赤い髪のリリス 戦いの風

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21、地の三番目の巫子

第220話 魔導師の長は胡散臭い

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黒猫に姿を変えている異界人、アイがつぶらな瞳をルークに向ける。

「ねえ、見つにゃったの?」

「ああ、これだろ?デカい真珠だ、この世界じゃ珍しい。
さすが王族だな。」

「じゃあ、ライアに言ってくるね。かすめるンにゃにゃいわよ。」

「まて」

「にゃによ」

「お前は確かリリスを追って、向こうの世界の日本から来たんだったな。
手を借りたい、話がある。」

「やーよ、あんたに恩はにゃいから。」

「確かに」

クスリと笑って、ルークが呪文を小さくつぶやきトンと杖をつく。
その瞬間、風に揺れる草木のざわめきが消えた。

「お前はどうも、簡単に話に応じてくれそうに無いから仕方ない。
これで話をしよう。
さて、お前は小回りがきいてとても便利そうだ、私はしばしお前の手が借りたい。
もちろん安全は保証するさ、帰りたければいつでも帰してやろう、それでどうだ。
帰る時は、もちろん人の姿に戻してやる。」

「えっ?」

「魔導師に借りを作らせるのは、お前にとって損では無いぞ。」

黒猫アイが考える。

「便利って言うのはわかるにゃ、自分でもそう思うもにょ。
でも、あたし怖いの嫌いよ。あんたの補償なんて全然当てにならないにゃ。」

「おやおや、私も信用がない。この魔導師の長が。
向こう流に言えば、魔導師のトップなのだがね。」

「そっか、あんた長だったわね……でも、あんたって予知で有名にゃにゃい?
予知だけじゃさ、めっにゃ心配。それに知ってるにゃ、私。
魔導師は地水火風どれかに属して、そのどれかしか使えにゃい。
しかも、誰もが器用じゃにゃいって事。
あんたがどれなのかも知らないのよ、たとえ長でもさ、あんたもっと情報公開しにゃさいよ。」

ルークがきょとんと目を剥いて、手の中の真珠を指で転がす。
なるほど、リリスと親しいとは聞いたが、結構付き合いが長そうな奴だと目を泳がせて考える。

「さて……、どうしたものか。
異世界人のお前は、知りすぎても命が危ういとは考えぬらしい……
では、一つだけ教えよう。私も、目的があってここにいる。
それは、お前が気にかける者には利益となるだろう……

それで、どうだ?」

「うーん、にゃんかさ~ボンヤリしてるにゃねえ。
渋いにゃ~、判断に困るにゃ~、あたしさあ、それで命かけるのぉ?やだにゃ~」

黒猫が目をそらしてシッポをパタンパタンと不満そうに左右に振る。
ルークがため息をついて、杖で肩をトントン叩いた。

「なんてイヤな奴だ。話したくないってのに、無理矢理聞き出そうとしやがる。
俺はなんて可哀想なんだろう。
こう言うの、向こうの世界でなんて言うか知ってるぞ、ええと、なんだっけ、俺もずいぶん昔に行ったっきりだからな。
ええと、セク……ハラだったっけな。」

「やあねえ、パワハラって言うのよ、パワハラ。
にゃんだ、あんたもあっちで暮らしたことあるんだ。」

「あるさ、リリスを迎えに行った時、向こうの服だったろう?
空間転移は難技だが、取得するとまず行ってみたいのはあの世界さ。
向こうで困ればヴァシュラム様がいるしね。
俺はあのボールペンって奴が、便利でお気に入りなんだ。」

「ふうん、爺様って、たとえるなら大使館にゃのか。
ふうん、ふうん、ふうん」

ちらり、ルークがアイを見る。
向こうの世界の話を出して気を引く、これが最後の懐柔策だ。
あまり深く知られるのもまずい。

「で、返事は?」

「うーーーん、まあ、働けって火の奴に言われたし、危なくにゃいっての条件にゃら、いいにゃ。
でもさ、あんた、ほんとにリリスの味方?」

ルークがきょとんとして苦笑する。

「ああ!もちろんさ!
今更だが実はな、俺はあいつの味方なんだ。
無論、俺がやろうとすることも、結果的にあいつの為になることさ。
ほら、利益が一致するだろう?」

不自然なほど満面に笑みを浮かべる。
黒猫が、ちらりと横目で見て、ぷいと横を見た。

「うさんくさ~、半分も信用出来ないわさ。」

長いシッポをパタンパタンと左右に振りながら、彼を見上げる。

「ま、いいわ。で、初仕事ってニャによ。」

ルークがニヤリを押さえてニッコリする。
しゃがみ込んで黒猫の手を取り、小さな手と握手を交わす。
そして口を開いた。

「では、まず最初の頼みだ。
王子の動向が知りたい。
あいつが取り巻きと何をしているか、魔導師は誓約で水鏡で王家の部屋をのぞき込むことが出来ないんだ。
お前たち異界人は、こちら世界の魔導に干渉しない。」

「それは、爺様に言われたにゃ。
お前達は透明人間、魔導も効かないって、でも、爺さんはあたし達に魔法をかけるの、矛盾してるにゃよねえ。」

クククッとルークが笑う。

「まったく、お前達はブタに真珠って奴だ。この世界の精霊王はお前達の言う神様だぜ?
最高位の術師だからこそだ。神の願いは何よりも優先される。それは自然界の掟のようなものだ。
たとえ、命さえもな。」

「ふうん、にゃんかわかんにゃいけど、わかったにゃ。」

「引き受けてくれるか?」

「うん」

なにか、返事をした一瞬、ポッと、身体が熱くなった。
ルークを見ると、首を傾げて苦笑いしてる。

「やはり、誓約の縛りも浅いなー、ほとんどかからなかった。異界人は難敵だ。」

「にゃに?!にゃにしたの?!」

アイ猫の毛が逆立ち、ボールみたいに丸くなった。
ルークが指をチッチと横に振る。

「簡単な誓約さ、結んでおくと心話が繋がって意思の疎通がやりやすい。
ま、少しは繋がったかな?期待しないでくれ。
ただ、お前さんの命の危機くらいは感じ取ることが出来るだろう。」

「勝手にしにゃいでよ。にゃっぱりあんた、にゃんか信用できないにゃー
ちゃんと連絡来るけど、にゃんかあったら保護してよね。」

「承知、長の名とこの杖に誓って、その方の命は保証する。」

どうも信用出来るか怪しいが、アイはこの謎だらけの魔導師の長と密かに契約を結ぶことに決めた。
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