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10、隣国からの使者
90、これもまた戦(いくさ)
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「朝食に参りましょう、お腹がお空きになったでしょう?
私だけで空へ行ってしまって、申し訳ありません。
でも、グルクがあれほど力強いとは知りませんでした。
久しく風の精霊たちと戯れていなかったので、みんな喜んでくれました。」
「そうか、いや、気分転換になられて良かった。」
昨夜の騒ぎで、かなり落ち込んでいた姿を見ていただけに、心配していたがやはり同年代の友人は心強いのだろう。
しかし、現実は厳しい。
世話をしてくれる下女が、皆が悪い噂話をしているらしいと教えてくれただけに、何事もなければと願っている。
友人が襲ってきたなど、一番傷ついているのはこの子であるのに……
ガーラントは、重い気持ちでリリスと共に朝食に向かった。
「……ほら、あの子じゃないか……」
やはり、リリスの姿を見ると、廊下で通り過ぎる人々がひっそりと話を始める。
さぞ身の置き場がなかろうと、ガーラントが彼をちらりと見る。
しかし彼は、驚いたことに顔を上げにっこりと微笑み、いつものように元気に挨拶をした。
「おはようございます。」
「は、はい、おはようございます。」
言われて驚いた様子で、なんだか拍子抜けしたのか戸惑いがちに返事が返ってくる。
「あ、おはようございます!良いお天気でございますね。」
「は、はい!」
なんと、豪気な。
ガーラントは目を丸くして、プッと吹き出しクスクス笑って後をついていった。
「ね、大丈夫?チュ、チュン」
肩に留まるヨーコ鳥が、リリスの耳にひっそり話しかける。
「ええ、ご心配はいりません。大丈夫です。
私は一人ではないと、皆様に教えて頂きました。
それはイネス様、ガーラント様、そして、あなた様です。ヨーコ様。
私は、友人を……大切な者を守る為に、戦うことに決めました。」
キッとしまったリリスの表情。
あなたは何と戦うの?
ヨーコは少し心配になる。
それでも、迷いのない顔は力強ささえ感じる。
「おはようございます、リリス殿、ガーラント殿。」
後ろから肩をぽんとたたかれ、リリスが振り向く。
そこには朗らかな笑顔のミランが手を挙げ、挨拶を交わし並んで歩き出した。
「昨夜は大変だったそうですね。
私は今夜が泊まりの順番なので、何もないことを祈るばかりです。どうぞよしなに。」
「こちらこそ、よろしゅう願います。」
「今朝は寝坊して食べてこなかったので、何かいただけないかと食堂へ行くところなんですよ。
ご一緒しましょう。」
ミランは何も聞いてないはずはない。
きっと、彼なりに心配して気を使ってくれるのだろう。
話をしながら歩いていると、食堂からは慌ただしくいつもの喧噪が聞こえてくる。
皆が昨夜の様子を語り、聞き、やや興奮した様子だ。
しかしリリスが入り口に立つと、すっと水を引いたように静かになった。
一斉に、視線が彼に集中する。
「おはようございます。」
ぺこりとリリスがいつものように頭を下げ、気後れする様子もなく中へと足を進める。
そして調理場のカウンターにいき、シェフににっこり微笑んだ。
「私と、騎士様お二人に朝食をお願いいたします。」
「おお、おはよう、丁寧坊ちゃん。その辺に座って待ってな、持っていかせるから。」
「はい、承知いたしました。」
中央の、空いた席にいって三人で座る。
すると、騎士の一人が面白くなさそうにリリスに寄ってきた。
「おはよう、指輪のない魔導師殿。昨夜はたいそうご活躍のご様子。
ご友人にはいろんな方がいらっしゃるようだが、お館様もまさか、貴方が魔物にまで取り入っておられるとは思われなかったでしょうな。」
大柄な騎士の圧力を持ったその冷たい視線は、子供相手には大人げない。
おろおろするミランを横目に、ガーラントが助け手を出すべきかと一息吸ったとき、リリスが顔を上げた。
「いいえ、私は昨夜何もしておりません。
騒ぎを納められましたのは、地の巫子セレス様とお付きのルビー様。
私などには手を出す暇もございませんでした。
襲ってきた彼は、確かに私の友人。
本城にいたとき、話していてとても楽しく、心安らげる唯一の心強い友人でございました。
何かワケがあるのでしょう。
何者にも代え難い友が、こんな形で再会するとは思いもしませんでした。
残念でございます。」
視線を落として、本当に残念そうに話す。
それに微塵も卑屈な曲がったところが見られないだけに、騎士もぐっと言葉に詰まった。
「な、なにを……貴方は知っていて取り入ったのではないのかね?
さぞ、何ぞ良い条件でも提示されたのであろう。
魔物が何の見返りもなく、身分の低い人間と話をする物か!」
鼻で笑う騎士に、いつもならばただ頭を下げるであろうリリスが、キッと顔を上げた。
ヨーコが肩から飛び立ち、ミランの肩に留まる。
彼女も、リリスが自分の気持ちをはっきりと言葉にする様を見るのは初めてのような気がする。
そこには、強くなったと感じさせるリリスの、厳しく締まった顔の、少年には過ぎるほどの強さを感じさせた。
彼は、戦っているのだ。
私だけで空へ行ってしまって、申し訳ありません。
でも、グルクがあれほど力強いとは知りませんでした。
久しく風の精霊たちと戯れていなかったので、みんな喜んでくれました。」
「そうか、いや、気分転換になられて良かった。」
昨夜の騒ぎで、かなり落ち込んでいた姿を見ていただけに、心配していたがやはり同年代の友人は心強いのだろう。
しかし、現実は厳しい。
世話をしてくれる下女が、皆が悪い噂話をしているらしいと教えてくれただけに、何事もなければと願っている。
友人が襲ってきたなど、一番傷ついているのはこの子であるのに……
ガーラントは、重い気持ちでリリスと共に朝食に向かった。
「……ほら、あの子じゃないか……」
やはり、リリスの姿を見ると、廊下で通り過ぎる人々がひっそりと話を始める。
さぞ身の置き場がなかろうと、ガーラントが彼をちらりと見る。
しかし彼は、驚いたことに顔を上げにっこりと微笑み、いつものように元気に挨拶をした。
「おはようございます。」
「は、はい、おはようございます。」
言われて驚いた様子で、なんだか拍子抜けしたのか戸惑いがちに返事が返ってくる。
「あ、おはようございます!良いお天気でございますね。」
「は、はい!」
なんと、豪気な。
ガーラントは目を丸くして、プッと吹き出しクスクス笑って後をついていった。
「ね、大丈夫?チュ、チュン」
肩に留まるヨーコ鳥が、リリスの耳にひっそり話しかける。
「ええ、ご心配はいりません。大丈夫です。
私は一人ではないと、皆様に教えて頂きました。
それはイネス様、ガーラント様、そして、あなた様です。ヨーコ様。
私は、友人を……大切な者を守る為に、戦うことに決めました。」
キッとしまったリリスの表情。
あなたは何と戦うの?
ヨーコは少し心配になる。
それでも、迷いのない顔は力強ささえ感じる。
「おはようございます、リリス殿、ガーラント殿。」
後ろから肩をぽんとたたかれ、リリスが振り向く。
そこには朗らかな笑顔のミランが手を挙げ、挨拶を交わし並んで歩き出した。
「昨夜は大変だったそうですね。
私は今夜が泊まりの順番なので、何もないことを祈るばかりです。どうぞよしなに。」
「こちらこそ、よろしゅう願います。」
「今朝は寝坊して食べてこなかったので、何かいただけないかと食堂へ行くところなんですよ。
ご一緒しましょう。」
ミランは何も聞いてないはずはない。
きっと、彼なりに心配して気を使ってくれるのだろう。
話をしながら歩いていると、食堂からは慌ただしくいつもの喧噪が聞こえてくる。
皆が昨夜の様子を語り、聞き、やや興奮した様子だ。
しかしリリスが入り口に立つと、すっと水を引いたように静かになった。
一斉に、視線が彼に集中する。
「おはようございます。」
ぺこりとリリスがいつものように頭を下げ、気後れする様子もなく中へと足を進める。
そして調理場のカウンターにいき、シェフににっこり微笑んだ。
「私と、騎士様お二人に朝食をお願いいたします。」
「おお、おはよう、丁寧坊ちゃん。その辺に座って待ってな、持っていかせるから。」
「はい、承知いたしました。」
中央の、空いた席にいって三人で座る。
すると、騎士の一人が面白くなさそうにリリスに寄ってきた。
「おはよう、指輪のない魔導師殿。昨夜はたいそうご活躍のご様子。
ご友人にはいろんな方がいらっしゃるようだが、お館様もまさか、貴方が魔物にまで取り入っておられるとは思われなかったでしょうな。」
大柄な騎士の圧力を持ったその冷たい視線は、子供相手には大人げない。
おろおろするミランを横目に、ガーラントが助け手を出すべきかと一息吸ったとき、リリスが顔を上げた。
「いいえ、私は昨夜何もしておりません。
騒ぎを納められましたのは、地の巫子セレス様とお付きのルビー様。
私などには手を出す暇もございませんでした。
襲ってきた彼は、確かに私の友人。
本城にいたとき、話していてとても楽しく、心安らげる唯一の心強い友人でございました。
何かワケがあるのでしょう。
何者にも代え難い友が、こんな形で再会するとは思いもしませんでした。
残念でございます。」
視線を落として、本当に残念そうに話す。
それに微塵も卑屈な曲がったところが見られないだけに、騎士もぐっと言葉に詰まった。
「な、なにを……貴方は知っていて取り入ったのではないのかね?
さぞ、何ぞ良い条件でも提示されたのであろう。
魔物が何の見返りもなく、身分の低い人間と話をする物か!」
鼻で笑う騎士に、いつもならばただ頭を下げるであろうリリスが、キッと顔を上げた。
ヨーコが肩から飛び立ち、ミランの肩に留まる。
彼女も、リリスが自分の気持ちをはっきりと言葉にする様を見るのは初めてのような気がする。
そこには、強くなったと感じさせるリリスの、厳しく締まった顔の、少年には過ぎるほどの強さを感じさせた。
彼は、戦っているのだ。
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