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12、本城ルランへ
第116話 最悪のミスリル
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囁くような、声が聞こえた。
剣と弓を構え、リリスを守る。
ピュウウ……ヒュウウ……
歌うような、風の音に似た口笛が辺りに響く。
それは低く、高く、ジンジンと空気をゆらすほどの強さで、とうとうコートの中でびくんとリリスの身体が跳ね上がり、引き留めるガーラントの腕を払って立ち上がった。
「この音か!リリス!」
コートがさらりと落ちて、ガーラントがまた頭にかけようと思っても払い落とす。
足を払おうとしても、ビクともしない。
懸命に後ろに引っ張っても、大の男がズルズルともの凄い力で引きずられた。
「さあ、おいで、おいで」
「うるさい!黙れ!」
暗闇の中から声がして、ミランがまた矢を放った。
その矢が、やぶから出てきた手に受け止められ、背の低い男が姿を現す。
「なんだ、あれは!魔物か?!」
男は、どう見ても普通の人間には見えない。
長い黒髪から覗く顔は、獣の顔で鼻先が突き出てハアハアと息も荒くよだれを流している。
ブルースが総毛立つような戦慄を覚え、思わず声を上げた。
「エア姉弟だ!最悪のミスリル!
こいつはレナントで子供3人食ったんだ!こんな所にいやがった!!」
その言葉に、甲高い笑い声が辺りに響く。
男の横に人の女の顔を持つ白い巨大なミュー馬が、ケラケラひどく不快な声で笑いながら現れた。
「ひどいわ、最悪だなんて。
私の歌声はいかが?ああ……そうね、可哀想。
お前達のような汚い男どもに、果たして聞こえるのかしら?ホホホ!
まあオウゥンエア、これは本物よ、正真正銘の巫子。
それもかなり高位だわ!
なんてステキ、これを生きたまま食えば神気がついて精霊になれるわ。」
「本当かい?凄い凄い、食おうよクレディエア、僕はあの綺麗な顔がいい」
「まあオウゥンエア、私にはあの赤い方の目玉をちょうだい。まるで雨に濡れた野いちごのように、つややかな赤い目玉。
とっても甘くて美味しそうだったわ。」
「じゃあ半分こだね、頭は半分こだ!」
ゾッとする会話を楽しそうに交わし、4人に近づいてくる。
「くそっ!止まれ!止まれリリス!目を覚ませ!」
未だうつろな顔で歩みをやめないリリスに、ガーラントとブルースが抱きついて何とか止めようとする。
ミランが矢筒を探り、一つの青い矢を取り出して弓にかけた。
「ブルース殿、どいて!」
「ミラン、何を!」
「ミセル・ラル!汝、仮初めの眠りを与えよ!」
ミランが水色に光る矢をリリスに向ける。
ブルースが反射的に避けた瞬間、ミランの放った矢がリリスの胸を貫いた。
「ぎゃっ!」
声を上げ、リリスがその場に崩れ落ちる。
とっさにガーラントが抱き上げ、目を見開きミランを見た。
「ガーラント殿、矢は抜かないで!」
ミランが、すでに次の矢を弓に継いで呆気にとられる姉弟に狙いを定める。
ミュー馬の姉が、ブルリと身体を震わせた。
「なんと言うことを!神気が消えたわ!なんと言うことを!滅多にない獲物なのに!」
姉のクレディエアが、腹立たしげに毛を逆立て息を吐く。
ガーラントは立ち上がったキュアの背に彼を乗せ、空に逃げるか迷った。
しかし、二人を置いて逃げるわけにはいかない。ミスリル相手では、2対2で普通の人間が敵うわけないからだ。
それは死を意味する。
見捨てるわけにも行かず、剣を抜いてキュアの前に立つ。
オウゥンエアが獣の顔でニイッと笑い、牙を見せてべろりと長い舌で口をなめた。
「死んでてもいいよ、僕は食いたいんだクレディエア。」
「そうね、そうよね、死んでも少しくらい神気があるはずよ。
綺麗な目玉が曇らないうちに食べましょうオウゥンエア。
じゃあ、邪魔な大人は殺しましょうね。」
「逃げないように、鳥も殺してしまおう。」
フッと二人の姿が消えた。
とっさにガーラントがグルクとキュアの前に走った。
きらりと閃光が見え、グルクに剣が迫る。
ギイイィィン
ガーラントが寸ででオウゥンエアを跳ね返し、襲いかかるクレディエアをブルースが剣で追う。
そして口笛を鳴らし、自分のグルクに合図を送った。
「エリザ飛べ!逃げろ!」
ピュイイ!
グルクが飛び立ち、ガーラントもオウゥンエアの剣を受けながらキュアを逃がそうと尻を蹴った。
キュアが驚いて羽ばたき、ふわりと身体が浮き上がる。
「逃すものか。」
オウゥンエアがその小さな身体からは想像できないほどの力で剣を振り下ろす。
いや、あまりに早いその剣に、振り下ろす刃さえ一瞬見えなかった。
しかしその瞬間、鮮やかにキュアの首が断たれ、リリスを乗せたその身体が音を立てて地に横たわる。
背のリリスは矢が刺さったまま地に転げ落ち、その矢が途中で折れて消えた。
「キュアが!」
火に照らされ、首を落とされたキュアから青い火混じりの血が吹き上がる。
地に転がるリリスが、フウッと小さく息を漏らす。
その吐息から、キラキラと輝きが周囲に広がる。
するとその身体を守るように、草や木が一斉に伸びて覆い尽くし、彼の身体を繭のように包み込んだ。
剣と弓を構え、リリスを守る。
ピュウウ……ヒュウウ……
歌うような、風の音に似た口笛が辺りに響く。
それは低く、高く、ジンジンと空気をゆらすほどの強さで、とうとうコートの中でびくんとリリスの身体が跳ね上がり、引き留めるガーラントの腕を払って立ち上がった。
「この音か!リリス!」
コートがさらりと落ちて、ガーラントがまた頭にかけようと思っても払い落とす。
足を払おうとしても、ビクともしない。
懸命に後ろに引っ張っても、大の男がズルズルともの凄い力で引きずられた。
「さあ、おいで、おいで」
「うるさい!黙れ!」
暗闇の中から声がして、ミランがまた矢を放った。
その矢が、やぶから出てきた手に受け止められ、背の低い男が姿を現す。
「なんだ、あれは!魔物か?!」
男は、どう見ても普通の人間には見えない。
長い黒髪から覗く顔は、獣の顔で鼻先が突き出てハアハアと息も荒くよだれを流している。
ブルースが総毛立つような戦慄を覚え、思わず声を上げた。
「エア姉弟だ!最悪のミスリル!
こいつはレナントで子供3人食ったんだ!こんな所にいやがった!!」
その言葉に、甲高い笑い声が辺りに響く。
男の横に人の女の顔を持つ白い巨大なミュー馬が、ケラケラひどく不快な声で笑いながら現れた。
「ひどいわ、最悪だなんて。
私の歌声はいかが?ああ……そうね、可哀想。
お前達のような汚い男どもに、果たして聞こえるのかしら?ホホホ!
まあオウゥンエア、これは本物よ、正真正銘の巫子。
それもかなり高位だわ!
なんてステキ、これを生きたまま食えば神気がついて精霊になれるわ。」
「本当かい?凄い凄い、食おうよクレディエア、僕はあの綺麗な顔がいい」
「まあオウゥンエア、私にはあの赤い方の目玉をちょうだい。まるで雨に濡れた野いちごのように、つややかな赤い目玉。
とっても甘くて美味しそうだったわ。」
「じゃあ半分こだね、頭は半分こだ!」
ゾッとする会話を楽しそうに交わし、4人に近づいてくる。
「くそっ!止まれ!止まれリリス!目を覚ませ!」
未だうつろな顔で歩みをやめないリリスに、ガーラントとブルースが抱きついて何とか止めようとする。
ミランが矢筒を探り、一つの青い矢を取り出して弓にかけた。
「ブルース殿、どいて!」
「ミラン、何を!」
「ミセル・ラル!汝、仮初めの眠りを与えよ!」
ミランが水色に光る矢をリリスに向ける。
ブルースが反射的に避けた瞬間、ミランの放った矢がリリスの胸を貫いた。
「ぎゃっ!」
声を上げ、リリスがその場に崩れ落ちる。
とっさにガーラントが抱き上げ、目を見開きミランを見た。
「ガーラント殿、矢は抜かないで!」
ミランが、すでに次の矢を弓に継いで呆気にとられる姉弟に狙いを定める。
ミュー馬の姉が、ブルリと身体を震わせた。
「なんと言うことを!神気が消えたわ!なんと言うことを!滅多にない獲物なのに!」
姉のクレディエアが、腹立たしげに毛を逆立て息を吐く。
ガーラントは立ち上がったキュアの背に彼を乗せ、空に逃げるか迷った。
しかし、二人を置いて逃げるわけにはいかない。ミスリル相手では、2対2で普通の人間が敵うわけないからだ。
それは死を意味する。
見捨てるわけにも行かず、剣を抜いてキュアの前に立つ。
オウゥンエアが獣の顔でニイッと笑い、牙を見せてべろりと長い舌で口をなめた。
「死んでてもいいよ、僕は食いたいんだクレディエア。」
「そうね、そうよね、死んでも少しくらい神気があるはずよ。
綺麗な目玉が曇らないうちに食べましょうオウゥンエア。
じゃあ、邪魔な大人は殺しましょうね。」
「逃げないように、鳥も殺してしまおう。」
フッと二人の姿が消えた。
とっさにガーラントがグルクとキュアの前に走った。
きらりと閃光が見え、グルクに剣が迫る。
ギイイィィン
ガーラントが寸ででオウゥンエアを跳ね返し、襲いかかるクレディエアをブルースが剣で追う。
そして口笛を鳴らし、自分のグルクに合図を送った。
「エリザ飛べ!逃げろ!」
ピュイイ!
グルクが飛び立ち、ガーラントもオウゥンエアの剣を受けながらキュアを逃がそうと尻を蹴った。
キュアが驚いて羽ばたき、ふわりと身体が浮き上がる。
「逃すものか。」
オウゥンエアがその小さな身体からは想像できないほどの力で剣を振り下ろす。
いや、あまりに早いその剣に、振り下ろす刃さえ一瞬見えなかった。
しかしその瞬間、鮮やかにキュアの首が断たれ、リリスを乗せたその身体が音を立てて地に横たわる。
背のリリスは矢が刺さったまま地に転げ落ち、その矢が途中で折れて消えた。
「キュアが!」
火に照らされ、首を落とされたキュアから青い火混じりの血が吹き上がる。
地に転がるリリスが、フウッと小さく息を漏らす。
その吐息から、キラキラと輝きが周囲に広がる。
するとその身体を守るように、草や木が一斉に伸びて覆い尽くし、彼の身体を繭のように包み込んだ。
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