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17、地底のイスカ村
第185話 不安定な身体
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開く毛布の中から現れたセレスの顔に、リリスは息を飲んでよろよろと後ろに下がりガーラントにぶつかった。
気がつくと村人は、少し離れたところに下がり、手を合わせてブツブツと祈っている。
リリスは落ちついて気をとり直し、セレスから装飾品をはずす長老に手を貸した。
「私にできる事はありましょうか?」
「いえ、ここは我らが託された使命。
ああ、ならぬレニン、服はナイフで切れ。
無理に動かしてはお身体が崩れる。
腕輪が細くなっている、これを壊せば大変な事になる、注意せよ。
御身をお清めする間がない、他の金具ははずしたな?良し、下がれ。」
セレスは、それがあの美しかったセレスだと認識できないほどにみずみずしさを失い、肉がそげ落ち皮膚が老人のようにシワを刻んで、触れると崩れそうなもろさを感じる。
金の腕輪はこんなにも細かっただろうか?
なぜか今にも折れそうなほどに、針金のように細くなっている。
髪はツヤを失い、真っ白になって見る影もなかった。
長老が、その骨のような手をうやうやしく両手に取り、祈るように額に当てる。
そして数歩下がり泉に向かって声を上げた。
「聖なる泉におわします地の乙女よ、お出でませ!」
ザザザザ………
「おお……」
泉の表面が波打ち、盛り上がってゆく。
それは3人の髪の長い女性の形を成し、リリスはまるで水の精霊のようだと思った。
その乙女は岩の寝台に横たわるセレスの身体に滑るように近づき、彼の身体をそっと抱き上げる。
そして静かに泉の中へと消えていった。
「あっ、長老!息は?大丈夫なのか!」
ルビーが慌てて長老に叫ぶ。
「大丈夫、落ち着け。静かにせよ。
御方様のお身体は、少々人間と異なる。
内と外から力を徐々に取り込む事で、お力のバランスを取り戻すのだ。
しかしかなり消耗が激しい、これは時間がかかるぞ。
シイラ、関を取り払え。もっと濃い神気をどんどん入れよ。」
「承知しました。」
「長、濃い御神水が流れる。畑に影響が出ぬように調節を頼む。」
「わかった、村の若い衆に指示しよう。
村の衆も作業に戻れ、お方様は長老に任せよう。心配はいらん。」
村人が長に急かされ、ザワザワと祈りを口にし心配そうに振り向きながら、岩の裂け目の入り口へと戻って行く。
泉ではシイラと呼ばれた白装束の少女が、一礼して身軽な様子でピョンピョンと飛び石を伝って水源のような奥の岩の裂け目まで飛び、板で仕切られた関を開ける。
どうどうと流れ込む緑色に輝く水に、泉全体が輝きを増して行った。
しかし守人もまるで、泉の水には何かあるのか触れないように気をつけているように見える。
この地の底で作物さえ生き生きと育てる神水と呼ばれる水だ。
やはり、人間にも影響が出るのだろう。
リリスが手を合わせ祈りながら泉を覗き込むと、セレスの身体は水の奥深くに沈み、澄んだ緑の輝きに包まれて小さく見えた。
「最近お見えにならないので心配していたが、お姿が変わるほど消耗なさったのは初めてだ。やはり、ご無理をなさっていても、すでに再生の時期なのであろう。
元々今のお身体は、多大なお力を使える代わりに非常に危ういバランスでいらっしゃる。」
「再生とは、若返りをここでなさっているのですか?」
リリスの問いかけに、レニン……ルビーも興味深そうな視線を長老に向ける。
ルビー自身、セレスの供でここに来るのは初めてだ。
いつも、時折深夜に1人でひっそりと出かけられるのは知っていた。
何度か後を追ったがいつも巻かれて見失い、どこに行かれるのか謎だった、が、まさかここに来ていたとは知らなかったのだ。
村でもここは聖域で、村祭り以外は入ることを禁じられていた。
「御方様の事は、我らも詳しく話す事は出来ぬ。
だが、これだけは……あの方は無理に無理を重ねておられる。だから……」
「あの腕輪は何なのです?私は従者としてそれだけは聞いておきたい。
長老、どうか……それだけでいいのだ、教えてくれ。」
ルビーの問いかけに、長老が目を伏せる。
だが、心を決めて、ようやく口を開いた。
「わかった。
仕方ない、確かにお前たちは知っておくべきだ。
あれは……あの腕輪は、あの方の命の砦。あの方の命をこの世につなぎ止める、大切なクサリ。」
「砦?いつもこれは自分に着けられた枷とお言いだったが……」
長老が、重い表情で泉を背にして社(やしろ)に戻る。
皆、それに続いて戻っていった。
「腕輪を通して、いつも主様に……ヴァシュラム様に監視されているようだと仰られていた。だから、そう皮肉られたのだろう。
あの方は再生を繰り返すようになって、あのようなお力を得られた。
だが、当初それは弱く、ご自分に大きな使命を課したあの方の、とてもご期待に応える物ではなかったのだ。
だが、今のお身体へと若返りの施術を成されたとき、あのお力が大きく膨らみ暴走してしまった。
あの場にヴァシュラム様がいなければ、お方様と共にこの村一帯は消えて無くなっていたろう。
あの腕輪は、その時急場であしらわれた、お力を制御する物だ。
だが、お方様はその時、お身体の半分を失われてしまった。
それはヴァシュラム様のお力で失った分を補われ事なきを得たが、お方様はその為に不安定なお身体となっていらっしゃる。
どこか、何かのバランスが崩れれば、あのようにすぐにお命に関わる。
だが、お方様はどうしても今のお身体でなくてはならぬと仰るのだ。
それは、親としてのカンを鈍らせたくないというお気持ちなのだろうが……。」
「親?それは……?」
思わずリリスが横から問うた。
つい口が滑ったと、長老が袖で口をふさぐ。
だが、ルビーが長老の顔を見てうなずいた。
気がつくと村人は、少し離れたところに下がり、手を合わせてブツブツと祈っている。
リリスは落ちついて気をとり直し、セレスから装飾品をはずす長老に手を貸した。
「私にできる事はありましょうか?」
「いえ、ここは我らが託された使命。
ああ、ならぬレニン、服はナイフで切れ。
無理に動かしてはお身体が崩れる。
腕輪が細くなっている、これを壊せば大変な事になる、注意せよ。
御身をお清めする間がない、他の金具ははずしたな?良し、下がれ。」
セレスは、それがあの美しかったセレスだと認識できないほどにみずみずしさを失い、肉がそげ落ち皮膚が老人のようにシワを刻んで、触れると崩れそうなもろさを感じる。
金の腕輪はこんなにも細かっただろうか?
なぜか今にも折れそうなほどに、針金のように細くなっている。
髪はツヤを失い、真っ白になって見る影もなかった。
長老が、その骨のような手をうやうやしく両手に取り、祈るように額に当てる。
そして数歩下がり泉に向かって声を上げた。
「聖なる泉におわします地の乙女よ、お出でませ!」
ザザザザ………
「おお……」
泉の表面が波打ち、盛り上がってゆく。
それは3人の髪の長い女性の形を成し、リリスはまるで水の精霊のようだと思った。
その乙女は岩の寝台に横たわるセレスの身体に滑るように近づき、彼の身体をそっと抱き上げる。
そして静かに泉の中へと消えていった。
「あっ、長老!息は?大丈夫なのか!」
ルビーが慌てて長老に叫ぶ。
「大丈夫、落ち着け。静かにせよ。
御方様のお身体は、少々人間と異なる。
内と外から力を徐々に取り込む事で、お力のバランスを取り戻すのだ。
しかしかなり消耗が激しい、これは時間がかかるぞ。
シイラ、関を取り払え。もっと濃い神気をどんどん入れよ。」
「承知しました。」
「長、濃い御神水が流れる。畑に影響が出ぬように調節を頼む。」
「わかった、村の若い衆に指示しよう。
村の衆も作業に戻れ、お方様は長老に任せよう。心配はいらん。」
村人が長に急かされ、ザワザワと祈りを口にし心配そうに振り向きながら、岩の裂け目の入り口へと戻って行く。
泉ではシイラと呼ばれた白装束の少女が、一礼して身軽な様子でピョンピョンと飛び石を伝って水源のような奥の岩の裂け目まで飛び、板で仕切られた関を開ける。
どうどうと流れ込む緑色に輝く水に、泉全体が輝きを増して行った。
しかし守人もまるで、泉の水には何かあるのか触れないように気をつけているように見える。
この地の底で作物さえ生き生きと育てる神水と呼ばれる水だ。
やはり、人間にも影響が出るのだろう。
リリスが手を合わせ祈りながら泉を覗き込むと、セレスの身体は水の奥深くに沈み、澄んだ緑の輝きに包まれて小さく見えた。
「最近お見えにならないので心配していたが、お姿が変わるほど消耗なさったのは初めてだ。やはり、ご無理をなさっていても、すでに再生の時期なのであろう。
元々今のお身体は、多大なお力を使える代わりに非常に危ういバランスでいらっしゃる。」
「再生とは、若返りをここでなさっているのですか?」
リリスの問いかけに、レニン……ルビーも興味深そうな視線を長老に向ける。
ルビー自身、セレスの供でここに来るのは初めてだ。
いつも、時折深夜に1人でひっそりと出かけられるのは知っていた。
何度か後を追ったがいつも巻かれて見失い、どこに行かれるのか謎だった、が、まさかここに来ていたとは知らなかったのだ。
村でもここは聖域で、村祭り以外は入ることを禁じられていた。
「御方様の事は、我らも詳しく話す事は出来ぬ。
だが、これだけは……あの方は無理に無理を重ねておられる。だから……」
「あの腕輪は何なのです?私は従者としてそれだけは聞いておきたい。
長老、どうか……それだけでいいのだ、教えてくれ。」
ルビーの問いかけに、長老が目を伏せる。
だが、心を決めて、ようやく口を開いた。
「わかった。
仕方ない、確かにお前たちは知っておくべきだ。
あれは……あの腕輪は、あの方の命の砦。あの方の命をこの世につなぎ止める、大切なクサリ。」
「砦?いつもこれは自分に着けられた枷とお言いだったが……」
長老が、重い表情で泉を背にして社(やしろ)に戻る。
皆、それに続いて戻っていった。
「腕輪を通して、いつも主様に……ヴァシュラム様に監視されているようだと仰られていた。だから、そう皮肉られたのだろう。
あの方は再生を繰り返すようになって、あのようなお力を得られた。
だが、当初それは弱く、ご自分に大きな使命を課したあの方の、とてもご期待に応える物ではなかったのだ。
だが、今のお身体へと若返りの施術を成されたとき、あのお力が大きく膨らみ暴走してしまった。
あの場にヴァシュラム様がいなければ、お方様と共にこの村一帯は消えて無くなっていたろう。
あの腕輪は、その時急場であしらわれた、お力を制御する物だ。
だが、お方様はその時、お身体の半分を失われてしまった。
それはヴァシュラム様のお力で失った分を補われ事なきを得たが、お方様はその為に不安定なお身体となっていらっしゃる。
どこか、何かのバランスが崩れれば、あのようにすぐにお命に関わる。
だが、お方様はどうしても今のお身体でなくてはならぬと仰るのだ。
それは、親としてのカンを鈍らせたくないというお気持ちなのだろうが……。」
「親?それは……?」
思わずリリスが横から問うた。
つい口が滑ったと、長老が袖で口をふさぐ。
だが、ルビーが長老の顔を見てうなずいた。
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