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3、国境の町レナントへ
23、空の死闘
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一帯を黒い空間が大きく口を開け、それはリリスにも手を伸ばす。
「黒き門よ閉じよ。その門は生ける者が踏みいるべからず、迷える人々は光の充ち満ちた世界に生きる者なり。
風を統べるセフィーリアの名の下に、その黒き門の存在を否定する。
黒き言葉よ無に帰せ!」
リリスが呪を込め、指を組み大きく振り下ろす。
それは子供の力とは思えない、この空間を清浄化する、遙かに大きく覆い尽くすような力。
「ナニッ!」
驚く赤目の前で、黒くうごめく物はごっそりと容積を減らし、3分の1が消滅して飲み込んだ人の半数を吐き出した。
「ナ、ナント言ウ事ヲ……」
我が子のように愛でていた闇の塊が大きく力を弱め、もがくように形を崩す。
「オノレ……ユルサヌ!」
赤目が初めて受けたその攻撃の大きさに、カッと我を忘れ呪いの呪を吐いた。
「ソノ呪ワレタ髪ニ巣クウ大イナルへびヨ、闇ヲマトイ赤イ髪ノ魔導師ヲ内ヨリ食ラウガ良イ!」
「 なに? 痛っ!」
リリスの髪を束ねるヒモが、突如青いヘビに姿を変え、服ごと背中の皮膚を食い破ってズルズルとリリスの身体の中へと消えた。
「ひいっ!ひっ!い、い、いや!ぎゃっ、ぎゃああっ!!
ひいぃっ!痛い!痛い!痛いっ!」
背中の皮膚の下を、筋肉の間を噛み裂きながらズルズルヘビが這って行く。
その激しい痛みとゾッとする感触に、リリスの身体が凍り付く。
その隙を赤目が逃さなかった。
「コノガキ、死ネ!」
赤目が近くの木の頂点に立ち、リリスに向けて杖を振る。
杖からは黒い光が走り、避ける余裕の無いリリスの左肩をかすった。
「ギャッ!」
肉が焼けるような音を立て、黒い光のかすった部分が焼けて炭のように黒く変色する。
「ひ!ぎゃああ!!ぐっ、あっ、あっ、んいいいぃい、痛い!!ひいっ!」
ブスブスと肉が焼け落ち、気が遠くなるほどの激しい痛みが襲ってくる。
そこへもう一人の魔導師が突然空間に姿を現し、ニヤリと笑って杖を振り降ろした。
「落ちろ!すみやかに死ね!」
「ぐっ!」
リリスの身体をドスンと大きな衝撃が襲い、
抗うこともできないまま地に落ちて行く。
バーン!ガシャンッ!
「うっ、ごふっ……」
そこは丁度馬車の上、崩れた幌が少しはクッションになった物のリリスが目を見開き、血を吐いて大きく痙攣した。
「リリス!しっかりして!ピピ……」
「ヨー……様……に、にげ……」
痛い!
痛い!痛い!痛い!
恐い!恐い!
母上!母上!
ザレル!父上!
助けて!
助けてえ!!
「母……さ……たす……て……」
太刀打ちできない異質の力、身体中をはい回り内から食いつくさんとするヘビの存在、リリスは痛みと恐怖で身体中がパニックを起こし、ガタガタと痙攣してとうとう気を失った。
「ピピ……リリス、リリス……」
ヨーコ鳥がリリスの頰をつつく。
肩の傷はひどい状態で、どんどん黒く侵食して左腕がちぎれて落ちそうだ。
傷口から血があふれ、あの日の夜が思い出されてヨーコも恐怖で羽根が膨れた。
「ひどい、どうすればいいの?
ね、ねえ、リリス、死んじゃった……の?リリス、リリス!」
ビュオオオォォ……
オオオオオオオオオオ…………
嘆くように風が鳴りながら強く吹き、リリスの前にそれが白く渦巻いてゆく。
「きゃあ!な、なに?」
ヨーコがリリスにしがみつき、渦巻く風の中ゆらゆらと形をなんとか成している、セフィーリアの姿を見た。
「あれは……リリスのお母さん!」
それは、セフィーリアの本体ではないのだろう。
白髪は風に薄れ、美しい顔はゆらゆら揺れてはっきりしない。
リリスを心配そうに優しく手を伸ばし、そのまとう風に赤い髪がフワリと広がる。
しかしふと、その手がぴたりと止まった。
リリスのその髪がしだいに赤く輝きを増し、まぶたがぴくりと動く。
「リリス……」
身体までもがまぶしいほどに赤く輝き、ゆっくりとまぶたが開いて行く。
その開いた目は、色違いではなく両目とも赤く燃えていた。
「リリス!その目!あっ、キャア!ピルル」
輝く髪から全身が一瞬燃え上がり、肩の傷の黒く侵食した部分の色が消え、肉が徐々に盛り上がっていく。
「燃えた、燃えちゃった、どうなってるのよう!」
呆然と見守るヨーコとセフィーリアの前に、ゆるりとリリスが半身を起こす。
傷口から黒こげのヘビが転げ落ち、それがボロボロの元の粗末なヒモに変わる
いつもの快活な少年の顔は一変して、雰囲気が女性を思わせ息を飲むほどに美しい。
うっとりと妖艶な顔に、ヨーコが思わず問う。
「あなたは……誰?」
リリスは回りを飛ぶ鳥をいちべつして、ヨーコに答えた。
『我が名は、リリサレーン』
ハッと息を飲み、セフィーリアの姿が乱れてかき消える。
「リリスのお母さん!あっ!」
「このガキまだ生きていたか!」
また空間のスキマから、顔無しが目前に突然顔を出した。
「破壊!破壊!破壊せよ!」
「きゃっ!」
ヨーコがリリスの背後に隠れると、男の力がリリスの前で四散する。
そしてリリスが、全身を赤く輝かせて一気に上空へと飛んだ。
「ナント、マダ生キテイルトハ!」
赤目がまた杖を振り、生まれ出た黒い剣が数本リリスを貫こうと向かって行く。
リリスがその剣をなぎ払うように大きく手を振ると、黒い剣が突然燃え上がり消え去っていく。
「馬鹿ナ!クソ!」
飛び上がり杖を武器に赤目が直接攻撃してくる。
リリスは何事もなかったように風に巻かれて宙を漂い、うっとりとした表情で炎のような赤い髪を舞い上がらせたまま、くるりと一つ回転して赤目の攻撃をはじき返した。
「死ね!破砕せよ!」
赤目が引くと、顔無しがリリスの背後に現れ、杖を振り下ろす。
リリスはくるりと身を返し、その杖が生み出した巨大なひずみを両手で受け止めた。
ひずみはリリスの手に集まっていき、その手の中に凝縮して行く。
「なにっ!き、貴様……」
反射的に危険を感じ、顔無しがまた空間のスキマへと逃げていく。しかしその隙を与えず、リリスが表情もなく手の中のひずみを男に放った。
ひずみはその瞬間、内から光を出して爆発的に広がって行く。
「ギャアアァァァ……」
ドォォンッ!ゴオオオオォォ……
顔無しは一瞬でその身体を吹き飛ばし、空間に消えていた身体もろとも千々に散って消え去った。
「顔無シ!マ、マサカ、ヤツガコンナ簡単ニ!」
リリスが宙を舞って、赤目の男に一つ手を振り下ろす。
「ヒイッ!りゅーずサマ!」
ズドン!
メキメキズシンッ!
その力は逃げる赤目を切り裂き、黒い闇の塊を消し去り、近くの木々までも一瞬で切り倒して地面に大きな裂け目を作った。
「黒き門よ閉じよ。その門は生ける者が踏みいるべからず、迷える人々は光の充ち満ちた世界に生きる者なり。
風を統べるセフィーリアの名の下に、その黒き門の存在を否定する。
黒き言葉よ無に帰せ!」
リリスが呪を込め、指を組み大きく振り下ろす。
それは子供の力とは思えない、この空間を清浄化する、遙かに大きく覆い尽くすような力。
「ナニッ!」
驚く赤目の前で、黒くうごめく物はごっそりと容積を減らし、3分の1が消滅して飲み込んだ人の半数を吐き出した。
「ナ、ナント言ウ事ヲ……」
我が子のように愛でていた闇の塊が大きく力を弱め、もがくように形を崩す。
「オノレ……ユルサヌ!」
赤目が初めて受けたその攻撃の大きさに、カッと我を忘れ呪いの呪を吐いた。
「ソノ呪ワレタ髪ニ巣クウ大イナルへびヨ、闇ヲマトイ赤イ髪ノ魔導師ヲ内ヨリ食ラウガ良イ!」
「 なに? 痛っ!」
リリスの髪を束ねるヒモが、突如青いヘビに姿を変え、服ごと背中の皮膚を食い破ってズルズルとリリスの身体の中へと消えた。
「ひいっ!ひっ!い、い、いや!ぎゃっ、ぎゃああっ!!
ひいぃっ!痛い!痛い!痛いっ!」
背中の皮膚の下を、筋肉の間を噛み裂きながらズルズルヘビが這って行く。
その激しい痛みとゾッとする感触に、リリスの身体が凍り付く。
その隙を赤目が逃さなかった。
「コノガキ、死ネ!」
赤目が近くの木の頂点に立ち、リリスに向けて杖を振る。
杖からは黒い光が走り、避ける余裕の無いリリスの左肩をかすった。
「ギャッ!」
肉が焼けるような音を立て、黒い光のかすった部分が焼けて炭のように黒く変色する。
「ひ!ぎゃああ!!ぐっ、あっ、あっ、んいいいぃい、痛い!!ひいっ!」
ブスブスと肉が焼け落ち、気が遠くなるほどの激しい痛みが襲ってくる。
そこへもう一人の魔導師が突然空間に姿を現し、ニヤリと笑って杖を振り降ろした。
「落ちろ!すみやかに死ね!」
「ぐっ!」
リリスの身体をドスンと大きな衝撃が襲い、
抗うこともできないまま地に落ちて行く。
バーン!ガシャンッ!
「うっ、ごふっ……」
そこは丁度馬車の上、崩れた幌が少しはクッションになった物のリリスが目を見開き、血を吐いて大きく痙攣した。
「リリス!しっかりして!ピピ……」
「ヨー……様……に、にげ……」
痛い!
痛い!痛い!痛い!
恐い!恐い!
母上!母上!
ザレル!父上!
助けて!
助けてえ!!
「母……さ……たす……て……」
太刀打ちできない異質の力、身体中をはい回り内から食いつくさんとするヘビの存在、リリスは痛みと恐怖で身体中がパニックを起こし、ガタガタと痙攣してとうとう気を失った。
「ピピ……リリス、リリス……」
ヨーコ鳥がリリスの頰をつつく。
肩の傷はひどい状態で、どんどん黒く侵食して左腕がちぎれて落ちそうだ。
傷口から血があふれ、あの日の夜が思い出されてヨーコも恐怖で羽根が膨れた。
「ひどい、どうすればいいの?
ね、ねえ、リリス、死んじゃった……の?リリス、リリス!」
ビュオオオォォ……
オオオオオオオオオオ…………
嘆くように風が鳴りながら強く吹き、リリスの前にそれが白く渦巻いてゆく。
「きゃあ!な、なに?」
ヨーコがリリスにしがみつき、渦巻く風の中ゆらゆらと形をなんとか成している、セフィーリアの姿を見た。
「あれは……リリスのお母さん!」
それは、セフィーリアの本体ではないのだろう。
白髪は風に薄れ、美しい顔はゆらゆら揺れてはっきりしない。
リリスを心配そうに優しく手を伸ばし、そのまとう風に赤い髪がフワリと広がる。
しかしふと、その手がぴたりと止まった。
リリスのその髪がしだいに赤く輝きを増し、まぶたがぴくりと動く。
「リリス……」
身体までもがまぶしいほどに赤く輝き、ゆっくりとまぶたが開いて行く。
その開いた目は、色違いではなく両目とも赤く燃えていた。
「リリス!その目!あっ、キャア!ピルル」
輝く髪から全身が一瞬燃え上がり、肩の傷の黒く侵食した部分の色が消え、肉が徐々に盛り上がっていく。
「燃えた、燃えちゃった、どうなってるのよう!」
呆然と見守るヨーコとセフィーリアの前に、ゆるりとリリスが半身を起こす。
傷口から黒こげのヘビが転げ落ち、それがボロボロの元の粗末なヒモに変わる
いつもの快活な少年の顔は一変して、雰囲気が女性を思わせ息を飲むほどに美しい。
うっとりと妖艶な顔に、ヨーコが思わず問う。
「あなたは……誰?」
リリスは回りを飛ぶ鳥をいちべつして、ヨーコに答えた。
『我が名は、リリサレーン』
ハッと息を飲み、セフィーリアの姿が乱れてかき消える。
「リリスのお母さん!あっ!」
「このガキまだ生きていたか!」
また空間のスキマから、顔無しが目前に突然顔を出した。
「破壊!破壊!破壊せよ!」
「きゃっ!」
ヨーコがリリスの背後に隠れると、男の力がリリスの前で四散する。
そしてリリスが、全身を赤く輝かせて一気に上空へと飛んだ。
「ナント、マダ生キテイルトハ!」
赤目がまた杖を振り、生まれ出た黒い剣が数本リリスを貫こうと向かって行く。
リリスがその剣をなぎ払うように大きく手を振ると、黒い剣が突然燃え上がり消え去っていく。
「馬鹿ナ!クソ!」
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リリスは何事もなかったように風に巻かれて宙を漂い、うっとりとした表情で炎のような赤い髪を舞い上がらせたまま、くるりと一つ回転して赤目の攻撃をはじき返した。
「死ね!破砕せよ!」
赤目が引くと、顔無しがリリスの背後に現れ、杖を振り下ろす。
リリスはくるりと身を返し、その杖が生み出した巨大なひずみを両手で受け止めた。
ひずみはリリスの手に集まっていき、その手の中に凝縮して行く。
「なにっ!き、貴様……」
反射的に危険を感じ、顔無しがまた空間のスキマへと逃げていく。しかしその隙を与えず、リリスが表情もなく手の中のひずみを男に放った。
ひずみはその瞬間、内から光を出して爆発的に広がって行く。
「ギャアアァァァ……」
ドォォンッ!ゴオオオオォォ……
顔無しは一瞬でその身体を吹き飛ばし、空間に消えていた身体もろとも千々に散って消え去った。
「顔無シ!マ、マサカ、ヤツガコンナ簡単ニ!」
リリスが宙を舞って、赤目の男に一つ手を振り下ろす。
「ヒイッ!りゅーずサマ!」
ズドン!
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その力は逃げる赤目を切り裂き、黒い闇の塊を消し去り、近くの木々までも一瞬で切り倒して地面に大きな裂け目を作った。
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