赤い髪のリリス 戦いの風

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23、魔導師たちの密かな攻防

第251話 精霊の石、回収

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ルークが白目を剥いてぐったりしているニードを、思い切り殴った。

「ぎゃっ!い、いてえ!」

あまりの激痛に、やっと意識が本体に戻る。
ルークが殴った手を押さえて、顔を歪めた。

「むうう~くそっ!殴ると手も痛いのか!知らなかった!」

ヒイヒイと頬をなでるニードにホッとして、ルークが水鏡に向けて叫んだ。

「アデル!ニードが戻ったぞ!」

地下道のアデルがニヤリと笑う。

「 了解 」

水晶を取り込んだニードの泥人形は形を崩し、人の形をした泥の塊に成り下がっている。
ニードは泥人形を作れないわけでは無い。
ただ、自分の泥人形しか作れないので、まったく汎用性が無いのだ。
それで相当仲間からは落ちこぼれと馬鹿にされていた。が、今回それが幸いした。

泥人形が、人の形を作ろうともがくが、どろりと溶け落ちる。

「あはは!無駄だ、無駄だよ。観念するんだね。」

アデルが笑っていると、その泥は次第に赤く色を変え、大きく広がってアデルを飲み込むように包み込んだ。
だが、どうしても彼を侵食できない。
諦めて一旦逃げようと足を4本出し、奇妙な形でその場から一気に走ろうとした。

が、通路がぐにゃりと歪み、上か下かわからない状態で放り出される。
すると身体が見えないものに掴まれ、宙を浮いた。
バタバタもがいて泥ダンゴ状態で首のようなものを伸ばし、水晶がほんの少し顔を出す。
見るとアデルが、自分の方へとまた両手を差し出し掴むような仕草をしていた。

「あはは、美味しそうだろうけど、僕は食えないよ、残念ながら。
わかっているよ、ルークたちの選択は的確だ、お前は倒せないものだから。
だが、だからといって不死では無い。
元々生きてもいない怨念の塊だからね、お前を完全に消すのは火の巫子だけだ。
そうだろう?」

泥の首の先に、元々の精霊の顔ができる。
精霊はどろりと顔を溶かしてはまた形作り、声を出す為に口をパクパクと動かし続けた。

「……イ、イ、イ、……キ、……エ、ル……」

「そうだ、お前はこれ以上何を望む。
300年前、お前はリリサレーンを使ってアトラーナを滅ぼしかけたでは無いか。
お前は共に暮らしていたあの魔導師の敵(かたき)を討ちたかったのだろう?
お前の哀しみは良くわかる、だが、魔導師を殺した男はすでに死んだ。
これ以上何を望む。」

「……オ、オ、オ、ケ、……コ、ロ、……」

「王家を滅ぼすか………それは、お前の意思では無い。

お前はランドレールを毒し、そして、いつの間にか毒されていたのだ。
お前の本懐は魔導師を殺した男を、人間を殺したかっただけだ。
アトラーナ王家自体にこだわりは無かったはずであろう?

火の巫子が復活までしばし頭を冷やせ、お前はもう眠って良い。」

精霊の顔が悲鳴を上げるように大きく口を開けた。
その顔から、泥の矢が無数にアデルを襲う。
その瞬間、壁から飛び出してきた一本角の犬が矢を横から払う。
その犬は、あのリリスの道案内の犬から分離した犬だった。

「客だ、案内せよ。」

アデルの命に犬の形がうねって変化し、人の頭を越えるほどに大きくなり、壁から突き出た大蛇の頭になる。
そして大きく口を開き、水晶の入った泥の塊を一口で飲み込んだ。

「よし、回収完了だ。やれやれ。」

大蛇はするすると、壁の中に消えて行く。
やがて入れ替わるようにリリスを案内した一本角の犬が壁から現れ、アデルの横に座った。

「赤の巫子殿は……そうか、地下牢の近くにおいで頂いたか。
神官が同行しておいでだ。今は場所を確認されたら無事に出られるだろう。
さて、水晶を失ったランドレールが動くぞ。」

「イ、イ、タイ、イッショ、イタイ」

「ほう、そうだな、よかろう。
頃合いであろうな、監視も外した、好きに動くがよい。
お前はお前の大切な者を助け、そして力になるのだ。
さすれば良き方に事は動くだろう。行け。」

一本角の犬は、嬉しそうにアデルの周りをくるりと回って壁に消える。

「あーあ、服が穴だらけだよ。湯浴みして着替えなきゃ。」

アデルがボロボロの服をつまんで、クルリと回る。
次の瞬間、ザッと音を立てて灰のようなものが通路を駆け抜けてきた。

「ゴウカ殿か、これは!久しい姿よ。
おお、くれぐれも我の存在は無いことに。
なに、大したことはござらぬ。
そうそう、王子にご注意召されよと言っておこう。

火の巫子殿の御覚醒には、地の者すべてが祝福申し上げる。
さて、ご機嫌よろしゅう。」

アデルが一礼して、スッと消えた。
その場に一瞬留まった灰は、また本体へと消えて行く。
あとにはニードが照らした灯りが、仕事を終えて、すうっと次第に消えていった。
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