赤い髪のリリス 戦いの風

LLX

文字の大きさ
68 / 303
9、決意と暴露と

67、世継ぎの資格

しおりを挟む
レスラが宰相である父に話し、重い腰を上げさせて許しを得て王の部屋に行ったとき、そこにはすでにキアナルーサが王のそばにいた。


衛兵を横目に、宰相である父が王の居室へ入ってゆく。
風が通り良い香りの香が鼻をつき、レスラカーンはライアに合図されて一礼した。

「おお、サラカーン、息子連れとは珍しいな。」

椅子にゆったりと腰掛ける王が、傍らに立つキアナルーサに引くよう手を挙げる。
一歩横に引いた王子の足音に耳を傾け、レスラカーンが父に並び頭を下げた。

「久しく挨拶もままならず、申し訳ありません伯父上様。」

「良い。レスラよ、城で不自由はないか?遠慮のう側近に申せ。
お前とて王家には大切な男子。お前は見えていなくとも、ちゃんと皆お前に頭を下げている、胸をはるがよい。」

「はい、ありがとうございます。」

きちんと挨拶のできる息子に、宰相が微笑んで肩をポンと叩いて下がらせる。
王がその様子ににやりと笑った。

「フフ……サラカーンよ、お主も息子に尻を叩かれて来たか。」

王はいつにも増して怠そうな様子で椅子にもたれかかり、皆の心配する姿に嬉しそうに顔をゆるめている。
サラカーンは、弟として心配そうな顔で前に手を組み兄の表情を伺った。

「兄上、キアナルーサのいるところを見ると、同じ用件でございましょう。
魔導師からの薬の件で参りました。」

「うむ……キアナルーサは、魔導師ラインの煎じ薬を飲むなと言うのだ。
ラインは良うしてくれる。あれの心配はいらぬと言うに。」

「でも、ゼブラも怪しい物には口をつけない方がよいと……
僕も父上にはお身体を大事にして欲しいのです。母上にも使いを出しました。
お二人に今何かあったら……僕はどうしたらいいんでしょう。」

気弱に父の横でひざまずくキアンに、父王がやれやれと肩に手を置いた。

「甘やかしすぎたか、キアナルーサ。今のおまえの様子では、わしもまだ地に眠ることもままならぬ。
風の女王が先ほど挨拶に来たが、しばらく本城にいるように言うておいた。
今のドラゴン使いはおまえじゃ、気ままなあれ達を操るのは容易ではない。心せよ。」


「父上……」


僕には世継ぎの資格があるのでしょうか?



訪ねたい気持ちがわいてくる。


しかしキアンはグッと言葉を飲み込み、王の手を握って大きくうなずいた。

「このキアナルーサ、父上のご期待にきっと添えて見せます。どうかご心配なきよう。」

「うむ、……ラインの煎じ薬はしばらく留め置こう。
セフィーリアが自ら薬を作ると言うてくれておる。あれの薬はよう効くと評判らしい。
ラインもドラゴンの言うことならば納得しよう。
大儀であった、部屋で休め。」

「はい、父上も……
……最後に一つおたずねして良いでしょうか?」

キアンがうつむき、息をのむ。
言っていいのか悪いのか分からない。
王はいぶかしい顔で、悟ったようにふと顔を背け目を閉じた。
そして手を振り、人払いする。
ゼブラやライア、側近達が頭を下げて窓を閉め、部屋を出た。

「私は……いかがしましょう?」

ライアたちの気配が消えて、レスラカーンが杖を握りしめ、どうしたものか見回すように首を振る。
父のサラカーンが王にうなずき、彼の肩を抱いて引き寄せた。

「おまえも父を手伝いたいと思うなら、ここへ控えよ。ただし口外をしてはならぬ。よいな。」

「はい、わかりました。」

レスラカーンが緊張して父の傍らに立つ。
王が眉間にしわを寄せてうつむき、そして顔を上げた。

「良い、キアナルーサよ、ここには身内しかおらぬ。おまえの心にあるわだかまりを申せ。」


とうとう、このときが来た。
本当のことを、訪ねるときが。

キアンは落ち着きが無く指をかみ、気持ちを決めて顔を上げた。


「はい…………

ち、父上は……

僕は、一人で生まれてきたと申されました。

でも、僕はフレアゴートから聞いたのです。おまえは王の長子、世継ぎではないと。
僕は、2番目に生まれたのだと。

きっと、これを知っている者は、城内にもいるはずです。
叔父上からの使者が漏らした言葉から、先だっての一部の貴族達の動きも良く存じております。
僕ではない者を王座に就かせようと、あからさまな動きとか……
あれがおおやけで僕に忠誠を誓ってくれた事や、ゼブラのおかげで動きも治められましたが……

ドラゴンたちは……それを知るからこそ、もともと僕に仕える気は薄いのではないでしょうか?
精霊の国の王子が、精霊に無視されているように思えてなりません。
僕は……本当に世継ぎの資格があるのでしょうか?
父上、どうか……どうか本当のことを教えて下さい。」

王が目を伏せ、言葉を探す。
レスラカーンは、否定しない王の沈黙に愕然としていた。

「まさか……ベスレムの叔父上様の話といううわさは……」

レスラがふと漏らした言葉を遮るように、父が彼の口に手を当てた。
慌てて口をつぐみ、父の手を握る。
周りの人々の息づかいが、不安げにひっそりとしているようで早い。
動かない空気の流れに、緊張感が張り詰めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた

今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。 レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。 不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。 レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。 それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し…… ※短め

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

冤罪で追放された令嬢〜周囲の人間達は追放した大国に激怒しました〜

影茸
恋愛
王国アレスターレが強国となった立役者とされる公爵令嬢マーセリア・ラスレリア。 けれどもマーセリアはその知名度を危険視され、国王に冤罪をかけられ王国から追放されることになってしまう。 そしてアレスターレを強国にするため、必死に動き回っていたマーセリアは休暇気分で抵抗せず王国を去る。 ーーー だが、マーセリアの追放を周囲の人間は許さなかった。 ※一人称ですが、視点はころころ変わる予定です。視点が変わる時には題名にその人物の名前を書かせていただきます。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

〈完結〉姉と母の本当の思いを知った時、私達は父を捨てて旅に出ることを決めました。

江戸川ばた散歩
恋愛
「私」男爵令嬢ベリンダには三人のきょうだいがいる。だが母は年の離れた一番上の姉ローズにだけ冷たい。 幼いながらもそれに気付いていた私は、誕生日の晩、両親の言い争いを聞く。 しばらくして、ローズは誕生日によばれた菓子職人と駆け落ちしてしまう。 それから全寮制の学校に通うこともあり、家族はあまり集わなくなる。 母は離れで暮らす様になり、気鬱にもなる。 そしてローズが出ていった歳にベリンダがなった頃、突然ローズから手紙が来る。 そこにはベリンダがずっと持っていた疑問の答えがあった。

【完結】16わたしも愛人を作ります。

華蓮
恋愛
公爵令嬢のマリカは、皇太子であるアイランに冷たくされていた。側妃を持ち、子供も側妃と持つと、、 惨めで生きているのが疲れたマリカ。 第二王子のカイランがお見舞いに来てくれた、、、、

処理中です...