267 / 303
24、黒い悪霊からの逃亡
第265話 主従の誓い
しおりを挟む
パドルーがムチを振るい馬車を走らせる。
背後はガーラントが見張り、空をホムラが見張って安全に苦心した。
それでも相手が悪霊ならば、どこから襲ってくるのかがわからない。
相手の力も正体もわからず、不完全な巫子に火の神官たちが床に横たわるリリスに寄り添う。
龍人の姿のグレンが、警戒して姿を戻せずずっと顔の前垂れを押さえている。
顔色の悪いリリスに、ウロコに覆われた手で額を押さえると彼を見上げた。
「ああ、冷たくて、気持ちがいい……」
リリスが、聖布で口を押さえていた手をそっとグレンの手に重ねた。
ガタンと大きく馬車が揺れ、リリスの身体が大きくはねる。
ハッとその身体を受け止め、グレンが膝に抱いた。
「……私は……父が、ドラゴンなのです……」
「ドラゴン?ドラゴンって…精霊王じゃなくて、本物の?」
ブルースが彼の手を見て、顎をさする。
ミスリルでも色んな姿のものを見てきた。
もう何見ても驚かない気構えだが、さすがにドラゴンと聞いて驚いた。
「そうです。
小さな頃は、父母と地中の水晶窟で暮らしていました。
でも、母が病にかかり、ミスリルの村に預けられ父は行方知れずになっています。
千年を生きると言われているので、今もどこかで生きているのかも知れませんが、死んだ母に探すなと言われています。
私は……この姿を隠さねば、人の中で生きていくことは出来ません。
いっそ…山にでもこもればいいのでしょうが……」
うつむき、思い切ってその頭巾を取った。
暗いランプの明かりにその姿が浮かび上がる。
長い2本の角が耳の後ろから伸び、顔は青いウロコで覆われ、髪にはムチ状の長く先が平たいものが混じっている。
背には翼があり、背骨からは長いシッポが生えていた。
リリスが彼の膝の上で手を合わせて目を閉じる。
その仕草に驚いていると、まだ気分の優れないのだろう中で小さく首を振った。
「ああ…あなたは、人にとって財産なのです。
種族の垣根を越えて、結びつくことの出来る希望です。
だから、あなたはその姿を隠す必要はありません。
それに……
人を欺いても、いつかは人の目に留まることもあるでしょう。
あなたの姿は神々しい。
でも、姿をさらす前に、地盤を作らねばなりません。」
「地盤…を?」
「ええ、いきなり人の前に現れるのと、神殿の神事の中で現れるのとでは、人の受け止めはまったく変わります。
あなたにはきっと、生きやすい時が来る。私はそれを目指していま…す。
ウッ…… 」
吐き気がまた来て必死で飲み込む。
グレンが、長い爪の指を立てた。
「しばしお静かに。あたな様のお気持ちは、すべてわかりました。
我らが巫子よ、我ら火の神官は、あなた様にお仕え致します。」
「あ…ありが……と……うぷっ」
ダメだ、我慢できない。
猛烈に吐き気が上がってきた。
彼の手からズルズルと後ろの出口に這い出ようとすると、苦笑いのブルースが彼の身体を受け取って、後ろの戸を開け頭を出す。
と、同時に思い切りリリスが吐いた。
「おえっ、げえええぇぇ!」
背中をさすりながら、ブルースが苦笑する。
「あーあ、ひでえもんだ。せっかく感動の主従の誓いの最中だってのに。」
「だって、だって、おえっ、おええっ!
ずっと我慢してたんですってば~~~~おえっおえええ!! 」
未消化のものを吐いて、他はほとんどが胃液と時々取った水だ。
口の中が酸っぱくなって、馬車からぐったり顔を落とす。
「イネス様ぁぁ~~~、リリスは~ もうダメ……です…」
「は?なんでここで地の巫子様?」
ブルースがぐるりと暗闇を見回す。
リリスはえずきながら、空を指さした。
「うう、何か感じるのです。ああ、この汚れは、今の自分だけでは……おえええええ!!」
「やれやれ、これじゃ吐いたもので足がつきますぜ?」
ブルースが神官を振り返ると、ゴウカがニッコリ首を振る。
「大丈夫、巫子の後始末は我らの仕事。」
空から、ホムラが飛んできて、道なりに吐いた場所を向けて炎を吐いてくる。
「明日は雨が降りましょう。それで上々かと。地の巫子も今夜中には到着成されましょう。」
「はあ……そうですかい。」
もうなんと言われようと驚かないが、ブルースがホムラを指さして聞いてみた。
「彼は誰の子なのかな?貴殿はまさか、灰から生まれたとか?」
ゴウカが、急に前垂れを落とす。
そして、しいっと指を立てた。
「秘密です」
「なるほどね。」
神官たちは、ミステリアスに満ちている。
背後はガーラントが見張り、空をホムラが見張って安全に苦心した。
それでも相手が悪霊ならば、どこから襲ってくるのかがわからない。
相手の力も正体もわからず、不完全な巫子に火の神官たちが床に横たわるリリスに寄り添う。
龍人の姿のグレンが、警戒して姿を戻せずずっと顔の前垂れを押さえている。
顔色の悪いリリスに、ウロコに覆われた手で額を押さえると彼を見上げた。
「ああ、冷たくて、気持ちがいい……」
リリスが、聖布で口を押さえていた手をそっとグレンの手に重ねた。
ガタンと大きく馬車が揺れ、リリスの身体が大きくはねる。
ハッとその身体を受け止め、グレンが膝に抱いた。
「……私は……父が、ドラゴンなのです……」
「ドラゴン?ドラゴンって…精霊王じゃなくて、本物の?」
ブルースが彼の手を見て、顎をさする。
ミスリルでも色んな姿のものを見てきた。
もう何見ても驚かない気構えだが、さすがにドラゴンと聞いて驚いた。
「そうです。
小さな頃は、父母と地中の水晶窟で暮らしていました。
でも、母が病にかかり、ミスリルの村に預けられ父は行方知れずになっています。
千年を生きると言われているので、今もどこかで生きているのかも知れませんが、死んだ母に探すなと言われています。
私は……この姿を隠さねば、人の中で生きていくことは出来ません。
いっそ…山にでもこもればいいのでしょうが……」
うつむき、思い切ってその頭巾を取った。
暗いランプの明かりにその姿が浮かび上がる。
長い2本の角が耳の後ろから伸び、顔は青いウロコで覆われ、髪にはムチ状の長く先が平たいものが混じっている。
背には翼があり、背骨からは長いシッポが生えていた。
リリスが彼の膝の上で手を合わせて目を閉じる。
その仕草に驚いていると、まだ気分の優れないのだろう中で小さく首を振った。
「ああ…あなたは、人にとって財産なのです。
種族の垣根を越えて、結びつくことの出来る希望です。
だから、あなたはその姿を隠す必要はありません。
それに……
人を欺いても、いつかは人の目に留まることもあるでしょう。
あなたの姿は神々しい。
でも、姿をさらす前に、地盤を作らねばなりません。」
「地盤…を?」
「ええ、いきなり人の前に現れるのと、神殿の神事の中で現れるのとでは、人の受け止めはまったく変わります。
あなたにはきっと、生きやすい時が来る。私はそれを目指していま…す。
ウッ…… 」
吐き気がまた来て必死で飲み込む。
グレンが、長い爪の指を立てた。
「しばしお静かに。あたな様のお気持ちは、すべてわかりました。
我らが巫子よ、我ら火の神官は、あなた様にお仕え致します。」
「あ…ありが……と……うぷっ」
ダメだ、我慢できない。
猛烈に吐き気が上がってきた。
彼の手からズルズルと後ろの出口に這い出ようとすると、苦笑いのブルースが彼の身体を受け取って、後ろの戸を開け頭を出す。
と、同時に思い切りリリスが吐いた。
「おえっ、げえええぇぇ!」
背中をさすりながら、ブルースが苦笑する。
「あーあ、ひでえもんだ。せっかく感動の主従の誓いの最中だってのに。」
「だって、だって、おえっ、おええっ!
ずっと我慢してたんですってば~~~~おえっおえええ!! 」
未消化のものを吐いて、他はほとんどが胃液と時々取った水だ。
口の中が酸っぱくなって、馬車からぐったり顔を落とす。
「イネス様ぁぁ~~~、リリスは~ もうダメ……です…」
「は?なんでここで地の巫子様?」
ブルースがぐるりと暗闇を見回す。
リリスはえずきながら、空を指さした。
「うう、何か感じるのです。ああ、この汚れは、今の自分だけでは……おえええええ!!」
「やれやれ、これじゃ吐いたもので足がつきますぜ?」
ブルースが神官を振り返ると、ゴウカがニッコリ首を振る。
「大丈夫、巫子の後始末は我らの仕事。」
空から、ホムラが飛んできて、道なりに吐いた場所を向けて炎を吐いてくる。
「明日は雨が降りましょう。それで上々かと。地の巫子も今夜中には到着成されましょう。」
「はあ……そうですかい。」
もうなんと言われようと驚かないが、ブルースがホムラを指さして聞いてみた。
「彼は誰の子なのかな?貴殿はまさか、灰から生まれたとか?」
ゴウカが、急に前垂れを落とす。
そして、しいっと指を立てた。
「秘密です」
「なるほどね。」
神官たちは、ミステリアスに満ちている。
0
あなたにおすすめの小説
夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
冤罪で追放された令嬢〜周囲の人間達は追放した大国に激怒しました〜
影茸
恋愛
王国アレスターレが強国となった立役者とされる公爵令嬢マーセリア・ラスレリア。
けれどもマーセリアはその知名度を危険視され、国王に冤罪をかけられ王国から追放されることになってしまう。
そしてアレスターレを強国にするため、必死に動き回っていたマーセリアは休暇気分で抵抗せず王国を去る。
ーーー だが、マーセリアの追放を周囲の人間は許さなかった。
※一人称ですが、視点はころころ変わる予定です。視点が変わる時には題名にその人物の名前を書かせていただきます。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
〈完結〉姉と母の本当の思いを知った時、私達は父を捨てて旅に出ることを決めました。
江戸川ばた散歩
恋愛
「私」男爵令嬢ベリンダには三人のきょうだいがいる。だが母は年の離れた一番上の姉ローズにだけ冷たい。
幼いながらもそれに気付いていた私は、誕生日の晩、両親の言い争いを聞く。
しばらくして、ローズは誕生日によばれた菓子職人と駆け落ちしてしまう。
それから全寮制の学校に通うこともあり、家族はあまり集わなくなる。
母は離れで暮らす様になり、気鬱にもなる。
そしてローズが出ていった歳にベリンダがなった頃、突然ローズから手紙が来る。
そこにはベリンダがずっと持っていた疑問の答えがあった。
【完結】16わたしも愛人を作ります。
華蓮
恋愛
公爵令嬢のマリカは、皇太子であるアイランに冷たくされていた。側妃を持ち、子供も側妃と持つと、、
惨めで生きているのが疲れたマリカ。
第二王子のカイランがお見舞いに来てくれた、、、、
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる