赤い髪のリリス 戦いの風

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8、隣国の脅威

54、百合の花

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「ちっ」

トランの一室で、杖の先端にある水晶玉をのぞき込んでいたリューズが舌打ちした。
水晶に写っていたリリスの顔は、ボンヤリと霞がかかり消えてゆく。
巫子が来たら、護りは強固となりもう見えなくなるだろう。
苦々しい顔で水晶玉をなで、フンと息を吐いた。

「あと少しであったのに。
あと少しで愛し子の魂が手に入れられたというのに口惜しい。
地の神殿の巫子か、イネス……地の第2の巫子、百合の戦士……
フフフ……なるほど、美しき魂よ。
まるで、愛し子と双子のような……これは、下僕を送り込まねば。」

のぞき込んだ時、
突然、水晶玉がまぶしいほどの輝きを放った。

「うあっ、ひっ!」

その輝きに、思わずリューズが顔を手で遮る。
隙を突くように、水晶玉の輝きの中から突き出すように手が1本現れ、リューズの首をつかんだ。

「なにっ!ぐっ!」

その手はリューズの首をギリギリと締め上げ、あらがうリューズが引きはがそうとしてもビクともしない。

「お、おのれ!くあっ!ぐうう……」

苦しさに身もだえしながら、杖を離しその手を両手でつかむ。
杖はまるで腕の一部のように、宙に浮いて苦しむ主の姿を冷たく見ていた。

「は……な…せ!この!!」

仮面が落ち、リューズの瞳が青く輝く。
すると首をつかむ腕が青い炎を上げ、燃え上がった。

「リューズ様!」

顔の無い部下の魔導師が1人、リューズの声に引き寄せられるように空間に姿を現す。

「この腕、断ち切れ!」

命に従い杖を振り下ろすその顔の無い魔導師は、しかしその腕に触れた瞬間光り輝き、一瞬で無数の百合の花に姿を変えた。

杖を残し、ぱさぱさと百合の花が地に落ち、床に積む。

カラン、カラン、カラカラカラ…………

空虚な音を立てて、床を杖が転がって行った。

「ぐうっ、し…まった。」

消えた部下に、リューズが苦悶の顔で声を振り絞る。



『なるほど、お前の下僕は神木から作られし者か』



揺れるような声が、あたりに響いた。
腕はゆっくりと首から手を離して、水晶玉へと消えて行く。
腕が消えた瞬間、リューズの杖は地に落ち、水晶玉も元の透き通った色に戻っていった。

「ゴホッゴホッ!はあ、はあ……お、おのれ、ヴァシュラム……
我が力、それで知ったと思うな。」

消えた部下に、口惜しそうに部下の残した杖を手に取り床にたたきつける。
それは自らが生み出した、下僕のよりしろ。
王に1本の巨大な神木を切らせ、それから杖を作らせた。

「ヴァシュラムめ、脅しのつもりか?
くく……ふざけたことを、お前の神殿を襲ってやろうか?
巫子どもすべて、皆殺しにしてやろう。」

よろめきながら、首をさすり立ち上がる。
息をついてふと横の鏡に目をやり、小さな悲鳴を上げた。

「ひ、ひっ!……こ、れは!し、しまった!」

慌てて服の前をはだけ、胸を見る。
そこには胸から首にかけ、まるで入れ墨のように百合の花が咲き乱れていた。





レナントの城では、崩れた城の一部の復旧も夕暮れと共に中断し、静かな夜が訪れていた。
セフィーリアがいなくなった事も知らないリリスの部屋で、すうすう寝息を立てて眠る彼は、身体も楽になり気持ちよく夢を見ていた。

青い空の下、フェリアと手をつなぎ野原を歩く。
さわやかな風が吹き、野には可憐な黄色い花が一面に咲き誇り美しい。
顔を見合わせにっこり笑い、フェリアが指さす場所に座り、持ってきたお弁当を広げる。
ところがお弁当箱は空っぽで、フェリアが怒って泣き出した。
どんなになだめても彼女は泣き止まない。
すると突然、小さな彼女とは思えない体重でのし掛かってきた。

うーん、重い
ごめんなさい、フェリア許して、何か探してくるから…
うーん……重いよ~~


ぼんやり、ようやく目が覚めた。
あれ?私はどうしたんだっけ?

ずしっと重い何かを見ると、突然腕が顔に覆い被さってきた。

「うっぷ、こ、これは一体……え?」

「くかーーーっ」

何とか首を回して横を見ると、そこにはよだれをたらした眠るイネスの顔が。


「え?え?ええーー??」

狭いベッドの上、何故かリリスに添い寝するイネスが寝相も悪く爆睡していた。
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