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10、隣国からの使者
87、涙をふいて
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騒ぎはじき収まり、夜の静けさを取り戻して行く。
やがてセレスは部屋に帰ると、隣室のルビーの部屋へと赴いた。
ルビーはケガの手当も済み、カナンが着替えを手伝っている。
「どうか?」
セレスの問いに、少年カナンがルビーの着ていた服を示した。
「服にかけられた守護がなければ危のうございました。セレス様の破魔の剣も効かないとは、どんな魔物でしょう。」
不安げに語るカナンに、セレスが頭を撫でて下げさせる。
そして厳しい口調でルビーに告げた。
「修行が足りぬ、慢心と破魔の剣に頼るから隙ができるのだ。」
「はい、申し訳ありません。」
「横になるがよい、癒しを施す。
カナンは下がって良い。明日も早い、心配せずお休み。」
「はい、では失礼します。
何かございましたら、いつ何時でも何なりとお申し付け下さいませ。」
カナンが一礼して部屋を出る。
セレスが上着を脱ぎルビーに視線を戻すと、彼はベッドに座ったままグッと拳をにぎり、目に涙を浮かべ唇をかんでいた。
「悔しいか?」
「は……い……。口惜しゅうございます。」
わざと負けたことはあっても負け知らずのルビーには、初めて感じる完敗だった。
「フフ……それでよい。」
セレスが子供をあやすように、ルビーの頭を撫でて笑う。
そして優しく額にキスをした。
「あれとの戦い方、考えよ。
次は恐らく迷いや恐れを捨ててくるだろう。
お前は人を、あれから守らねばならぬ。」
「いいえ、私が守るのはセレス様です。」
「ククク……お前が守るのは人だ。
私を守るなどと、過ぎたことを……可愛い奴よ。」
壁のろうそくが、フッと消えた。
月明かりが窓から差し込みセレスの姿を青く照らす。
するりと服を脱いだその姿は、やがて穏やかに輝き何かが重なって行く。
「ああ……」
恐れにも似たため息を漏らし、ザワザワと気配に皮膚が総毛立つ。
ここにあるのはセレスであり、セレスでないもの。
ルビーはそれを見ることが許されない気がして、ギュッと目を閉じるとベッドに身体を横たえ思わず手を合わせた。
リリスの部屋の前には、サファイアを後ろにイネスが立っていた。
イネスが中をうかがい、ピッタリ耳をドアにくっつける。
サファイアが呆れて首を振り、小さく彼にささやいた。
「もうお休みなさいませ。リリス殿も一人になりたい時もありましょう。」
「うるさいな、お前はルビーの様子を見てこい。」
そうっと取っ手を握り力を入れると、ドアは相変わらず鍵もなく開く。
隙間から見ると奥のベッドには、リリスが膝を抱いて身じろぎもせず窓を向いて座っている。
頭の上に留まっている小鳥のヨーコが、くるりとこちらを向いた。
しっと唇に指を立て、うなずく。
静かにドアを閉め、イネスが思い立つとダッと自分の部屋に駆け出した。
枕を抱いて、再び戻るとまたドアを開ける。
隣の部屋に通じるドアから眉をひそめたガーラントがチラリと見えたが、出るなと手で合図するイネスの姿にひっそりと引っ込んだ。
イネスは黙ってずかずか入り、ボスッと枕を並べる。
もそもそベッドに上がり、気合いを入れて枕を叩いた。
「よし、明日も早いから寝るぞ。
あいつらいつ来るか知れんからな、眠れるときに寝ておかねば。
ほら、お前も寝ろ!」
うなだれるリリスから上着をはぎ取り、その上着でリリスの顔をごしごし拭いた。
「うう、痛い、痛いです。」
「お前はほんっとに泣いてばかりだな。
男だろう、泣くな!」
「泣いてません、目に何か入ったんです。」
「ウソつけ、川みたいに涙流してたくせに。
巫子を謀るとバチが当たるぞ。
さあさあ、寝るぞ!」
腕をグイと引いて、服のまま一緒に横になる。
ポンと布団を着て、大きくため息をついた。
「ああ、もう、本当にゾッとした。
兄様がこの城を半壊させたら、地の神殿の権威が落ちる。」
「ああ………セレス様……凄いですね。」
「あれは凄いというか、怖いくらいだ。
小さいとき、兄様が山で修行中に川で滑ってドボンしたのを、ついみんなで笑ったんだ。
そうしたら、無言でいきなりひと山突き抜けるほどのトンネル作ったんだぞ。
ひと山だ!向こうから光が見えたんだ、ホントに!
もーーー、すっごく怖かったというか……ああ、あのゾッとした感じ、お前にはわからぬだろうなあ。」
「ひと山……って、まさか先日釣りに行ったあの?
真っ直ぐそこだけ木が低いのはなぜだろうと思っていましたが……」
「そうだ、あそこ。
ヴァシュラム様がもの凄くお怒りになって、兄様は一週間戒めの間に閉じ込められたんだけど、いつの間にか逃げ出して行方不明。
もう大騒ぎだ。」
ちらと、リリスの顔を見る。
リリスはクスクス笑っている。ホッとして、ポンポンと頭を撫でた。
やがてセレスは部屋に帰ると、隣室のルビーの部屋へと赴いた。
ルビーはケガの手当も済み、カナンが着替えを手伝っている。
「どうか?」
セレスの問いに、少年カナンがルビーの着ていた服を示した。
「服にかけられた守護がなければ危のうございました。セレス様の破魔の剣も効かないとは、どんな魔物でしょう。」
不安げに語るカナンに、セレスが頭を撫でて下げさせる。
そして厳しい口調でルビーに告げた。
「修行が足りぬ、慢心と破魔の剣に頼るから隙ができるのだ。」
「はい、申し訳ありません。」
「横になるがよい、癒しを施す。
カナンは下がって良い。明日も早い、心配せずお休み。」
「はい、では失礼します。
何かございましたら、いつ何時でも何なりとお申し付け下さいませ。」
カナンが一礼して部屋を出る。
セレスが上着を脱ぎルビーに視線を戻すと、彼はベッドに座ったままグッと拳をにぎり、目に涙を浮かべ唇をかんでいた。
「悔しいか?」
「は……い……。口惜しゅうございます。」
わざと負けたことはあっても負け知らずのルビーには、初めて感じる完敗だった。
「フフ……それでよい。」
セレスが子供をあやすように、ルビーの頭を撫でて笑う。
そして優しく額にキスをした。
「あれとの戦い方、考えよ。
次は恐らく迷いや恐れを捨ててくるだろう。
お前は人を、あれから守らねばならぬ。」
「いいえ、私が守るのはセレス様です。」
「ククク……お前が守るのは人だ。
私を守るなどと、過ぎたことを……可愛い奴よ。」
壁のろうそくが、フッと消えた。
月明かりが窓から差し込みセレスの姿を青く照らす。
するりと服を脱いだその姿は、やがて穏やかに輝き何かが重なって行く。
「ああ……」
恐れにも似たため息を漏らし、ザワザワと気配に皮膚が総毛立つ。
ここにあるのはセレスであり、セレスでないもの。
ルビーはそれを見ることが許されない気がして、ギュッと目を閉じるとベッドに身体を横たえ思わず手を合わせた。
リリスの部屋の前には、サファイアを後ろにイネスが立っていた。
イネスが中をうかがい、ピッタリ耳をドアにくっつける。
サファイアが呆れて首を振り、小さく彼にささやいた。
「もうお休みなさいませ。リリス殿も一人になりたい時もありましょう。」
「うるさいな、お前はルビーの様子を見てこい。」
そうっと取っ手を握り力を入れると、ドアは相変わらず鍵もなく開く。
隙間から見ると奥のベッドには、リリスが膝を抱いて身じろぎもせず窓を向いて座っている。
頭の上に留まっている小鳥のヨーコが、くるりとこちらを向いた。
しっと唇に指を立て、うなずく。
静かにドアを閉め、イネスが思い立つとダッと自分の部屋に駆け出した。
枕を抱いて、再び戻るとまたドアを開ける。
隣の部屋に通じるドアから眉をひそめたガーラントがチラリと見えたが、出るなと手で合図するイネスの姿にひっそりと引っ込んだ。
イネスは黙ってずかずか入り、ボスッと枕を並べる。
もそもそベッドに上がり、気合いを入れて枕を叩いた。
「よし、明日も早いから寝るぞ。
あいつらいつ来るか知れんからな、眠れるときに寝ておかねば。
ほら、お前も寝ろ!」
うなだれるリリスから上着をはぎ取り、その上着でリリスの顔をごしごし拭いた。
「うう、痛い、痛いです。」
「お前はほんっとに泣いてばかりだな。
男だろう、泣くな!」
「泣いてません、目に何か入ったんです。」
「ウソつけ、川みたいに涙流してたくせに。
巫子を謀るとバチが当たるぞ。
さあさあ、寝るぞ!」
腕をグイと引いて、服のまま一緒に横になる。
ポンと布団を着て、大きくため息をついた。
「ああ、もう、本当にゾッとした。
兄様がこの城を半壊させたら、地の神殿の権威が落ちる。」
「ああ………セレス様……凄いですね。」
「あれは凄いというか、怖いくらいだ。
小さいとき、兄様が山で修行中に川で滑ってドボンしたのを、ついみんなで笑ったんだ。
そうしたら、無言でいきなりひと山突き抜けるほどのトンネル作ったんだぞ。
ひと山だ!向こうから光が見えたんだ、ホントに!
もーーー、すっごく怖かったというか……ああ、あのゾッとした感じ、お前にはわからぬだろうなあ。」
「ひと山……って、まさか先日釣りに行ったあの?
真っ直ぐそこだけ木が低いのはなぜだろうと思っていましたが……」
「そうだ、あそこ。
ヴァシュラム様がもの凄くお怒りになって、兄様は一週間戒めの間に閉じ込められたんだけど、いつの間にか逃げ出して行方不明。
もう大騒ぎだ。」
ちらと、リリスの顔を見る。
リリスはクスクス笑っている。ホッとして、ポンポンと頭を撫でた。
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