赤い髪のリリス 戦いの風

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8、隣国の脅威

50、戦いのあと

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気が遠くなる、腕が重い、立っていられない。

なんてこと!ち、力が!身体が、動かない!誰か……


矢を手に掲げたまま、意識が遠のき後ろにふらりと崩れて行く。
ガーラントが何かを大きく叫ぶ。


誰か!母様!



フワリと、後ろから誰かに包まれた。

「まったく、リーリは無茶をする」

「か……あ……さ……」

ガクリと気を失うリリスの手にある矢を、セフィーリアが受け取る。
その矢はまぶしいほどに輝きを増してゆく。

「我が愛し子に手を挙げた。それを後悔するがいい!無礼者めが!」

「ヒイッ」

巨大な蛇は、慌ててレナファンを捨て、闇の狭間に逃げ込もうとする。
しかしセフィーリアがその矢を投げると、矢が突き抜けたモンスターは四散し、闇の空間で射抜かれた蛇の身体は大きく膨らみ、そして壁ごと弾けて消えた。

「やった!やったのか?!」
「魔物が消えた!」

喜びもつかの間、壊れた壁に支えを無くした天井がガラガラと崩れ、屋根の一部が落ちてくる。

「危ない、早う皆下がれ!」
「レナファン!手を早く!」

崩れ落ちる屋根の一部からレナファンを救い出し、這うように皆が何とか出口を目指す。
一同はドアの外まで下がり、そしてようやく息をついた。

「レナファン無事か?」

魔導師2人に支えられていた彼女はその場にヘナヘナと座り込み、大きく息をつく。
死を覚悟していた緊張感から一気に解き放され、気が遠くなっていった。

「は、はい、ご迷惑をおかけして申し訳ない。ああ……」

レナファンの身体が、ルネイの手の中にゆっくりと倒れてしまった。

「レナファン!早う医者を……!」

ルネイが彼女を介抱する横で、グロスが崩れた壁に呆然とつぶやく。

「な……んという……我らが束になっても敵わなかったものを……」

グロスが肩を落とし、セフィーリアが抱くリリスを見つめる。
セフィーリアは小さく首を振り、そしてグロスと目を合わせた。

「私が教えたのは、風の精霊を使役して行う魔導。お前達が師に習った物とさほど変わらない。
しかし、この子は精霊と会話する。
そして巫子の術も合わせて勉強している。
わが弟子で、ここまで戦える弟子はいない。
気に病むなグロスよ。この子は戦う宿命であったのだ。」

「戦う……宿命……か。わしらは戦うことなどありませなんだ。
この年で経験不足などお恥ずかしい。」

ルネイがグロスの肩を叩く。

「元より魔導師は、人々を良き方向に導く為の存在。
今まで戦う必要もなかったのだ。致し方ない。
しかし、リリス殿には驚いた。」

何という知識の応用力。

これでは他の魔導師は皆かすんでしまう。
最低の地位の中で突出した力の彼には、元より魔導師の指輪など与える事が出来ぬのだ。
それは、塔の選りすぐりの魔導師たちの存在までも、脅かしてしまう。

塔の親書からは、リリスに良いイメージを受けなかった。
あれは、見苦しい塔の老人たちの嫉妬だ。
もしこの戦いぶりを目の当たりにしたならば、ゲールはどう思うのだろう。

「皆無事か?!」

騒ぎを聞きつけ、ガルシア達が駆けつけて階段を駆け上がってきた。

「何と、あの魔物はいかがした?」

部屋へ飛び込むと、そこにレリーフのようにあった魔物が消え、壁が崩れて美しい外の景色が見えている。

「御館様、壁に天井も壊れております。ここも危険かと。」

声に振り返ると、兵達もバタバタ下から駆け上がってくる。
ガルシアは辺りを見回し、すでに危険が去ったと判断して兵を下がらせた。

「わかった、ここは崩れるやもしれん、早く下へ!館へのドアを開放せよ、一刻も早く塔を出るのだ!
医者を呼べ、グロスもルネイも手当をしなければ。気を失った者もいる。はやく!
おお、何とレナファン!ルネイよ、どうやって助け出したのだ?」

「それが……」

ルネイが視線をリリスにやる。
自分たちでなせなかったことが、この少年1人の登場で解決できたなど、老齢の魔導師には立つ瀬がない。

何と語ればいいのか……

ルネイの戸惑いにガルシアはうなずき、ここで語ることではないと察し、それ以上口をつぐんだ。

「よい、あとで聞こう。とりあえずは大儀であった。早く治療せよ。
人は完璧ではない。ルネイよ、万全を尽くし彼女は救われた、それでよい。」

「は……これしき、軽いケガでございます。」

顔にあるキズを押さえ頭を下げるルネイに、ガルシアがその手を取る。

「さ、皆と共に下へ降りようぞ。転んで骨など折られぬよう。」

嫌みにルネイがフッと笑う。

「なんの、この老体まだまだ御館様のお役に立ちましょうぞ。」

「その意気だ。」

ニヤリとガルシアが笑った。
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