お前の姿はつい昨日までのわたしのようだ。
光りを探して暗闇を必死で這いずり回り、疲れて探す事さえやめてしまった……
迷える者よ、お前は自ら暗闇だけを見つめているのではないのか?
お前に大切な物は無いのか?
お前の、愛する者はおらぬのか?
お前を、求め愛する者はおらぬのか?
いいや、確かにいるはずだ。
お前はその短い生を、諦めだけで満たして終わって、それでよいのか?
お前が本当にやりたかった事はなんだ?
お前の望みを自らに問うてみよ。」
「うるさい、うるさい!
お前に僕の気持ちがわかる物か!」
「迷える者よ、輪廻に悔恨を残すな。
お前を迷わせたその、青き聖なる炎との契約はわしが預かる。
あれも器を亡くして迷っている。我が配下の者が、お前を惑わせた事には謝罪しよう。
いたずらに命を削る前に踏み出して見よ。
わしは、暗闇からあの子に救われた。
お前を救うのは誰だ?人間。」
「………何を……私の、この大切な力を奪うだと?
やめてくれ……僕は僕しか信じられない。
それは僕の、唯一の頼れる力。ただ一つの大切な物!
やめてくれ、火のドラゴン。
やめてくれ!」
「迷う者は心迷える者を生み出す。
お前の王子を見よ。
道を違える前に、お前にはやるべき事があるはずだ。」
フレアゴートが遠く、遠く離れてゆく。
ゼブリスルーンレイアは、やがて自室の長いすにもたれるようにして眠っている所で目覚めた。
……夢か……?
いや、違う!
涙を拭って、先ほど切った腕の変化にふと気がつく。
急いで血に濡れた布をほどくと、そこにあった切り傷は、うっすらと傷跡を残して閉じていた。
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