赤い髪のリリス 戦いの風

LLX

文字の大きさ
194 / 303
17、地底のイスカ村

第192話 悩み多き少年

しおりを挟む
その後、気持ちが落ちついた頃、ブルースとガーラント、そしてリリスはアトラーナの現在と城の状況、そしてリリスの周辺のことを彼らに説明し、指輪の在処に思い当たることは無いか尋ねた。
だが、火の指輪は王がリリサレーンの遺骸と共に城に引き取ってしまい、その後の行方は知らないという。
だが、指輪の重要性は知っているはずであり、火の巫子は死後、フレアゴートが火に戻すので行方不明というのはおかしいと話した。

リリスもなんとなく、それはうなずく。
指輪は確かに城内のどこかから感じる。
感じるというのは、大まかなことで方向まで分からない。
火の精霊が封じられ、巫子から長く離れた状況にあるだけに、指輪の力もかなり削がれてしまったのだろう。

「でも、あなたが本当の赤の巫子ならば、指輪はあなたにこたえるはず。
それに、火の指輪は普通の人間には危険な物です。
邪な心を持つ者が指に通すとどうなるか。
まだリリサレーン様が幼かった時、指輪を盗もうとした男が焼けて死にました。
恐らく自らの指に付けようとしたのでは無いかと言われています。
“神の道具は神の下に管理すべし”と言うのが神殿の掟。
指輪は必ず精霊王の下に管理せねばなりません。」

そう言えば、ヴァルケンもそんなことを言われていたっけと、リリスがうなずく。
つまり、火の巫子として本当の試練は指輪をつけるときなのだ。
人間が巫子を認めることが試練では無い。
精霊王は便宜上、人の姿を取ってはいるが、元より形の無い神。
人間は何かを間違っている。


話が終わってリリスたち3人が聖域を出て村に用意された部屋へ戻って行く。
地下の村では時間の流れが見えないが、村人が皆食事を囲んでいるのを見るともう夕食の時間なのだろう。
それほど時間が過ぎてしまったのかと疲れを感じ、大きくため息をついた。
ブルースが、リリスの頭を後ろからゴツンと叩く。

「随分勇ましかったな、巫子様。」

茶化してククッと笑う。
リリスが痛そうに頭をさすり、プイッと口を尖らせた。

「だって、ああ言うしか無いじゃありませんか。うやむやな答えは彼らを混乱させてしまいます。
目的をはっきりさせるのは大切なことです。
それに………」

急にリリスがうつむいて、ションボリ声を落とす。

「……自分が…いい子過ぎるって、わかってるんです。
でも、なぜかあの、自分の産みの親だという母を見ても、憎いとか悔しいとか、そんな物何も浮かばなかった。
ただ、あの場に母上が、セフィーリア様がいなくて良かったと、
私は自分がどんな顔をしていたのか分からなくて。
もし嬉しそうな顔だったらどうしようとか考えると、合わせる顔が無くて、とにかく何も考えるまいと……
結局、僕は逃げちゃってるんでしょうか。
とにかく今は、自分のやらねばならないことを考えなきゃって、そう、つまり……
もう、今はそれどころじゃ無いって事で、そんな物あとでゆっくり悩むことにします。」

パッと顔を上げ、まるで自分に言い聞かせるように大きくうなずく。

「まあ、すぐに答えが出るような物でも無いしなあ。
色々悩み多きガキだな、お前さんは!」

ブルースが両手で彼の頭をグシャグシャに撫で、リリスが悲鳴を上げて髪を手ぐしで直す。

「キャアッ!もう!ひどい、僕の髪って、すっごくもつれやすいのにー!」

ゆるくウェーブのある赤い髪は、もつれて爆発したような頭になってしまった。
半泣きで髪のもつれを引っ張るリリスに、ガーラントも彼には珍しくニッと笑う。

「そうだな、貴方は悩みが多すぎる!もっとラクに生きる道もあろうぞ。」

そしてブルースのように片手でリリスの赤い髪をグシャグシャに撫でた。

「ぎゃあっ!ガーラント様まで!」

「大丈夫、大丈夫だ。きっとすべて上手く行く、大丈夫だ!
さあ、飯を食おう!火の巫子殿!」

リリスが襲われた後、暗い中部屋に飛び込んできた王妃の姿は子供を心配する親の姿だった。
この方は王座など頭にも無いだろう。だが、神殿ならばなんとかなると思う。
彼女はきっとこの子の力になってくれるはずだ。

「あっ!エリン様、お帰りになっていたのですね。」

突然リリスが声を上げる。
見ると、その前に長髪のミスリルが頭を下げていた。
その人物は、表情を木の仮面が隠して心が知れずドキリとする。
仮面は古く、子供の時から付けていたのだろう。
彫刻も無くあっさりとした物で、目の部分に穴が空いてのっぺりとして不気味な物だった。

ブルースとガーラントが、薄気味悪さに思わず顔をこわばらせて迎える。
彼はエリン、城でリリスを襲ったミスリルの兄弟を退け、毒にやられたリリスをここに連れてきてくれたミスリルだ。
彼はリリスの頼みを聞いて、今の状況を書いたブルースの手紙をレナントのガルシアまで届けて帰ってきたところだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた

今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。 レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。 不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。 レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。 それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し…… ※短め

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

冤罪で追放された令嬢〜周囲の人間達は追放した大国に激怒しました〜

影茸
恋愛
王国アレスターレが強国となった立役者とされる公爵令嬢マーセリア・ラスレリア。 けれどもマーセリアはその知名度を危険視され、国王に冤罪をかけられ王国から追放されることになってしまう。 そしてアレスターレを強国にするため、必死に動き回っていたマーセリアは休暇気分で抵抗せず王国を去る。 ーーー だが、マーセリアの追放を周囲の人間は許さなかった。 ※一人称ですが、視点はころころ変わる予定です。視点が変わる時には題名にその人物の名前を書かせていただきます。

〈完結〉姉と母の本当の思いを知った時、私達は父を捨てて旅に出ることを決めました。

江戸川ばた散歩
恋愛
「私」男爵令嬢ベリンダには三人のきょうだいがいる。だが母は年の離れた一番上の姉ローズにだけ冷たい。 幼いながらもそれに気付いていた私は、誕生日の晩、両親の言い争いを聞く。 しばらくして、ローズは誕生日によばれた菓子職人と駆け落ちしてしまう。 それから全寮制の学校に通うこともあり、家族はあまり集わなくなる。 母は離れで暮らす様になり、気鬱にもなる。 そしてローズが出ていった歳にベリンダがなった頃、突然ローズから手紙が来る。 そこにはベリンダがずっと持っていた疑問の答えがあった。

【完結】16わたしも愛人を作ります。

華蓮
恋愛
公爵令嬢のマリカは、皇太子であるアイランに冷たくされていた。側妃を持ち、子供も側妃と持つと、、 惨めで生きているのが疲れたマリカ。 第二王子のカイランがお見舞いに来てくれた、、、、

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

処理中です...