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25、青の巫子の目覚め
第274話 人捜しの助け手
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「 ………ス…メイス……
あっ、マリナでした。マリナ、しっかりして下さい。」
遠くから、カナンの呼ぶ声が聞こえる。
気がつくと、カナンがマリナの手を握って何度も引っぱっていた。
ああ、戻ってきたんだ……
ゆっくりマリナが目を開ける。
そして、カナンを見るとふわりと微笑んだ。
「どこに行ってたんです?黄泉ですか?
ビックリするから急に行かないで下さい、私の心臓に悪いです。」
「フフ……ゴメンなさい。会ってきたんです。」
「誰に?」
「リリス。寝てたのでビックリしました。
彼はずっと戦っているんですね、とても疲れていました。」
カナンが驚いて首を振る。
「本当に、あなたは巫子様になってしまわれたんですね。
私などには遠い存在になりそうです。」
「とんでもない。
先代には巫子というのは、かしずかれてもいい気になるなと。
かしずく相手の心には、何かしらの要求が隠れている。
鍛錬怠ると、こいつはダメだと毒を盛られるぞと。
アハハ!非道いでしょう?」
カナンがクスクス笑って彼の髪を石けんで洗う。
このあと、ガルシアと夕げの食事をしながら今後について話をする予定だ。
本城への旅は、彼はグルクに乗ったことが無いので、一度乗ってみてダメなら馬車らしい。
「メイス……じゃなかった、マリナ、僕も、本城へはお供します。」
反対されるかと思ったら、マリナは静かに目を閉じる。
はて、聞いているのかいないのか。
お湯を流して髪をふいていると、湯汲みの湯男がまた新しい湯を持ってきた。
「お湯加減はいかがで?」
湯男の野太い声に、マリナがハッと目を開けた。
「ええ、ありがとうございます。
とても気持ちが良くて、気を抜くと心が飛んでしまいます。
レナントは変わらず美しいところですね。」
「え、ひどい、またここにいなかったんですか?」
「すいません、どうも心がまだ身体に馴染まなくて。
これは危なくてグルクには乗れませんね。」
「まったくです。騎士様が守りに付いて下さるそうですが、しっかりして頂かないと。
ミスリルの方が一人でもいらっしゃればいいのですが。」
「あはは!そんな、たいそうな」
笑い合って湯を楽しみ、身支度を済ませる。
神殿は無いが、レナント領主であるガルシアが後ろ盾になってくれる。そのことはマリナには心強かった。
ルラン本城の城下の町並みで、壮年の騎士が一人、人を訪ねて歩いている。
騎士とわかるのは、彼の身なりも良く、立派な剣が腰にあるからだ。
たいそう身分の高い騎士なのか、あつらえも美しい鞘だが、剣自体はかなり使い込んでいるらしく柄の装飾はなめしたように凹凸がすり減っていた。
彼は尋ね人の年格好を一人一人に懸命に説明し、残念そうに首を振る町人に軽く会釈して次を探す。
やがて絶望感に立ち止まり、目頭を押さえる。
どこをどう探していいのかわからない。
親族の所まで早馬を走らせ、帰っているか訪ねたが、いまだ帰っていないという。
歩いても、とうに実家へ帰っていい時期だ。
見目の良い少年だ。
働くなら城下と思ったが、どこの店にもいない。
まさか金も持たず夜に花売りでもしているのでは、人買いに連れ去られたのではと、恐ろしい考えも浮かんだが、見た者はいなかった。
「困っていなさるかい?」
路上の敷物に座る占い婆に声をかけられ、足を止めた。
「人を探しているのだ、だが、もう5日探しているのに何の手がかりも無い。」
「ならばわしの出番じゃ、占ってあげよう」
ガックリと、占い婆の前に騎士が膝を付く。
たまらず弱気になって、片手で顔を覆う。
もう、誰に見られても構わない。
今はなりふり構ってもいられなかった。
「髪の……一筋さえも手がかりが無い。
頼む、俺はあの子にわびねばならぬ。
大切にしていたつもりだったが、こんな……ことになろうとは……」
「優しき男よ。どんな大男でも、守れぬ時はある。
悔いを残すほどならば、これから守れば良い。」
騎士は、大きくため息をついて、小銭入れからその時持っている中でも一番高価な銀貨を取って一つ置く。金貨も持っているが、それは見つかったときの礼にしようと思った。
占い婆は、嬉しそうにそれを指に取りくるくると回した。
「汝、銀貨を取ったは良き行いじゃ。
精霊は金物を嫌うが金銀は好む。
ただし銀は素直に喜ぶが、金は争いを生む。
気に入ったぞ、道を示してやろう。」
すっと、町外れを指で指す。
「あの方向にある小川の水面に、砂金をひとつまみ落としてみよ。
小川に映る者が探し人なれば、それは小川に住まう水の精が預かる者。」
「なにっ!?本当か?まさか、水に落ちたのか?
生きているのか?無事なのか?」
「生きているが、無事とは言いがたい。
彼の者は魔物に魅入られ、毒を吐く。
身体を無頼者に汚され、心が死している。」
「死?!死だと?!心?が?」
「水の精には身体を癒やすことは出来るが、心を癒やすことは出来ぬ。毒は放って置けば水を濁す。
人間よ、巫子を連れて行くがいい。」
「でっ!でも、水の神殿は遠くて……」
「良い、この地に赤と白の巫子がいる。
汝なれば、それを探すは容易であろう。さあ、急げ。
彼の者を救うはこの地の者を救うということ。
あとは汝に任せる。探し人と汝に祝福あれ。」
婆様が、手をついて身を乗り出す騎士の手に手を重ね、彼のりりしい顔に大きくうなずく。
そして、その身体が次第に透けて行くと、バシャリと水になって消えた。
あっ、マリナでした。マリナ、しっかりして下さい。」
遠くから、カナンの呼ぶ声が聞こえる。
気がつくと、カナンがマリナの手を握って何度も引っぱっていた。
ああ、戻ってきたんだ……
ゆっくりマリナが目を開ける。
そして、カナンを見るとふわりと微笑んだ。
「どこに行ってたんです?黄泉ですか?
ビックリするから急に行かないで下さい、私の心臓に悪いです。」
「フフ……ゴメンなさい。会ってきたんです。」
「誰に?」
「リリス。寝てたのでビックリしました。
彼はずっと戦っているんですね、とても疲れていました。」
カナンが驚いて首を振る。
「本当に、あなたは巫子様になってしまわれたんですね。
私などには遠い存在になりそうです。」
「とんでもない。
先代には巫子というのは、かしずかれてもいい気になるなと。
かしずく相手の心には、何かしらの要求が隠れている。
鍛錬怠ると、こいつはダメだと毒を盛られるぞと。
アハハ!非道いでしょう?」
カナンがクスクス笑って彼の髪を石けんで洗う。
このあと、ガルシアと夕げの食事をしながら今後について話をする予定だ。
本城への旅は、彼はグルクに乗ったことが無いので、一度乗ってみてダメなら馬車らしい。
「メイス……じゃなかった、マリナ、僕も、本城へはお供します。」
反対されるかと思ったら、マリナは静かに目を閉じる。
はて、聞いているのかいないのか。
お湯を流して髪をふいていると、湯汲みの湯男がまた新しい湯を持ってきた。
「お湯加減はいかがで?」
湯男の野太い声に、マリナがハッと目を開けた。
「ええ、ありがとうございます。
とても気持ちが良くて、気を抜くと心が飛んでしまいます。
レナントは変わらず美しいところですね。」
「え、ひどい、またここにいなかったんですか?」
「すいません、どうも心がまだ身体に馴染まなくて。
これは危なくてグルクには乗れませんね。」
「まったくです。騎士様が守りに付いて下さるそうですが、しっかりして頂かないと。
ミスリルの方が一人でもいらっしゃればいいのですが。」
「あはは!そんな、たいそうな」
笑い合って湯を楽しみ、身支度を済ませる。
神殿は無いが、レナント領主であるガルシアが後ろ盾になってくれる。そのことはマリナには心強かった。
ルラン本城の城下の町並みで、壮年の騎士が一人、人を訪ねて歩いている。
騎士とわかるのは、彼の身なりも良く、立派な剣が腰にあるからだ。
たいそう身分の高い騎士なのか、あつらえも美しい鞘だが、剣自体はかなり使い込んでいるらしく柄の装飾はなめしたように凹凸がすり減っていた。
彼は尋ね人の年格好を一人一人に懸命に説明し、残念そうに首を振る町人に軽く会釈して次を探す。
やがて絶望感に立ち止まり、目頭を押さえる。
どこをどう探していいのかわからない。
親族の所まで早馬を走らせ、帰っているか訪ねたが、いまだ帰っていないという。
歩いても、とうに実家へ帰っていい時期だ。
見目の良い少年だ。
働くなら城下と思ったが、どこの店にもいない。
まさか金も持たず夜に花売りでもしているのでは、人買いに連れ去られたのではと、恐ろしい考えも浮かんだが、見た者はいなかった。
「困っていなさるかい?」
路上の敷物に座る占い婆に声をかけられ、足を止めた。
「人を探しているのだ、だが、もう5日探しているのに何の手がかりも無い。」
「ならばわしの出番じゃ、占ってあげよう」
ガックリと、占い婆の前に騎士が膝を付く。
たまらず弱気になって、片手で顔を覆う。
もう、誰に見られても構わない。
今はなりふり構ってもいられなかった。
「髪の……一筋さえも手がかりが無い。
頼む、俺はあの子にわびねばならぬ。
大切にしていたつもりだったが、こんな……ことになろうとは……」
「優しき男よ。どんな大男でも、守れぬ時はある。
悔いを残すほどならば、これから守れば良い。」
騎士は、大きくため息をついて、小銭入れからその時持っている中でも一番高価な銀貨を取って一つ置く。金貨も持っているが、それは見つかったときの礼にしようと思った。
占い婆は、嬉しそうにそれを指に取りくるくると回した。
「汝、銀貨を取ったは良き行いじゃ。
精霊は金物を嫌うが金銀は好む。
ただし銀は素直に喜ぶが、金は争いを生む。
気に入ったぞ、道を示してやろう。」
すっと、町外れを指で指す。
「あの方向にある小川の水面に、砂金をひとつまみ落としてみよ。
小川に映る者が探し人なれば、それは小川に住まう水の精が預かる者。」
「なにっ!?本当か?まさか、水に落ちたのか?
生きているのか?無事なのか?」
「生きているが、無事とは言いがたい。
彼の者は魔物に魅入られ、毒を吐く。
身体を無頼者に汚され、心が死している。」
「死?!死だと?!心?が?」
「水の精には身体を癒やすことは出来るが、心を癒やすことは出来ぬ。毒は放って置けば水を濁す。
人間よ、巫子を連れて行くがいい。」
「でっ!でも、水の神殿は遠くて……」
「良い、この地に赤と白の巫子がいる。
汝なれば、それを探すは容易であろう。さあ、急げ。
彼の者を救うはこの地の者を救うということ。
あとは汝に任せる。探し人と汝に祝福あれ。」
婆様が、手をついて身を乗り出す騎士の手に手を重ね、彼のりりしい顔に大きくうなずく。
そして、その身体が次第に透けて行くと、バシャリと水になって消えた。
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