赤い髪のリリス 戦いの風

LLX

文字の大きさ
249 / 303
23、魔導師たちの密かな攻防

第247話 灰燼のゴウカ

しおりを挟む
リリス達が、暗く、どんどん狭くなっていく地龍の中、一本角の犬のあとを付いていく。
松明の火の光も吸収されるのか、火はあるのにどんどん暗くなって行く道に、皆の心が不安で鉛のように感じていた頃、フッと急に辺りが明るく照らされた。

「あれ?出られたんでしょうか?」

「そのようだな、ここは覚えがある。」

リリスが明るく振り返ると、皆が一様にホッとした顔に見える。
守られているのか、捕らわれているのかはっきりしない状況は、奇妙なストレスで心臓に悪い。
気がつくと、あの一本角の犬は消えていた。

「あの犬どこに行ったんでしょうね。」

「さあね……さて、犬よりも。……で、どうするかね?巫子殿。
いきなり放り出されても、どちらが出口かどこにいるのかもさっぱりだな。
……ここは城の下なのか、それとも……?」

ガーラントが腰に手を置き、一息を付く。
辺りを見回すが、地龍の姿などどこにも無い。
動く音さえ聞こえないのは不気味でもある。
あれは本当に地龍だったのかという疑問は後で考えるとして、城の地下にいる状況は変わらないのだ。

「ここがどこであれ、私が指輪を感じるのは…向こうです。
行くにしても、出口の方向は確認しておく必要はありますね。
その手段があればの話ですが……」

リリスはまた目を閉じ、スッと右を指す。
通路の前を見ても後ろを見ても同じような暗闇が続く。
どちらが奥になるのか出口になるのか、とりあえずホムラを見る。
ホムラが頼られたことに少し驚き、ゴウカに目配せすると、ゴウカがうなずきリリスの前に来て頭を下げた。

「ゴウカの名は身を滅ぼす火の意だそうです。
この力だからこそ、その名が付いたと思いますが、リリサレーン様はそうでは無いと仰せでした。

様子を見て参ります……驚かれるな、ごめん。」

リリスにそう語り、床に伏した。
ゴウカの身体が一瞬影が消えて真っ白になり、ぼやけて見える。
そう感じたのは目の錯覚では無い、彼の身体は突然灰のようになり、風も無いのにサッと通路の両方へと散っていった。

灰は瞬く間に通路の隅々まで飛び、扉を見つけるとそのスキマから別の通路へ侵入して一瞬で戻る。
その灰のような粒子一つ一つに意思があるのか、ゴウカ自身にもわからない。
灰のように別れても、彼は一人なのだ。

まるで通路を俯瞰ふかんしてみるような彼の目が、現在地を確認する。
そうして通路すべてを把握して、一時もたたずまたリリスの元へと戻ってくる。
リリスの前で灰がらせんに巻き上がると、人型になりゴウカの姿を成してリリスに膝をついた。

「お見苦しい物をお見せ致しました……ですが、状況は把握出来ました。
御手で指されたのは通路の奥、現在地はこの通路の入り口から8割ほど来たところでございます。
恐らくは城の中央、やや魔導師の塔があった場所に近いかと思われます。」

ゴウカは一息にそう告げ、目を閉じて動けなかった。

しんと、空気の温度が下がったように感じる。

この力のせいで、子供の頃から親にでさえ疎まれた。
灰の塊で生まれ、身体は灰のまま性別さえも無く、子供の頃は眠っていると部屋中に散らばる。
自分は一体何なのかと悩み苦しみ、それでも生きている証に、なんとか人型を保つことを覚えた。

そして、両親は彼の行く末を案じ、御方様…ガラリアに相談した。
ガラリアは、灰なれば火の神殿に相談しましょうと。
彼はガラリアに連れられて火の神殿へと赴いたのだ。

それが、彼の人生を大きく変えた。
彼を一目見るなり、リリサレーンは言ったのだ。

「まあ!あなたは火種ね、灰の中に煌々と力強い命の明かりが見えるわ」

リリサレーンの言葉は、うつうつとした自分の心を洗い流したようだった。

そうして、彼は火の神殿で修行を積み、燃えさかるゴウカの名を与えられた。
業の火では無く、業さえ燃やす、剛の火であれと。


ああ……今世の巫子よ、あなたは私を見てなんと言うのでしょう。
気味が悪いと仰っても構いません。
私を避けられても良いのです。
私は、…それでも私は、ひっそりとあなたに仕えましょう。
私は火の巫子を、今度こそお守りする為にと生き延びたのです。


皆が息をのみ、言葉を選ぶ。
ホムラが目をそらし、探るような目でリリスを見た。

バケモノと、何度その言葉を聞いてきただろう。
この子も我らをそう言うのだろうか……

リリスも無言でキョロキョロと皆の表情をうかがっている。
子供には荷が重いかと息を吐いた時、ずいとリリスがホムラに顔を近づけ首を傾げた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた

今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。 レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。 不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。 レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。 それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し…… ※短め

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

冤罪で追放された令嬢〜周囲の人間達は追放した大国に激怒しました〜

影茸
恋愛
王国アレスターレが強国となった立役者とされる公爵令嬢マーセリア・ラスレリア。 けれどもマーセリアはその知名度を危険視され、国王に冤罪をかけられ王国から追放されることになってしまう。 そしてアレスターレを強国にするため、必死に動き回っていたマーセリアは休暇気分で抵抗せず王国を去る。 ーーー だが、マーセリアの追放を周囲の人間は許さなかった。 ※一人称ですが、視点はころころ変わる予定です。視点が変わる時には題名にその人物の名前を書かせていただきます。

〈完結〉姉と母の本当の思いを知った時、私達は父を捨てて旅に出ることを決めました。

江戸川ばた散歩
恋愛
「私」男爵令嬢ベリンダには三人のきょうだいがいる。だが母は年の離れた一番上の姉ローズにだけ冷たい。 幼いながらもそれに気付いていた私は、誕生日の晩、両親の言い争いを聞く。 しばらくして、ローズは誕生日によばれた菓子職人と駆け落ちしてしまう。 それから全寮制の学校に通うこともあり、家族はあまり集わなくなる。 母は離れで暮らす様になり、気鬱にもなる。 そしてローズが出ていった歳にベリンダがなった頃、突然ローズから手紙が来る。 そこにはベリンダがずっと持っていた疑問の答えがあった。

【完結】16わたしも愛人を作ります。

華蓮
恋愛
公爵令嬢のマリカは、皇太子であるアイランに冷たくされていた。側妃を持ち、子供も側妃と持つと、、 惨めで生きているのが疲れたマリカ。 第二王子のカイランがお見舞いに来てくれた、、、、

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

処理中です...