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9、決意と暴露と
73、魔導師達の凋落
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「メ、メイス!なんだそのトカゲは!」
まさか、まさか、自分が招いたこの子供が魔物の手先なのか?
まさか!
「ゲール、殺すな、捕らえよ!」
レスラカーンが声を上げ命令した。
キアンがハッと顔を上げ、盲目のいとこの顔を見る。
「レ、レスラ……殺した方がよいのではないか?」
「いいえ!生かして背後の者を知るのが先決。
ゲール!魔導であれば兵の仕事ではない、兵は下がれ!魔導の力で捕縛せよ!」
「レスラカーン様はお下がりを!」
ゼブラが険しい顔で、ライアとレスラを遮る。
「ここはキアナルーサ王子にお任せを!お下がり下さい!
王子!」
キアンは急かれて、言葉を探す。
しかし、殺した方がいいのか、生かした方がいいのか判断が付かない。
「ゲ、ゲール、どうにかせよ。早う!」
「は……しかし……」
ゲールもどうしたものか迷っていると、出口で誰かが声を上げた。
「出られないぞ!」
「出られない!セフィーリア様、助けて下さい!」
窓の外には、セフィーリアの大きな透き通る白い手が阻まれているのか、探るように動いている。
「しまった、空間を閉じられたのか?!」
逃げ場を失い、ザレルが天を仰ぐ。
セフィーリアさえ侵入できない状態にメイスを見た。
「精霊さえも撥ね付けるとは、一体何者だ?」
メイスは不気味に不適な顔で笑いながら、頬でうごめく入れ墨のトカゲをなだめるように撫でている。
「お前が切るか?」
隣にいたシャールがささやく。
「いや、しばし様子を見る。」
ザレルは剣の柄に手を添え、キアン達をかばうように立って部屋を見回し、逃げ場を探した。
「くくっ、さあどうする?魔導師サマ?くくくっ!」
メイスが見下して、不適に腕を組み告げた。
ゲールが他の魔導師達と目を合わせる。
我が子のように魔導師達が思ってきたこの子供を、殺すなどできるはずもない。
「捕らえよう、操られているだけかも知れぬ。できるか?」
「この場にいる精霊だけでやってみましょう。」
魔導師達がザレル達の前で盾となり、結界をはるため呪を唱え始める。
水の魔導師のカリアが前に立ち、その場に捕らえようと杖でメイスに向かって宙に呪を連ねた。
「魔に捕らわれし者!ここにその力望む者は無し!
与する精霊よ、水のシールーンが名の下に絶対の眠りを与えよ!
水の精霊よ集え!捕縛せよ!」
宙に書かれた呪文が輝き、メイスの身体を捕らえる。
そして力強く差し出すカリアの杖から霧が渦を巻いて巻き上がり、メイスの身体を包み込むと足下から凍ってきた。
キシキシときしむ音を立てて、メイスを守るように結界を作る無数のトカゲも凍り付く。
メイスはその様子を驚いたように見下ろし、肩を震わせた。
「メイスよ、お前に罪はない」
カリアが術に集中しながら額に汗を流し告げる。
恐怖に身体を震わせていると思われたその少年は、しかし身体を震わせ笑っていた。
「くくっ、くくくく……
なんと稚拙な術よ、これが精霊の国の魔導師の実力か!」
「な、なにっ?!」
「笑止!!」
メイスが一蹴して両手を横にないだ。
ゴウと音を立て、その手から青い炎が勢いよく吐き出され氷はあっという間に蒸発する。
その炎は容赦なく魔導師達を襲い、彼らの身体を炎が舐めた。
「ひっ!」
不意の攻撃に、カリアの後ろに立つ魔導師達がとっさに術で背後の人々の盾になる。
しかしあまりの炎の勢いに炎があふれ、その炎はキアン達に迫った。
「うわああ!!」
「王子!」
「レスラ様!」
とっさにライアやゼブラが、主の身体をかばって伏せる。
「おおおおっ!!」
ザレルが居合いを込めて再度破魔の剣を抜き、炎を切り裂いた。
「ひっ!ぎゃああ!」
魔導師が二人、炎に包まれ転げ回る。
「ジェンガ!バルク!」
周りの者が慌てて上着を脱ぎ、もみ消そうとしながら術を唱える。
だがその火は消える気配がない。苦しさに転げ回る二人を、どうすることもできず立ち尽くした。
「消えぬ……消えぬ、何故だ!」
「クックック!あはははは!燃えろ!燃えるがいい!それぞ報いと知れ!あはははは!」
メイスの笑い声が響いて、火はどんどん強さを増す。
「助けて、助けてくれええ!」
燃える身体をなんとか消そうとしながら、呆然とラインが立ち上がった。
「メイス、なぜだ。お前を連れてきたのは間違いだったのか?メイスよ、恨むなら私を恨め!」
叫ぶラインに、メイスが笑うのをやめ人差し指を噛む。
顔を両手で包み、嗚咽のように肩をふるわせながら、息を吐いた。
「あああ……ライン様!!」
「メイス!戻るのだ!元の普通の少年に!」
「ああ、駄目です、もう戻れないのです、ライン様。
私は、家族を流行病(はやりやまい)で失った後、村人に家を焼かれ井戸も埋められ、畑も取り上げられ、すべてを失って物乞いをしてようやく生きていた。
感謝します、その地獄から救ってくれたあなたに。
ああ、あの時ほど、人に輝きを感じた事はありませんでした。
でも……でも、ここに来てその安堵は消えた。
牛馬のように働き、疲れた身体を休ませる間もなく。
夜は……
夜までも、この屈辱。
この2人が、この2人が私にした事は、何が権威ある魔導師なのでしょうか?!
何が、 私は、辱めを受けながら、ここの地下での夜は悪夢でしか無かった!
私は、ただ、お前達の奴隷でしかなかったのだ。」
メイスがボロボロと涙をこぼしてラインに訴える。
ラインはただ、愕然と大きな衝撃を受けて立ち尽くした。
「馬鹿な、このわしの管理するこの塔で……」
ゲールが絶句して、火が消えて這って逃げようとする魔導師二人に目が行く。
メイスは涙をふきもせず、泣きながら笑っていた。
「そうだよ、ゲール様。ひどいだろう?
しかし、それも今は感謝しているよ。
それがなければ、哀しみのあまりに井戸に身を投げる事もなかった。
井戸の底の暗闇で、あのお方に出会ったあの日は、なかっただろうから。」
青い炎が床をなめるように広がり、対峙するラインとゲールの服の裾にも火が付く。
「ゲール様!お下がり下さい!」
「うるさい!!」
声を上げた他の魔導師が、メイスがいちべつするといきなり燃え上がった。
「うわああ!!」
「やめよ!メイス!」
ラインが叫び、彼の結界に入ろうと手を伸ばす。
だがその手ははじかれ、メイスを包み込む青い炎はヘビのように少年の身体に巻き付いてゆく。
そして使用人の粗末な服を燃やして、裸体をなめるように包み込みながら歪んだ声がどこからかささやいた。
『ククク……ゲール、うぬらは修行不足だよ。
落ちぶれ果てた精霊の国の魔導師達よ、なんという凋落か。
遙か昔はあれほど恐れられた者が、指輪と杖でその地位を約束され、ただの人となり果てた。
すでにこの城、我らに恐れる物はない。
それがわかった事で、もう十分だ。』
「さよなら、ライン様。
呪われよ、慈悲無きアトラーナ!
滅びてしまうがいい!あははは!」
その炎は、メイスとはまた違う存在なのか。
歪んだ声は、明らかにメイスの声とは違っている。
「貴様は何者か!待て!」
皆を嘲るように笑って炎に包まれ、トカゲたちと共に消えるメイスを皆が呆然と見送る。
「逃さん!」
突然、ザレルがメイスの姿が消える青い炎に斬りつけた。
その剣は音を立て、風を巻き起こして壁を切り裂き残る炎を吹き飛ばす。
「……ッア!……」
声を残しメイスの姿が消え、炎の隙間から彼の小さな左手が肘から落ちて燃え上がった。
まさか、まさか、自分が招いたこの子供が魔物の手先なのか?
まさか!
「ゲール、殺すな、捕らえよ!」
レスラカーンが声を上げ命令した。
キアンがハッと顔を上げ、盲目のいとこの顔を見る。
「レ、レスラ……殺した方がよいのではないか?」
「いいえ!生かして背後の者を知るのが先決。
ゲール!魔導であれば兵の仕事ではない、兵は下がれ!魔導の力で捕縛せよ!」
「レスラカーン様はお下がりを!」
ゼブラが険しい顔で、ライアとレスラを遮る。
「ここはキアナルーサ王子にお任せを!お下がり下さい!
王子!」
キアンは急かれて、言葉を探す。
しかし、殺した方がいいのか、生かした方がいいのか判断が付かない。
「ゲ、ゲール、どうにかせよ。早う!」
「は……しかし……」
ゲールもどうしたものか迷っていると、出口で誰かが声を上げた。
「出られないぞ!」
「出られない!セフィーリア様、助けて下さい!」
窓の外には、セフィーリアの大きな透き通る白い手が阻まれているのか、探るように動いている。
「しまった、空間を閉じられたのか?!」
逃げ場を失い、ザレルが天を仰ぐ。
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「精霊さえも撥ね付けるとは、一体何者だ?」
メイスは不気味に不適な顔で笑いながら、頬でうごめく入れ墨のトカゲをなだめるように撫でている。
「お前が切るか?」
隣にいたシャールがささやく。
「いや、しばし様子を見る。」
ザレルは剣の柄に手を添え、キアン達をかばうように立って部屋を見回し、逃げ場を探した。
「くくっ、さあどうする?魔導師サマ?くくくっ!」
メイスが見下して、不適に腕を組み告げた。
ゲールが他の魔導師達と目を合わせる。
我が子のように魔導師達が思ってきたこの子供を、殺すなどできるはずもない。
「捕らえよう、操られているだけかも知れぬ。できるか?」
「この場にいる精霊だけでやってみましょう。」
魔導師達がザレル達の前で盾となり、結界をはるため呪を唱え始める。
水の魔導師のカリアが前に立ち、その場に捕らえようと杖でメイスに向かって宙に呪を連ねた。
「魔に捕らわれし者!ここにその力望む者は無し!
与する精霊よ、水のシールーンが名の下に絶対の眠りを与えよ!
水の精霊よ集え!捕縛せよ!」
宙に書かれた呪文が輝き、メイスの身体を捕らえる。
そして力強く差し出すカリアの杖から霧が渦を巻いて巻き上がり、メイスの身体を包み込むと足下から凍ってきた。
キシキシときしむ音を立てて、メイスを守るように結界を作る無数のトカゲも凍り付く。
メイスはその様子を驚いたように見下ろし、肩を震わせた。
「メイスよ、お前に罪はない」
カリアが術に集中しながら額に汗を流し告げる。
恐怖に身体を震わせていると思われたその少年は、しかし身体を震わせ笑っていた。
「くくっ、くくくく……
なんと稚拙な術よ、これが精霊の国の魔導師の実力か!」
「な、なにっ?!」
「笑止!!」
メイスが一蹴して両手を横にないだ。
ゴウと音を立て、その手から青い炎が勢いよく吐き出され氷はあっという間に蒸発する。
その炎は容赦なく魔導師達を襲い、彼らの身体を炎が舐めた。
「ひっ!」
不意の攻撃に、カリアの後ろに立つ魔導師達がとっさに術で背後の人々の盾になる。
しかしあまりの炎の勢いに炎があふれ、その炎はキアン達に迫った。
「うわああ!!」
「王子!」
「レスラ様!」
とっさにライアやゼブラが、主の身体をかばって伏せる。
「おおおおっ!!」
ザレルが居合いを込めて再度破魔の剣を抜き、炎を切り裂いた。
「ひっ!ぎゃああ!」
魔導師が二人、炎に包まれ転げ回る。
「ジェンガ!バルク!」
周りの者が慌てて上着を脱ぎ、もみ消そうとしながら術を唱える。
だがその火は消える気配がない。苦しさに転げ回る二人を、どうすることもできず立ち尽くした。
「消えぬ……消えぬ、何故だ!」
「クックック!あはははは!燃えろ!燃えるがいい!それぞ報いと知れ!あはははは!」
メイスの笑い声が響いて、火はどんどん強さを増す。
「助けて、助けてくれええ!」
燃える身体をなんとか消そうとしながら、呆然とラインが立ち上がった。
「メイス、なぜだ。お前を連れてきたのは間違いだったのか?メイスよ、恨むなら私を恨め!」
叫ぶラインに、メイスが笑うのをやめ人差し指を噛む。
顔を両手で包み、嗚咽のように肩をふるわせながら、息を吐いた。
「あああ……ライン様!!」
「メイス!戻るのだ!元の普通の少年に!」
「ああ、駄目です、もう戻れないのです、ライン様。
私は、家族を流行病(はやりやまい)で失った後、村人に家を焼かれ井戸も埋められ、畑も取り上げられ、すべてを失って物乞いをしてようやく生きていた。
感謝します、その地獄から救ってくれたあなたに。
ああ、あの時ほど、人に輝きを感じた事はありませんでした。
でも……でも、ここに来てその安堵は消えた。
牛馬のように働き、疲れた身体を休ませる間もなく。
夜は……
夜までも、この屈辱。
この2人が、この2人が私にした事は、何が権威ある魔導師なのでしょうか?!
何が、 私は、辱めを受けながら、ここの地下での夜は悪夢でしか無かった!
私は、ただ、お前達の奴隷でしかなかったのだ。」
メイスがボロボロと涙をこぼしてラインに訴える。
ラインはただ、愕然と大きな衝撃を受けて立ち尽くした。
「馬鹿な、このわしの管理するこの塔で……」
ゲールが絶句して、火が消えて這って逃げようとする魔導師二人に目が行く。
メイスは涙をふきもせず、泣きながら笑っていた。
「そうだよ、ゲール様。ひどいだろう?
しかし、それも今は感謝しているよ。
それがなければ、哀しみのあまりに井戸に身を投げる事もなかった。
井戸の底の暗闇で、あのお方に出会ったあの日は、なかっただろうから。」
青い炎が床をなめるように広がり、対峙するラインとゲールの服の裾にも火が付く。
「ゲール様!お下がり下さい!」
「うるさい!!」
声を上げた他の魔導師が、メイスがいちべつするといきなり燃え上がった。
「うわああ!!」
「やめよ!メイス!」
ラインが叫び、彼の結界に入ろうと手を伸ばす。
だがその手ははじかれ、メイスを包み込む青い炎はヘビのように少年の身体に巻き付いてゆく。
そして使用人の粗末な服を燃やして、裸体をなめるように包み込みながら歪んだ声がどこからかささやいた。
『ククク……ゲール、うぬらは修行不足だよ。
落ちぶれ果てた精霊の国の魔導師達よ、なんという凋落か。
遙か昔はあれほど恐れられた者が、指輪と杖でその地位を約束され、ただの人となり果てた。
すでにこの城、我らに恐れる物はない。
それがわかった事で、もう十分だ。』
「さよなら、ライン様。
呪われよ、慈悲無きアトラーナ!
滅びてしまうがいい!あははは!」
その炎は、メイスとはまた違う存在なのか。
歪んだ声は、明らかにメイスの声とは違っている。
「貴様は何者か!待て!」
皆を嘲るように笑って炎に包まれ、トカゲたちと共に消えるメイスを皆が呆然と見送る。
「逃さん!」
突然、ザレルがメイスの姿が消える青い炎に斬りつけた。
その剣は音を立て、風を巻き起こして壁を切り裂き残る炎を吹き飛ばす。
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