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5、リリスの中に眠る物
29、夢の邂逅
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風が、アトラーナの空を流れる。
リリスは風に乗って、フワリと風船のように青い空を流れていた。
眼下には延々と森が続き、そして豆粒のような人間が樹の間からチラチラ見え隠れする。
ここは……?
ああ、これは国境の山
ボンヤリと浮かぶ言葉もうつろに、ずっと奥へと飛び進む。
気持ちいい
ああ、風に国境はないんだ……
やがて大きな湖が日の光にキラキラと輝き、その背後に白い城が見えてきた。
あれは、何だろう……
なんて綺麗なお城…………
うっとり見つめて目を閉じる。
しかし温かな風の中にチクチクと、冷たい風が混じり合って突然向かい風が吹きつけた。
押し返されるように、大きく吹きもどされる。
しかし何故か、自分はその城に行かねばならない気がする。
なぜだろう、何故あのお城に行かなければならないのだろう。
ボンヤリと、それほど深く考えることもなく風に逆らい城に向かう。
迫る白い壁を突き抜け、そして玉座に座する老人にゆらゆらと近づいた。
老人はウトウトうたた寝しているのか、膝掛けがズルリと落ちかけている。
リリスは微笑みながら、手を伸ばしてそれを直し老人の顔を覗き込んだ。
暗くその生気のない顔には、深くシワが刻まれ、おびえるように眉間にしわを寄せている。
自分が探しているのはこの人では無い気がする……
でも、なんて、疲れた顔……
可哀想にと、思わずその頰を撫でたとき、王がゆっくりと目を開いた。
「……たれぞ……?」
私は…………
突然、目の前が真っ暗になった。
まるでいきなり夜が訪れたように、漆黒の闇が広がりまわりを見回す。
天地の区別が付かず、足が地についていないような気がしてめまいに襲われた。
「なんと、精霊の加護もなく、この私の手の中に自ら飛び込んでくるとは……
おお、やはり……やはり、なぜこうも愛しいのか。」
高く震える声に振り向く。
そこには、暗闇に白く浮き上がる、白いローブを身にまとった仮面の魔導師が1人手を差し出している。
だあれ?
「愛し子よ、なんと汚れ無きその美しさ。ああ、その懐かしくもかぐわしい香り、お前を見ると心が躍る。
なぜだろう、欲しくなる。」
リリスは首をかしげ、ゆらゆら揺らめき眠たそうに目を閉じる。
なんだろう、凄く……眠い…………
リューズは目を見開き興奮したように、リリスを手招き唇を舐めた。
「さあ、さあ、来よ、麗しい少年よ。
真珠のようなその肌に血のような髪、魂さえ手に入れれば道はできる。
さすれば実体を呼び寄せるのは容易い。
さあ、赤い髪の少年よ、すべての断りを捨て、このリューズの一部となるがよい。」
リューズの持つ杖の水晶玉が、美しい光を放つ。
「美しい少年よ、我が手に、我が物になれ。」
リリスがぼんやりと、その輝きに目を奪われた。
綺麗……
身体が光に吸い込まれそうになりながら、うっとりとそれに身を任せる。
水晶へ向かってフワフワと漂うその身体を、突然遮るように現れた女性がしっかりと抱き留めた。
「しっかりせよ!お前の仕事はまだ始まったばかりぞ!」
叱咤され、見上げるとそれは赤い髪に赤い瞳の美しい女性。
しかし、その顔はキッと厳しくリリスを見つめ、そしてリューズを睨め付けた。
「この無礼者め、目を覚ませ。こんな所で何をしている!」
「お前は……お前の名は……リリサレーン、か。
ああ、なぜ久しいのかわからぬが、私はお前を知っているのだろう。
私は長い時を彷徨っていた、なぜ彷徨うのか知らぬが、ずっと何かを求めている。」
「お前は一体何をしている。なぜここにいるのだ。」
「なぜ?だと?ああ、それは。なぜだろう……
ああ、戦を起こすためだ、私はその為にここにいる。
なぜと問うな、私はもう彷徨うのに疲れ果てた。
ああ、リリサレーンよ、お前も時を同じくして復活するか。
……それもよかろう。」
「いいや、私はこの子の中にある。お主がその青年の中にあるように。
控えよ、お主はもう十分この国を振り回した。その青年の身体を返せ。」
「クク……傲慢な女よ、これは仮初めのすみか。
我がここにいるは天命よ、滅びは再生の始まり、アトラーナは滅び、そして生まれ変わるのだ。
今のアトラーナはすでに精霊の聖地ではない。
精霊の聖地は終わりを告げた。
もうよい、リリサレーンよ去れ!」
突然響く声に、リリスがハッと気が付く。
辺りは明るく、目前にはトランの王が座しており、そこには仮面をしたリューズが、リリスに向かって杖を振り下ろしているところだった。
「魔女め、王から離れよ!」
あっ……
揺らめく彼の身体は、リューズの魔力を受けて吹き飛んでしまう。
わあっ!!
その瞬間めまいを起こしたような錯覚の中、落ちるように我が身へと戻り、リリスは重いまぶたをうっすらと開いた。
ゆ……め……?
頭がボンヤリと、目がしっかり開かない。
なんという身体のだるさ、ベナレスで肩を切られたときのようだ。
ふと現実に引き戻され、ドッと不安感が押し寄せた。
あの魔導師は?!
あれは一体どうなったのだろう?!
眠い…………、眠くてたまらない。
でも起きなければ。
皆さんを守らなくては!
顔のない2人の魔導師がリリスに迫る。
人々が闇に飲み込まれて行く!
背中に、ヘビがズルズルと皮膚の下を食い破りながらはい回る。
肩が千切れそうに、身体中が痛い!
思い出して、痛みと恐怖に身体が震えた。
でも、魔導師と戦えるのは自分しかいない。
無理矢理目を覚まそうと身をよじり、大きく頭を振って覚醒を促す。
誰か、私を起こして!手を貸して!
「……れ……か!おね……が……」
声を絞り出したとき、誰かが大きな手でリリスの目を覆った。
「落ち着け。戦いは終わった、もう少し眠れ。まだお前は疲れ切っている。」
誰?ザレル?……ああ、良かった。ザレルだ……
やっぱり、来てくれたんだ。
スウッと力が抜けて、目を閉じる。
「ザレル……すみませ……」
つぶやいて、ホッとした表情でスウッとまた吐息を立て始めた。
彼がいるなら安心だ。
だって、父様だもの……
僕の………………
リリスは風に乗って、フワリと風船のように青い空を流れていた。
眼下には延々と森が続き、そして豆粒のような人間が樹の間からチラチラ見え隠れする。
ここは……?
ああ、これは国境の山
ボンヤリと浮かぶ言葉もうつろに、ずっと奥へと飛び進む。
気持ちいい
ああ、風に国境はないんだ……
やがて大きな湖が日の光にキラキラと輝き、その背後に白い城が見えてきた。
あれは、何だろう……
なんて綺麗なお城…………
うっとり見つめて目を閉じる。
しかし温かな風の中にチクチクと、冷たい風が混じり合って突然向かい風が吹きつけた。
押し返されるように、大きく吹きもどされる。
しかし何故か、自分はその城に行かねばならない気がする。
なぜだろう、何故あのお城に行かなければならないのだろう。
ボンヤリと、それほど深く考えることもなく風に逆らい城に向かう。
迫る白い壁を突き抜け、そして玉座に座する老人にゆらゆらと近づいた。
老人はウトウトうたた寝しているのか、膝掛けがズルリと落ちかけている。
リリスは微笑みながら、手を伸ばしてそれを直し老人の顔を覗き込んだ。
暗くその生気のない顔には、深くシワが刻まれ、おびえるように眉間にしわを寄せている。
自分が探しているのはこの人では無い気がする……
でも、なんて、疲れた顔……
可哀想にと、思わずその頰を撫でたとき、王がゆっくりと目を開いた。
「……たれぞ……?」
私は…………
突然、目の前が真っ暗になった。
まるでいきなり夜が訪れたように、漆黒の闇が広がりまわりを見回す。
天地の区別が付かず、足が地についていないような気がしてめまいに襲われた。
「なんと、精霊の加護もなく、この私の手の中に自ら飛び込んでくるとは……
おお、やはり……やはり、なぜこうも愛しいのか。」
高く震える声に振り向く。
そこには、暗闇に白く浮き上がる、白いローブを身にまとった仮面の魔導師が1人手を差し出している。
だあれ?
「愛し子よ、なんと汚れ無きその美しさ。ああ、その懐かしくもかぐわしい香り、お前を見ると心が躍る。
なぜだろう、欲しくなる。」
リリスは首をかしげ、ゆらゆら揺らめき眠たそうに目を閉じる。
なんだろう、凄く……眠い…………
リューズは目を見開き興奮したように、リリスを手招き唇を舐めた。
「さあ、さあ、来よ、麗しい少年よ。
真珠のようなその肌に血のような髪、魂さえ手に入れれば道はできる。
さすれば実体を呼び寄せるのは容易い。
さあ、赤い髪の少年よ、すべての断りを捨て、このリューズの一部となるがよい。」
リューズの持つ杖の水晶玉が、美しい光を放つ。
「美しい少年よ、我が手に、我が物になれ。」
リリスがぼんやりと、その輝きに目を奪われた。
綺麗……
身体が光に吸い込まれそうになりながら、うっとりとそれに身を任せる。
水晶へ向かってフワフワと漂うその身体を、突然遮るように現れた女性がしっかりと抱き留めた。
「しっかりせよ!お前の仕事はまだ始まったばかりぞ!」
叱咤され、見上げるとそれは赤い髪に赤い瞳の美しい女性。
しかし、その顔はキッと厳しくリリスを見つめ、そしてリューズを睨め付けた。
「この無礼者め、目を覚ませ。こんな所で何をしている!」
「お前は……お前の名は……リリサレーン、か。
ああ、なぜ久しいのかわからぬが、私はお前を知っているのだろう。
私は長い時を彷徨っていた、なぜ彷徨うのか知らぬが、ずっと何かを求めている。」
「お前は一体何をしている。なぜここにいるのだ。」
「なぜ?だと?ああ、それは。なぜだろう……
ああ、戦を起こすためだ、私はその為にここにいる。
なぜと問うな、私はもう彷徨うのに疲れ果てた。
ああ、リリサレーンよ、お前も時を同じくして復活するか。
……それもよかろう。」
「いいや、私はこの子の中にある。お主がその青年の中にあるように。
控えよ、お主はもう十分この国を振り回した。その青年の身体を返せ。」
「クク……傲慢な女よ、これは仮初めのすみか。
我がここにいるは天命よ、滅びは再生の始まり、アトラーナは滅び、そして生まれ変わるのだ。
今のアトラーナはすでに精霊の聖地ではない。
精霊の聖地は終わりを告げた。
もうよい、リリサレーンよ去れ!」
突然響く声に、リリスがハッと気が付く。
辺りは明るく、目前にはトランの王が座しており、そこには仮面をしたリューズが、リリスに向かって杖を振り下ろしているところだった。
「魔女め、王から離れよ!」
あっ……
揺らめく彼の身体は、リューズの魔力を受けて吹き飛んでしまう。
わあっ!!
その瞬間めまいを起こしたような錯覚の中、落ちるように我が身へと戻り、リリスは重いまぶたをうっすらと開いた。
ゆ……め……?
頭がボンヤリと、目がしっかり開かない。
なんという身体のだるさ、ベナレスで肩を切られたときのようだ。
ふと現実に引き戻され、ドッと不安感が押し寄せた。
あの魔導師は?!
あれは一体どうなったのだろう?!
眠い…………、眠くてたまらない。
でも起きなければ。
皆さんを守らなくては!
顔のない2人の魔導師がリリスに迫る。
人々が闇に飲み込まれて行く!
背中に、ヘビがズルズルと皮膚の下を食い破りながらはい回る。
肩が千切れそうに、身体中が痛い!
思い出して、痛みと恐怖に身体が震えた。
でも、魔導師と戦えるのは自分しかいない。
無理矢理目を覚まそうと身をよじり、大きく頭を振って覚醒を促す。
誰か、私を起こして!手を貸して!
「……れ……か!おね……が……」
声を絞り出したとき、誰かが大きな手でリリスの目を覆った。
「落ち着け。戦いは終わった、もう少し眠れ。まだお前は疲れ切っている。」
誰?ザレル?……ああ、良かった。ザレルだ……
やっぱり、来てくれたんだ。
スウッと力が抜けて、目を閉じる。
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