赤い髪のリリス 戦いの風

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17、地底のイスカ村

第184話 御方様(おかたさま)

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リリスはキョトンとして、口惜しそうなガーラントたちを見上げる。

「えーーと、あの、状況がよくわかりません。
火の神官?神官様がいらっしゃるのですか?え?なぜ?どう言う事でしょうか?」

話を聞いて知っていたガーラントたちが、どう話した物かと思わず長老と長の顔を見る。
長老は、まず落ちついて座れとガーラントたちに手で進めた。

「あの方々は、リリサレーン様の時代に火の神殿で神官をしていたミスリルです。
2人の巫子を亡くし火の神殿が取り壊されたあと、自害なさろうとしたあの方々にフレアゴート様は、火の神殿の再建を約束されてそれに手を貸して欲しいと仰ったそうです。
なればとフレアゴート様のお力でこの二百数十年を眠りについていらっしゃいましたが、あの方たちの時間はあの災厄の時のままです。
どうか、ご理解下さい。」

「それで…… 合点がいきました。
あの方たちにとっては、リリサレーン様が今でもお仕えする巫子様なのですね。」

「フレアゴート様は、これを最後の機会とお考えなのでしょう。
彼らすべてを目覚めさせた今、再度眠りにつく事は出来ません。」

「はい。
でも彼らが生きておられたのは思いがけなく、とても嬉しい事でございます。
神事など一切わかりませんでしたが、これで光明がひらけました。」

「それではどちらに神殿を?」

「いえ、あの、実はまだ何も決めてないんです。
ただ、神殿造りは人々のためと言いましても、王家のご協力無くして存続しないと思います。
地の神殿のように皆様のためになるようになるには、私の次の、次の代…… いえ、それ以上かかると思うんです。
ですがまだ、本城へのお話はこう言う事がございましたので、中途で終わっております。
もし、このまま認めて頂けなくとも、レナントのガルシア様にもご協力は頂けるかと存じます。
でも、その時は神殿とは言えないもので終わってしまうと思いますけど…… 」

苦笑して、なんだか自然に声が弱くなる。
自分が巫子と認められると、とても困る人がいるらしい。それが王子ではないことを祈っているけど、身分が高い人であることはわかっている。
もしかしたら、王様や…… お后様かもしれない。
いらない自分は存在するだけでもとても邪魔なのだろう。

「気の弱いことを、あなたらしくない。
ホホ、あのガルシア殿を見くびってはなりませんよ。
あなたの後ろの騎士をご覧なさいませ、どれほど大切に思っていらっしゃるかはお二人を見ればわかります。
もっと自信をお持ちなさい。」

振り返ると、なんだか退屈そうなブルースと、神妙な顔のガーラントがうなずく。
リリスは二人の顔を見て、ホッと笑った。

「はい、ありがとうございます。
でも、今はその前に私は、力を得て隣国トランの魔導師殿を止めなくてはなりません。」

「それは…… 状況が変わりました。
トランからは脅威は去ったのです。」

「え?それはどう言う?」

「ですが、アトラーナにその脅威はまだあります。いや、増していると言えましょう。」

「まさか、トランに行かれたセレス様が?!」

長老がうなずいたとき、岩の裂け目の入り口から数人が駆け込んで知らせに来た。

「御方様《おかたさま》が参られました!」

「おお!それでどのようなご様子か!」

「レニンが相当お悪いと。ヴァシュラム様は?」

「やはりお呼びしても反応がない。
出来る限りの事をしよう、早うこちらへお連れするのだ。」

長老が慌てた様子で立ち上がり、杖をついて社のあがり口へと歩む。

「御方様!」「御方様!!」
「御方様、お気を確かに!」「御方様!!」

岩の裂け目の入り口からは、心配する村人に囲まれてルビーが毛布に包んだ人を抱いて現れた。

「レニン!早うこちらへ!」

叫ぶ長老の横から、驚いてリリスも裸足で駆け寄る。

「ルビー様!まさか!」

「リリス殿、こちらへいらしたのですか……
長老、助けてくれ!
消耗されて、一旦はご自分で回復されたのだが、すぐにお倒れになって……」

「わかっている、私も遠見で見ていた。
さ、早う泉の淵の寝台へ。
その大きな岩の上だ。
おおお、なんということ。力の均衡がすっかり崩れてしまっておられる。
ご自分の身体に、お力を留め置くことが出来ぬようになっておられるのだ。」

長老が長と供に社の奥から数人が出て来た。
社の守り人だろうか、短剣を腰に携える白装束の青年や少女。
そして杖をつき、長老は異様に長いすそを引きずりながらその岩へと急ぐ。
少女が一際大きな岩の上に、サッと敷物を敷いた。
ルビーがそこに抱いてきた人を横たえさせて、毛布をそっと開く。
すると開いた瞬間、ドッと何か触れる事の出来ない澱のような物が流れて消えた。

「これは……セレ……ス……様……!」

それはあの美しいセレスの姿とは思えない。
年老いた老人のような姿だった。
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