赤い髪のリリス 戦いの風

LLX

文字の大きさ
287 / 303
25、青の巫子の目覚め

第285話 性的な難題

しおりを挟む
セリアスと少年の関係を口ごもるミリアムに、リリスが助け船を出す。

「イネス様、私の父ザレル様も私と特に血縁ではございませんでしたし、そう言う事もあるのかと。」

「リリ、人を救う時、それに精霊が関わるときは、人の気持ちが肝心なんだ。
精霊は特に、愛情を大切にする。親子の愛、師弟愛、男女の愛、愛であればその関係を美しいと見る。そしてそれを見抜く力がある。
だから、救おうとする者との関係を知ることは大切なんだ。」

イネスの言葉に、ミリアムがハッとして思い浮かべる。
確かに、小川の精霊は何と言った?
必死で訴えるセリアスを、『心ノ清キ者』と言わなかったか?
あれは精霊が、セリアスが、どれほどあの子を愛しく思っているかを知ったからに違いない。

「大変、大変、申し上げにくく、実は…… 」

脂汗のにじむミリアムに、ミランがフッと息を漏らし切り出した。

「セリアスは、その少年と関係を持ってしまったのです。
少年の家が金に困っていたので支援したのですが、それがきっかけで深い関係になってしまった。
彼はひどく後悔していました。元々彼は少年を養子にと考えていたのに。
それを一時の感情で台無しにしてしまったと。」

「ふううん………、 それで合点がいった。」

イネスが、椅子の上であぐらをかいた。
騎士たちは、やっちまったかと首を振る。
パドルーが、何度もうなずいてサラリと言った。

「ま、良くあることですわね。
特に男性は、女性はともかく中性的な物までは射程範囲ですもの。
小姓は王子の愛人役までこなすのが常ですわ。
なのに、他の男に身体を開いてしまっては、それは首になっても仕方ないですわね。」

「ぇ?! は? 」

サラリと言うパドルーに、ミリアムが驚愕する。
コソコソしていた自分は一体何だったのか、こう言うことは女性の方が大胆だ。

「関係…… 射程範囲…… 深い、関係、あい… じん…………

か、か、身体を開くとは一体……… 」

リリスが呆然と置いてきぼりを食う。
ただ、どこか何か、表(おもて)で語れそうに無いことはわかる。

「赤様がお困りでいらっしゃる。」

グレンとゴウカが、どうしたものかと泡を食って騎士たちを見る。
性的な物は、彼らも言葉に詰まる。

「ガーラントよ、お前が説明しろ。」

ドンとブルースが小突く。
しかし、どう説明していい物か、ガーラントも呆然と天を仰ぐ。
もしかしたら、ザレルは彼に手を出したかもなんて、下劣な考えが無かったとは言えない。
自分の心はなんて汚れているんだろうと、嫌になる。

リリスの側近達が答えに窮しているのを見て、イネスがリリスに言った。

「リリ、世には男女だけでは無く、同性で愛する者もいる。
そう言うことだ。愛情に性は関係無い。ただし、大きな年齢差は問題がある。
特に、相手が子供の場合は心が未成熟だ。
親の愛情と思って慕っていたら、ある日突然、性の対照にされてしまう。
違っていた時の裏切られた反動は大きい。
神殿を建てると、そう言う子供が保護を求めてくることもある。
子供は深くを語れない。傷ついた心と体を抱えたまま、小さく殻に包まれて心を開かない事が多い。
神殿を持つと言うことは、つらいこともあるのだ。

相談の彼らは年齢差はほどほどあるが、恐らく少年が金を都合してもらった礼をしたつもりだったのだろう。
小姓ならば、性の手ほどきはされていたはずだ。
小姓に選ばれる子ならば、見目も良いのだろうさ。
男は子にしようと思っていたんだろうが、そうとは知らぬ少年に迫られてクラッと来たんだろうな。
しかし、相手が小姓ならば、それは王子の所有物とも言える。
間違いを正さねばならないのは男の方だ。それがわかっているからこそ、責任を感じたのだろう。」

「イネス様は、そう言うことをご存じなのですか? 」

「言っただろう? 
神殿と言うのは美しく聖なる場所でもあり、重く悲しい者を受け止める所でもある。
だが、そう言う彼らを明るい方に導いて、送り出す場所でもある。
その為には、人の暗い面を知るのも必要だ。

リリも、旅の途中で人買いにさらわれそうになったと何度か言っただろう?
さらわれていたら、どうなったかなど、先は想像できぬだろう。
でも、さらわれた先を知らねばならない時も来るのだ。どんな悲惨なことでも。
巫子になるという事は、その覚悟が必要なのだ。」


はあぁぁぁ……… 

リリスが大きく息を吐いた。
世には知らないことが多すぎる。
リリスもまだ、子供がどうやってできるか、どこから生まれるのかも知らない。

「わかりました。性という物については、あとで詳しく皆様にお聞きします。」

「「 えっ! 」」

騎士と神官達が、逃げたい気分で身を引いた。
イネスがクスリと笑い、立ち上がりリリスに手を伸ばす。

「では、火の巫子殿。その小川とやらに、おもむこうではないか。」

リリスが笑って、その手をギュッと握った。

「はい! 地の巫子イネス様! 」

少年の巫子が2人、明るい顔で共に立ち上がる。
ミリアムはその様子に、願うように手を合わせた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた

今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。 レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。 不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。 レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。 それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し…… ※短め

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

冤罪で追放された令嬢〜周囲の人間達は追放した大国に激怒しました〜

影茸
恋愛
王国アレスターレが強国となった立役者とされる公爵令嬢マーセリア・ラスレリア。 けれどもマーセリアはその知名度を危険視され、国王に冤罪をかけられ王国から追放されることになってしまう。 そしてアレスターレを強国にするため、必死に動き回っていたマーセリアは休暇気分で抵抗せず王国を去る。 ーーー だが、マーセリアの追放を周囲の人間は許さなかった。 ※一人称ですが、視点はころころ変わる予定です。視点が変わる時には題名にその人物の名前を書かせていただきます。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

〈完結〉姉と母の本当の思いを知った時、私達は父を捨てて旅に出ることを決めました。

江戸川ばた散歩
恋愛
「私」男爵令嬢ベリンダには三人のきょうだいがいる。だが母は年の離れた一番上の姉ローズにだけ冷たい。 幼いながらもそれに気付いていた私は、誕生日の晩、両親の言い争いを聞く。 しばらくして、ローズは誕生日によばれた菓子職人と駆け落ちしてしまう。 それから全寮制の学校に通うこともあり、家族はあまり集わなくなる。 母は離れで暮らす様になり、気鬱にもなる。 そしてローズが出ていった歳にベリンダがなった頃、突然ローズから手紙が来る。 そこにはベリンダがずっと持っていた疑問の答えがあった。

【完結】16わたしも愛人を作ります。

華蓮
恋愛
公爵令嬢のマリカは、皇太子であるアイランに冷たくされていた。側妃を持ち、子供も側妃と持つと、、 惨めで生きているのが疲れたマリカ。 第二王子のカイランがお見舞いに来てくれた、、、、

処理中です...