赤い髪のリリス 戦いの風

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12、本城ルランへ

第115話 ささやく声

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ウトウトしながら火の番と辺りの警戒に、ブルースが伸びをして大きなあくびを繰り返す。
何か起きるかと実は緊張していたが、どうもその心配も杞憂に終わりそうだ。
グルクもキュアも、仲良く並んで丸くなって眠っている。

小川で水を飲み、月の高さにそろそろ交代しても良かろうかと熟睡中のミランを小突く。
騎士3人の中でも一番若いだけに寝起きが悪いかと思っていたら、ミランはパチッと目を開けさっと起き上がった。

「交代ですね、お疲れでございました。」

「なんだ、起きてたのか?」

ミランが一つ伸びをすると、スッキリした顔で立ち上がる。

「いえ、ちゃんと寝ましたよ。私はこう言うことも得意なんですよ。で、変わりは?」

「変わりない、動物の気配一つしないよ。」

「承知しました。火を絶やさぬ事と周囲の警戒はお任せ下さい。
リリス殿、良くお休みのようですね。」

「ああ、もう腹をくくってるんだろうよ。図太いのか繊細なのか、良くわからん奴だ。
じゃあ、休ませてもらう。何かあったら遠慮無く起こしてくれ。」

「はい。では遠慮無くどうぞ。」

ミランが、リリスの身体にかけている白いコートのズレをそっと直してやる。
静かな寝息にクスッと笑って、矢筒を腰に付け、弓を手に辺りをうかがい火に薪をくべた。



リーリンリンリン、リーリンリン……

ピピピピピ……

小さく虫の鳴く声がする。
皆よく眠って、ブルースはイビキがうるさい。
彼は横になるとすぐに眠り、少し驚いた。どこでも眠れる人なのだろう。
ガーラントは反して、とても静かに眠っている。
眠る時まで寡黙な人だ。

ミランが目を閉じ、剣を立てて身を任せる。
無心で目を開き、薪を一つくべた。
風が吹き、空を見れば雲が出て星の輝きがかすんで行く。
一番星の傾きでだいたい時間を切って決めていたが、見えなくなるかも知れない。
雨は、大丈夫のようだと思う。

一つ、息を吐いた。

耳をすませ、ふと顔を上げる。
シンと辺りが静まりかえり、虫の音が消えた。
立ち上がり、周囲を見回す。

なんだ?何か様子がおかしくないか?

ヒュウウ……

風はあまり強くない、が、どこからか風のような音がする。
ガサッと音に振り返ると、いつの間にかリリスが立ち上がり、ユラユラと歩き出した。

「リリス殿?どこへ行かれる?」

「母上が……」

「セフィーリア殿が?」

怪訝な顔で、この音は彼女が飛んでくる音かと考える。
いや、ならば虫が鳴きやむのはおかしい。彼女は精霊だ。

「お待ちを、暗いので危険です。」

声をかけるが、良く見るとリリスは目を閉じている。
おかしい、様子が違う。

「待たれよ!」

ミランが飛びつくように彼の腕を掴みグイと引いた。
しかし、まるで彼は石の様にビクともしない。

「しまった!魅入られたか!」

ミランの声に、ガーラントとブルースが飛び起きる。
そして一瞬で状況を察し、ガーラントがリリスの前に出て彼の身体を受け止めた。
が、ズシンと重く歩みが止まらない。

「重い、これは魔術か、ブルース、コートだ!」
「そうか!」

巫子のコートをリリスの頭からかぶせると、彼の身体がガクリとくずおれた。
そのまま抱き上げ、薪の元まで駆け戻る。
それをかばいながらミランが、リリスが進もうとした方向へ弓を構えた。
かすかに白い物が見え、迷うことなく射る。

「ミラン、いたか?」

「わかりません、でも何か見えました。」

「リリス!リリス!目を覚ませ!」

ガーラントがコートをかぶせたまま、リリスの身体をゆらす。
が、目を覚ます気配がない。
彼がここまで術にかかってしまうなど、予想もしていなかっただけにガーラントはひどく焦った。

「一体何があった?」

「音がしました、風がないのに風の音が。」

「風はこいつの配下だろう!」

「……そうか、……いえ、あれは風の音ではなかったかも……口笛?歌?」

「ちっ、さすがに音まではコートの護りも効かなかったか。」

周囲を警戒して見回し、剣に手をかける。
しんとして、風一つ吹かない。
空気が動かないだけで、閉塞感に襲われる。
知らず、手にじっくりと汗が浮かぶ。
ミランが、弓を引いたまま左右に向けた。



「ククッ、ククッ、おびえてるよ、クレディエア」



「そうね、オウゥンエア
私の歌は子守歌、純粋な子にだけ聞こえるんですもの」



囁くような、声が聞こえた。
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