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8、隣国の脅威
47、西の塔
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「はあ、おやまあ、これはガーラントではないか。久しいな。ふう」
「おお、これはグロス様。」
そこには魔導師のグロスが、杖をついて息を弾ませている。
魔導師は東の塔に住まうのだが、さすがに齢60も過ぎると階段はきついのだろう。
大きくハアと息をついて肩を落とした。
「やれやれ、こう坂や階段ばかりだと年を取ると辛うなる。
おや?なんだ、大きい子を背負って……お前の子か?赤い髪とは……例の?」
「グロス様、お久しゅうございます。狭い所ですので、こちらで失礼を致します。
これは城から来ました魔導師のリリスという者。少々疲れておりますところを、無理を言って引きずり回している所ですよ。」
「ああ、その子か、道中果敢に戦ったという魔導師の子供は。疲れるのも無理はない。
お主、あれを見せる気か?しかしそれ程弱っていては危ないぞ。」
「は、しかし時間がございません。またいつ襲ってくるかわからぬ今、すべてを頭に入れておく方がこの少年のためにもなりましょう。」
「……ふむ、まあ良い、結界も強固にしておるし、今聖水を取りに行っておるからそれを待って入れば問題なかろう。」
『あれ』とは……?
ギルバの目が、好奇心で輝く。
横の若い騎士は曇った表情で、ついて行くのも気が進まない様子だ。
「ギルバ様、およしになった方が……」
若い騎士が、小さな声でささやいた。
「案内はもうよいぞ、お前は帰ればいい。」
突き放した言い方に、若い騎士がキッと顔を締める。
「いいえ、ここまで来ましたからお供いたします。」
ギルバがクックッと笑って階段を上る。
その先に何があるのか、今は興味だけが先を歩いていた。
その階段を上りきると、一つのフロアーに出た。
いくつかのテーブルと椅子が、部屋の隅に寄せてある。
グロスが一息つこうかと、横の椅子に腰をかけた。
リリスがうながされて背を降り、驚いた様子で慌てて目をこすり、グロスとギルバに頭を下げる。
ここが塔の中であると聞いて、ようやく状況を把握した。
「すいません、ご迷惑をおかけしました。
これは失礼しました、私は風の魔導師のリリスと申します。」
「わしは地に属する魔導師のグロスじゃ。お主の話はようヴァシュラム様より伺っておる。
彼の方が気に入りのその方の力、いずれ見せていただこう。」
「はい、ありがとうございます。
騎士様よろしゅうお願い申し上げます。」
「ふん、指輪もない召使いに語る名など無い。」
ギルバがぷいっと顔を背けると、ガーラントがすかさず彼を紹介した。
「騎士のギルバ殿だ。ルランから共に来た石頭なので気にすることはない。」
「なにいっ!」
カッとするギルバに、にっこりリリスが微笑む。
その顔はあでやかなほど、邪気がなかった。
「はい。魔導師では半人前ですので、召使いでかまいません。
御用の際は何なりと御用を仰せください、ギルバ様。」
あまりにも素直なリリスの言葉に、ギルバがぐっと言葉に詰まる。
ガーラントが横で、クックと笑っている。
若い騎士も、一歩出てリリスに手を差し出した。
「私はミラン・リールです。私はここの騎士、とは言ってもまだ駆け出しですが、よろしく。」
その手にリリスが少し驚いた様子で、そっと握手して返す。
このレナントは、王都とは違う。自由な雰囲気が人の心の壁を低くしている。そんな気さえする。
「よろしくお願いします、リール様。私も指輪のない者、魔導師では未熟でございます。」
「ミランでいいですよ。リールは親族であと2人いるのです。
駆け出し同士、仲良くしましょう。」
「あ、ありがとうございます。」
ドキマギとリリスが頬を赤くして微笑む。
なんだか居心地がいいのか、この慣れない雰囲気には戸惑うばかりだ。
「この上が最上階じゃ、それ、階段はまた別になっている。
あれから上ればドアに出る、参ろうか。」
そこだけは木製の階段で、上から釣り上げることができるようになっている。
自己紹介して、皆はさっそく階段を上りその部屋を前にした。
リリスはそこがなんなのか知らず、大きな扉を見上げる。
そこには兵が2人いて、またもリリスたちを止めた。
「これは……ガーラント殿、お久しい。こちらに何の用事で?」
「シラー殿、済まぬ。
こちらの本城より参られた魔導師殿に、部屋をお見せしたいのだ。」
リリスが訳もわからず、ぺこりとお辞儀する。
「魔導師として参りましたリリスでございます。」
髪と目の色に、初めて会う人はほとんどが眉をひそめる。
それを覚悟していたが、何故か少し驚いたように兵は笑いかけてきた。
「おお、そちらが援軍を救われたという……赤い髪だとお聞きしておりましたが、まだこのようにお若い方とは存じませなんだ。
しかし、ここは危険でございまして、城外の方をお入れするわけには行きませぬ。」
グロスが前に出て、2人の間に割ってはいる。
良い良いと、シラーを制した。
「我らが共に入る、今は目をつぶるが良い。
魔導師なれば、見ておかねばなるまいて。」
「しかし……」
兵が2人顔を見合わせ、どうしたものかと考える。
ガーラントは先日ここを見る機会があったのだが、そののち余程きつく立ち入りを禁じられたのだろう。
「中を、見せてお上げなさい。」
突然背後から声がして、皆が振り返った。
「これはルネイ様、お二方がそう仰るならば。」
シラー達も頭を下げて道を空ける。
「おおルネイ、遅かったな。聖水は?」
「ここじゃグロス。シールーン様のご加護も最近は遠い。あのお方の人間嫌いも困った物じゃ。」
グロスが手を挙げる相手は、先日の会議の席にいた魔導師ルネイ。
この城の魔道師を束ねる長を兼ねている。
すでに髪も白い物が混じり、ふうと息を吐いて手の杖にもたれかかった。
「やれやれ、日頃の運動不足がこたえる。
さあ入ろうか、ここには聖水が必需品でね。私はルネイ、水の魔導師だ。
グレタガーラは君にかなりの迷惑をかけたと聞いた、本当に済まぬな。」
「いいえ、いいえ、とんでもございません。
私の方が大変なお世話になりました、なんと言ってお礼を申し上げればよいか、言葉も浮かびません。」
深々と頭を下げるリリスにルネイがクスリと微笑み、彼の肩をポンと叩きドアの前へ出る。
リリスはあまりの気さくさに驚いて彼を見上げながら、ゆっくりと開くドアに目を移した。
「おお、これはグロス様。」
そこには魔導師のグロスが、杖をついて息を弾ませている。
魔導師は東の塔に住まうのだが、さすがに齢60も過ぎると階段はきついのだろう。
大きくハアと息をついて肩を落とした。
「やれやれ、こう坂や階段ばかりだと年を取ると辛うなる。
おや?なんだ、大きい子を背負って……お前の子か?赤い髪とは……例の?」
「グロス様、お久しゅうございます。狭い所ですので、こちらで失礼を致します。
これは城から来ました魔導師のリリスという者。少々疲れておりますところを、無理を言って引きずり回している所ですよ。」
「ああ、その子か、道中果敢に戦ったという魔導師の子供は。疲れるのも無理はない。
お主、あれを見せる気か?しかしそれ程弱っていては危ないぞ。」
「は、しかし時間がございません。またいつ襲ってくるかわからぬ今、すべてを頭に入れておく方がこの少年のためにもなりましょう。」
「……ふむ、まあ良い、結界も強固にしておるし、今聖水を取りに行っておるからそれを待って入れば問題なかろう。」
『あれ』とは……?
ギルバの目が、好奇心で輝く。
横の若い騎士は曇った表情で、ついて行くのも気が進まない様子だ。
「ギルバ様、およしになった方が……」
若い騎士が、小さな声でささやいた。
「案内はもうよいぞ、お前は帰ればいい。」
突き放した言い方に、若い騎士がキッと顔を締める。
「いいえ、ここまで来ましたからお供いたします。」
ギルバがクックッと笑って階段を上る。
その先に何があるのか、今は興味だけが先を歩いていた。
その階段を上りきると、一つのフロアーに出た。
いくつかのテーブルと椅子が、部屋の隅に寄せてある。
グロスが一息つこうかと、横の椅子に腰をかけた。
リリスがうながされて背を降り、驚いた様子で慌てて目をこすり、グロスとギルバに頭を下げる。
ここが塔の中であると聞いて、ようやく状況を把握した。
「すいません、ご迷惑をおかけしました。
これは失礼しました、私は風の魔導師のリリスと申します。」
「わしは地に属する魔導師のグロスじゃ。お主の話はようヴァシュラム様より伺っておる。
彼の方が気に入りのその方の力、いずれ見せていただこう。」
「はい、ありがとうございます。
騎士様よろしゅうお願い申し上げます。」
「ふん、指輪もない召使いに語る名など無い。」
ギルバがぷいっと顔を背けると、ガーラントがすかさず彼を紹介した。
「騎士のギルバ殿だ。ルランから共に来た石頭なので気にすることはない。」
「なにいっ!」
カッとするギルバに、にっこりリリスが微笑む。
その顔はあでやかなほど、邪気がなかった。
「はい。魔導師では半人前ですので、召使いでかまいません。
御用の際は何なりと御用を仰せください、ギルバ様。」
あまりにも素直なリリスの言葉に、ギルバがぐっと言葉に詰まる。
ガーラントが横で、クックと笑っている。
若い騎士も、一歩出てリリスに手を差し出した。
「私はミラン・リールです。私はここの騎士、とは言ってもまだ駆け出しですが、よろしく。」
その手にリリスが少し驚いた様子で、そっと握手して返す。
このレナントは、王都とは違う。自由な雰囲気が人の心の壁を低くしている。そんな気さえする。
「よろしくお願いします、リール様。私も指輪のない者、魔導師では未熟でございます。」
「ミランでいいですよ。リールは親族であと2人いるのです。
駆け出し同士、仲良くしましょう。」
「あ、ありがとうございます。」
ドキマギとリリスが頬を赤くして微笑む。
なんだか居心地がいいのか、この慣れない雰囲気には戸惑うばかりだ。
「この上が最上階じゃ、それ、階段はまた別になっている。
あれから上ればドアに出る、参ろうか。」
そこだけは木製の階段で、上から釣り上げることができるようになっている。
自己紹介して、皆はさっそく階段を上りその部屋を前にした。
リリスはそこがなんなのか知らず、大きな扉を見上げる。
そこには兵が2人いて、またもリリスたちを止めた。
「これは……ガーラント殿、お久しい。こちらに何の用事で?」
「シラー殿、済まぬ。
こちらの本城より参られた魔導師殿に、部屋をお見せしたいのだ。」
リリスが訳もわからず、ぺこりとお辞儀する。
「魔導師として参りましたリリスでございます。」
髪と目の色に、初めて会う人はほとんどが眉をひそめる。
それを覚悟していたが、何故か少し驚いたように兵は笑いかけてきた。
「おお、そちらが援軍を救われたという……赤い髪だとお聞きしておりましたが、まだこのようにお若い方とは存じませなんだ。
しかし、ここは危険でございまして、城外の方をお入れするわけには行きませぬ。」
グロスが前に出て、2人の間に割ってはいる。
良い良いと、シラーを制した。
「我らが共に入る、今は目をつぶるが良い。
魔導師なれば、見ておかねばなるまいて。」
「しかし……」
兵が2人顔を見合わせ、どうしたものかと考える。
ガーラントは先日ここを見る機会があったのだが、そののち余程きつく立ち入りを禁じられたのだろう。
「中を、見せてお上げなさい。」
突然背後から声がして、皆が振り返った。
「これはルネイ様、お二方がそう仰るならば。」
シラー達も頭を下げて道を空ける。
「おおルネイ、遅かったな。聖水は?」
「ここじゃグロス。シールーン様のご加護も最近は遠い。あのお方の人間嫌いも困った物じゃ。」
グロスが手を挙げる相手は、先日の会議の席にいた魔導師ルネイ。
この城の魔道師を束ねる長を兼ねている。
すでに髪も白い物が混じり、ふうと息を吐いて手の杖にもたれかかった。
「やれやれ、日頃の運動不足がこたえる。
さあ入ろうか、ここには聖水が必需品でね。私はルネイ、水の魔導師だ。
グレタガーラは君にかなりの迷惑をかけたと聞いた、本当に済まぬな。」
「いいえ、いいえ、とんでもございません。
私の方が大変なお世話になりました、なんと言ってお礼を申し上げればよいか、言葉も浮かびません。」
深々と頭を下げるリリスにルネイがクスリと微笑み、彼の肩をポンと叩きドアの前へ出る。
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