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27、黒い鹿との戦い
第301話 巫子3人
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陣に皆が入り、ヨシと声を上げてイルファが精神を集中する。
彼女の周りの水の流れが沸き立つように変わり、ドレスがふわりと美しい魚のヒレのように舞い上がる。
彼女の身体が浮き上がり、ほのかに泡をまとって輝いた。
パーーーーンッ!!
イルファが力強く、顔の前で手を合わせる。
「 蕩々と、禱と尊き水に申す!
汝、命と等しく尊き水よ。
清き水あるところに命あり、命あるところに清き水あり。
我が母シールーンの清き良き手に育まれ、ここに汝が子、巫子が願う物なり。
水の濁りを断ち断たれ、御使いがここに権限せしは汝が御手の中にあり。
人が世と、水の世の狭間に時よ来たれ!」
彼女がクルリと舞って、上から手を振り下ろす。
何枚も布を合わせた水糸の神衣と言うドレスは、彼女が動くたびに泡をまき、まるで金魚のヒレのようにひらひらと揺れ動く。
大きく腕を回し、水を静かに回すように舞うとゆっくりと左右に踊る。
それはまるで、イネスが見せた剣舞のようで美しい。
イネスの剣舞はしなやかで力強い、だが、イルファの踊りはまるで沢山のヒレを持つ魚が、水中で踊っているように華やかだった。
シャンシャン! シャンシャン!
イルファは鈴を持っていないのに、どこからか鈴の音が響く。
「時鳴らしの鈴よ鳴れ!人が世と、水の世の狭間に時の御使いよ来たれ!
狭間(の時よ、我が手に宿れ!」
水糸の神衣が彼女に合わせてひらひらと水の中で舞い上がって、泡が次第に輝きを放ち、そして一同はまぶしさに目を覆った。
「さあ、ここからよ!」
イルファの声に気がつくと、何も無い薄暗い空間に皆は立っていた。
地面は見えず、だが自分たちはなにかの上に立っている。
地面はあるという概念が、足の下に何かを感じさせているのだろうか。
上を見ると遠くに水面が見えて、その向こうに夜空が見える。
下を見ると、遙か下に先ほどまでいた砂地に木や海藻が生えた水の精霊の国が広がっていた。
「ここが狭間?」
「そうね、あたしが無理矢理作った空間といった方が正解だわ。
時の御使い紡ぎ出して、時を与えてここに世界を作ったの。
地面は見えないけど、ここにいる皆が地面はあると思っているから地面を感じるのだわ。
心をしっかり持って、この地面って不安定になるの。」
「地面を忘れたら?」
「そうね、みんな空飛んじゃうわね。その時は私が水面で床の概念作るわ」
世界を作ったとは、驚くべき力だが今はそれどころじゃ無い。
カレンがここに来て、もう耐えられない様子で寝台で身を上げた。
「うううぅぅぅぅ………ぐうううううううぅぅぅぅぅ
ガァァアッ!!」
カレンの身体が服を破って大きく盛り上がり、うねる黒髪が全身に巻き付き、背を覆う密集したヘビのようなたてがみへと変わる。
全身が次第にざわめく毛のようなものに覆われ、カレンの意識が途切れたのかドサリとその場に倒れた。
「カレン!」
「セリアス殿、お下がり下さいませ!彼と呪いが交代するのですわ。
表に出るのは呪いの姿、そうで無くては払えませんの。」
膨張したカレンの姿は形を変えて、大きく丸くなると黒い苔のかたまりから無数のヘビが生えたような、奇妙な形に変貌する。
モヤモヤとうごめき、ヘビたちが大きく口を開け、黒いもやを吐き始めた。
「これはいけませんね。私の中の種火で燃えるでしょうか?」
リリスがつぶやき、パンッと両手を合わせる。
「火よ、来たれ。天と水の狭間に火の巫子あり。」
両手で作った印の隙間に息を吹きかけると、手の中にボッと火が付く。
「汝、汚れし者よ、火の祝福を。
フレアゴートが告げる、御身、火によって清めたまえ!」
バッと手を黒い苔玉に向けると、リリスの前に火球が作り出され、そこからボウと火が噴き出す。
ゴウカが横からタイミングを合わせて右手を振り上げ、そこに灰をまく。
すると、その火が大きく渦巻き、黒い苔玉の1/3を焼いた。
キャアアアアア……
なにか、言いようのない悲鳴が耳に響く。
苔玉はうごめいて形を崩し、そして一回り小さくなってまた丸くなると、中から無数のヘビがうじゃうじゃと顔を出した。
「…この、声……気持ち悪いですね」
「あら、リリ、やれるじゃない?
火の巫子の祝詞って初めて聞くわ。地のと似てるけど、あなたの言葉が主様の言葉になるのね?」
見直した様子で、イルファがリリスを見る。
リリスは手にある火の熱さを感じないのか、頬に手をやり考えはじめた。
「ええ、それはあとで。
今の私の力では、ゴウカ様のサポートがあっても、あれが精一杯です。
思っていた以上に膨れ上がっていますね。すこし小さく出来ましたけど。
ただ、これは一体どう言う状態でしょうか?
悪霊と違って強い怨念の残渣を感じません。これは一体… 何なのでしょうか?
一体先ほどの声は……、どなたかわかる方は?」
苔玉のヘビが、ブルブルと震えると、ウニのようにそれがトゲに変わった。
ゆっくりと動き出し、スピードを上げてイネスに向かう。
単調な動きは、避けやすい。
ピョンと飛び退き、イネスがシュッと手刀を苔玉に振るう。
苔玉は真ん中から中途までスパンと切られ、だがすぐに切られた場所は繋がって今度はイルファに向かって転がった。
「うーん、なんだろうな、切っても手応えが無い。
ほんとに表面上は無だな。
だから取り憑かれた人も何年も無事だったのかもしれない。」
「でも、じゃあ、この攻撃はなに? 悪意は感じないわ、でも、感じるのは、そうね、なにか戸惑い?哀しみの残渣かしら?とても純粋な…… 」
「悪意を感じない、純粋な、何だろう? 心を探れれば…… 」
「心に入り込む事は出来るけど、相手がこれでは危険すぎるわ。」
巫子3人は、慌てる風も無くじっくり分析する。
ふと、リリスがゴウカに問うた。
「マリナは、マリナにはわからないでしょうか?
彼は私よりも修行を積んでいます。
これの正体を調べるのはとても大事なことだと思います。
あの悪霊が何者かを確定することが出来れば……… 」
「しかしそれは危険なことでございます。マリナ様のお力がどれほどの物かを存じません」
「そうですね、心話で聞けるでしょうか?少しお時間下さい。マリナを呼んでみます。
ゴウカ様、その間この身体お預けします」
「は、お任せを」
リリスがゴウカの後ろに引いた。
目を閉じ、手を合わせて心で呼びかける。
マリナ… マリナ… 来て、僕の、私の心に来て…… マリナ
呼びかけに、マリナが顔を上げる。
しかしその光景の向こうには、酷く焦る馬上の人々の姿が、リリスにはぼんやりと浮かんで見えた。
彼女の周りの水の流れが沸き立つように変わり、ドレスがふわりと美しい魚のヒレのように舞い上がる。
彼女の身体が浮き上がり、ほのかに泡をまとって輝いた。
パーーーーンッ!!
イルファが力強く、顔の前で手を合わせる。
「 蕩々と、禱と尊き水に申す!
汝、命と等しく尊き水よ。
清き水あるところに命あり、命あるところに清き水あり。
我が母シールーンの清き良き手に育まれ、ここに汝が子、巫子が願う物なり。
水の濁りを断ち断たれ、御使いがここに権限せしは汝が御手の中にあり。
人が世と、水の世の狭間に時よ来たれ!」
彼女がクルリと舞って、上から手を振り下ろす。
何枚も布を合わせた水糸の神衣と言うドレスは、彼女が動くたびに泡をまき、まるで金魚のヒレのようにひらひらと揺れ動く。
大きく腕を回し、水を静かに回すように舞うとゆっくりと左右に踊る。
それはまるで、イネスが見せた剣舞のようで美しい。
イネスの剣舞はしなやかで力強い、だが、イルファの踊りはまるで沢山のヒレを持つ魚が、水中で踊っているように華やかだった。
シャンシャン! シャンシャン!
イルファは鈴を持っていないのに、どこからか鈴の音が響く。
「時鳴らしの鈴よ鳴れ!人が世と、水の世の狭間に時の御使いよ来たれ!
狭間(の時よ、我が手に宿れ!」
水糸の神衣が彼女に合わせてひらひらと水の中で舞い上がって、泡が次第に輝きを放ち、そして一同はまぶしさに目を覆った。
「さあ、ここからよ!」
イルファの声に気がつくと、何も無い薄暗い空間に皆は立っていた。
地面は見えず、だが自分たちはなにかの上に立っている。
地面はあるという概念が、足の下に何かを感じさせているのだろうか。
上を見ると遠くに水面が見えて、その向こうに夜空が見える。
下を見ると、遙か下に先ほどまでいた砂地に木や海藻が生えた水の精霊の国が広がっていた。
「ここが狭間?」
「そうね、あたしが無理矢理作った空間といった方が正解だわ。
時の御使い紡ぎ出して、時を与えてここに世界を作ったの。
地面は見えないけど、ここにいる皆が地面はあると思っているから地面を感じるのだわ。
心をしっかり持って、この地面って不安定になるの。」
「地面を忘れたら?」
「そうね、みんな空飛んじゃうわね。その時は私が水面で床の概念作るわ」
世界を作ったとは、驚くべき力だが今はそれどころじゃ無い。
カレンがここに来て、もう耐えられない様子で寝台で身を上げた。
「うううぅぅぅぅ………ぐうううううううぅぅぅぅぅ
ガァァアッ!!」
カレンの身体が服を破って大きく盛り上がり、うねる黒髪が全身に巻き付き、背を覆う密集したヘビのようなたてがみへと変わる。
全身が次第にざわめく毛のようなものに覆われ、カレンの意識が途切れたのかドサリとその場に倒れた。
「カレン!」
「セリアス殿、お下がり下さいませ!彼と呪いが交代するのですわ。
表に出るのは呪いの姿、そうで無くては払えませんの。」
膨張したカレンの姿は形を変えて、大きく丸くなると黒い苔のかたまりから無数のヘビが生えたような、奇妙な形に変貌する。
モヤモヤとうごめき、ヘビたちが大きく口を開け、黒いもやを吐き始めた。
「これはいけませんね。私の中の種火で燃えるでしょうか?」
リリスがつぶやき、パンッと両手を合わせる。
「火よ、来たれ。天と水の狭間に火の巫子あり。」
両手で作った印の隙間に息を吹きかけると、手の中にボッと火が付く。
「汝、汚れし者よ、火の祝福を。
フレアゴートが告げる、御身、火によって清めたまえ!」
バッと手を黒い苔玉に向けると、リリスの前に火球が作り出され、そこからボウと火が噴き出す。
ゴウカが横からタイミングを合わせて右手を振り上げ、そこに灰をまく。
すると、その火が大きく渦巻き、黒い苔玉の1/3を焼いた。
キャアアアアア……
なにか、言いようのない悲鳴が耳に響く。
苔玉はうごめいて形を崩し、そして一回り小さくなってまた丸くなると、中から無数のヘビがうじゃうじゃと顔を出した。
「…この、声……気持ち悪いですね」
「あら、リリ、やれるじゃない?
火の巫子の祝詞って初めて聞くわ。地のと似てるけど、あなたの言葉が主様の言葉になるのね?」
見直した様子で、イルファがリリスを見る。
リリスは手にある火の熱さを感じないのか、頬に手をやり考えはじめた。
「ええ、それはあとで。
今の私の力では、ゴウカ様のサポートがあっても、あれが精一杯です。
思っていた以上に膨れ上がっていますね。すこし小さく出来ましたけど。
ただ、これは一体どう言う状態でしょうか?
悪霊と違って強い怨念の残渣を感じません。これは一体… 何なのでしょうか?
一体先ほどの声は……、どなたかわかる方は?」
苔玉のヘビが、ブルブルと震えると、ウニのようにそれがトゲに変わった。
ゆっくりと動き出し、スピードを上げてイネスに向かう。
単調な動きは、避けやすい。
ピョンと飛び退き、イネスがシュッと手刀を苔玉に振るう。
苔玉は真ん中から中途までスパンと切られ、だがすぐに切られた場所は繋がって今度はイルファに向かって転がった。
「うーん、なんだろうな、切っても手応えが無い。
ほんとに表面上は無だな。
だから取り憑かれた人も何年も無事だったのかもしれない。」
「でも、じゃあ、この攻撃はなに? 悪意は感じないわ、でも、感じるのは、そうね、なにか戸惑い?哀しみの残渣かしら?とても純粋な…… 」
「悪意を感じない、純粋な、何だろう? 心を探れれば…… 」
「心に入り込む事は出来るけど、相手がこれでは危険すぎるわ。」
巫子3人は、慌てる風も無くじっくり分析する。
ふと、リリスがゴウカに問うた。
「マリナは、マリナにはわからないでしょうか?
彼は私よりも修行を積んでいます。
これの正体を調べるのはとても大事なことだと思います。
あの悪霊が何者かを確定することが出来れば……… 」
「しかしそれは危険なことでございます。マリナ様のお力がどれほどの物かを存じません」
「そうですね、心話で聞けるでしょうか?少しお時間下さい。マリナを呼んでみます。
ゴウカ様、その間この身体お預けします」
「は、お任せを」
リリスがゴウカの後ろに引いた。
目を閉じ、手を合わせて心で呼びかける。
マリナ… マリナ… 来て、僕の、私の心に来て…… マリナ
呼びかけに、マリナが顔を上げる。
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