赤い髪のリリス 戦いの風

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21、地の三番目の巫子

第222話 地の巫子アデル

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黒髪おかっぱの少年が、驚いたように振り向いてニッコリ微笑んだ。

「や、やあ、久しぶり、ルーク。」

「……アデル様か……これは失礼、お久しゅうございます。」

ガッカリ肩を落とし、ルークがため息をついて部屋に入る。
まあ、ニードが「ためになる奴」と不敬なことを言うからには、一や二の巫子では無いだろう。
一瞬日が差したような覚えを感じただけに、落胆が大きい。
しかしそのあまりの姿から、アデルの横から男がツカツカ歩み寄り、ゴンと頭突きをしてきた。

「いてっ!つつ、いきなり何をなさるオパール殿、相変わらずがさつな方だ。」

「これは魔導師殿失礼した、あまりに無礼なので思わずめまいがしてしまった。
地の巫子が三の方、アデル様に敬意を示されよ。
魔導師の塔の長とはいえ無礼者め、首をはねられぬだけでも良しとするがいい。」

のっぽで相変わらず無粋な男だ。
黒髪の中にブルーの髪が一房あるオパールが、鋭い目でルークを見下ろす。

ミスリルはだいたい目立たず頭の低い者が多いというのに、オパールはアデルに不敬を働く者には冷たく容赦が無い。
ここで敬意を示さねば、冗談抜きでたとえ自分でも首を切り落とされかねない気迫がある。

「オパール、控えよ。
ルークは失礼でサイテーな奴でも魔導師の塔の長だ。
それに僕は公式では無く忍びで来たんだよ?
ああ!もう、ルークがそんなにガッカリするとは思わなかった。
もう帰ろっかな。」

ぷうっとむくれて、アデルがドスンと椅子に腰掛け、テーブルに本を置いてパラパラめくっていく。
それでも、本を大切に扱う仕草はさすが地の巫子だ。
それがどんなに大切な物かを良くわかっている。

何冊も、分厚い本を写本して手に入れた本が並んでいる。
破損すると2冊目を手に入れることは難しい。
崩れた魔導師の塔からも、本だけは魔導を使っても出来うるだけ掘りだした。
くたくたになろうと、それだけは後世に残す義務がある。

「いやいやいや、とんでもない、お目にかかれて恐悦至極に存じます。
この城の危機に、忍んでのご登城、アデル様の御機転にこのルークも恐悦至極にございます。」

腰を落としてアデルの片手を取り、額に当てる。
顔を上げると、アデルがまだあどけなさを残す笑顔で笑っていた。

「ほんと、ルークは正直だね。
僕でガッカリしたって事は、兄様たちじゃ無いと僕では役不足ではないかと感じるほどの事態だと言う事なんだな?」

ルークが驚いて目を見開き、おもむろにうなずく。
3番目の巫子は、果たして本物の巫子なのかと言われるほど立場的に弱い。
厳しい立場であるだけに、状況判断が齢11にしてすでに冷静だ。

「は、失礼ながら、不確定ですがそうかもしれないと言う事です。」

「不敬な事を……アデル様はセレス様を持ってして幼少より突出した御才能と言わしめられたお方。
しかも百合の戦士である地の巫子を一度ならず、二度までも……」

額に青筋立てるオパールに、アデルがグーを振り上げ足をバタバタする。

「オパール!いいから下がっててよ!もう!話も聞けないじゃないか!

で、ルーク。
僕は巫子としては半人前とは言われているけど、一応修行は一通り終えている。
それは安心して良いと言っておこう。
兄様方はまだレナントに行かれたままなんだよ。

僕は神殿の守として残らねば行けないんだけど、地の紋章のほこらの事を聞いたのでね。
僕は城に行くべきだと判断した。
中に封じられていた剣がどれほどの物か……

清めや破魔は問題ないけど、でも場合によっては強い魔には負けるかもしれない。
僕は術を安定させるのがあまり得意じゃ無いんだ。」

「私が補佐いたします、ご心配なさいますな。」

オパールがスッと彼に耳打ちする。
弱みを人に見せるのは良しとしないのだろう。
だが、いっそうアデルは視線を落としてしまった。

「わかってるよ、オパール。
でも、この諦めの早さが一番不味いから、大兄様には相手を選べって言われてるんだ。
巫子が魔に魅入られると、もう殺すしか無い事もあるからって。
生きたければ心眼を磨けとね。」

アデルの声が沈んでゆく。
一人で行動した事が無いだけに、不安で仕方が無いのだろう。
ルークにここまで話すのは、あまり期待して欲しくないという自信のなさが現れている。
それでも、こうして勇気を出して来てくれたことは感謝すべきだろう。

「でも、アデル様はすでに百合の紋章を背負っておいでです。
あなたはまだお小さい、ご心配はもっともでございましょう。
それでも、百合の戦士である事には誇りを持たれて良いのです。
セレス様も、イネス様も、あなたを認めているからこそ百合の紋をお認めになった。
三の巫子アデル様、もっと自信を持たれませ。

それに、巫子であるあなたがいらしただけで、それは魔物にとっては牽制となります。
今はそれで十分です。
それに、完璧に封じるとなると巫子様お三人が束になっても果たして対抗できるかどうか……」

アデルが顔を上げ、にっこり笑みを浮かべる。

「わかったよ。じゃあ、僕のお願い聞いてくれる?」

「えーっと、私に出来る事であればなんなりと。」

「僕、王様に挨拶に行くんだ。ルークも付いてきてくれる?」

気恥ずかしそうに、肩をすぼめて首を傾げて聞いてくる。
とりあえず、着いたら王に挨拶と神官たちにうるさく言われたようだ。

「もちろん喜んで、承知いたしました。」

苦笑して差し出された小さな手を取り、ルークは立ち上がった。
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