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12、本城ルランへ
第120話 火の巫子ヴァルケン
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「ふう……」
リリスが横になり、指にある指輪を見る。
それは幻のリリサレーンの指輪とそして、もう一つの巫子の指輪。
またそれもこの世の物ではない仮初めの物。
目を閉じて、口から火が出そうなあの熱さを、黄泉の国で起こったことを思い返した。
信じられない事だが、あの仮死状態になった数分を、リリスは黄泉の国で体感半年ほど修行してきたのだ。
夢見心地をミランの矢に射貫かれ気がつけば、一緒に死んだキュアが頭をつつき、満天の星の下の暗い川の畔。
ふと見ると、仁王立ちの体格の良いヒゲを蓄えた壮年の男、ヴァルケンが腕を組み怒りの表情で見下ろしていた。
ただ真っ白い服を着た男が誰か想像も付かず、ここはどこでしょうと尋ねてもそれの答えはなく、砂の中に突然現れた尖った砂利の上に正座させられ、ミスリルごときの術にかかるとは何事かと延々修行不足を説教された。
そしてようやく事態を飲み込み、一刻も早く帰ることを望みながら、ヴァルケンの元で火の巫子としての口伝や大切なことをたたき込まれたのだ。
ヴァルケンは王であった名残か気位が高く、気が短いことこの上ない。
そして時間がないこともあったのだろう、会話はほぼ一方的な物で、夜も昼もない世界でひたすら暗唱と知識の詰め込みばかり。
またヴァルケンには忠実なキュアは、リリスの言うことを少しも聞かず、その扱い方を聞くも振り回され馬鹿にされる。
さすがのリリスも忍耐力が品切れを起こし、ヴァルケンに怒って文句をぶつけたところ、なぜか笑って修行の終わりを告げられた。
そしてようやく現世に戻れるその日、リリスはヴァルケンと初めてまともに会話が出来た。
「さて、世が伝えるは以上である。
が、これはお主の指輪を持って完成となる。
だが、未完成であっても我ら火炎の巫子は火の化身、この火は汚れを払い、自ら聖域を作り出す。
しかし、指輪はないよりあった方がよい。お前は指輪を得た時、それが身に染みてわかると思え。」
「あの指輪は一体何なのでしょう。」
ニイッと巫子らしからぬヒゲもじゃの顔が、不気味に笑う。
「あれは火打ち石じゃ。」
「は?」
「あれは普通の宝石ではない。火の神が血の結晶、純粋な火の固まりじゃ。
普通の人間が指を通さば、燃え上がり炭になる。が、我ら火の巫子がつければ我が血に火の神の血が流れ、それは一つになり大いなる力を受ける事となろう。
お前のかたわらにいるキュアは、世がこの指輪より生み出したる火の化身。
指輪と共にあるが本来の姿。だが、今のお主の指輪は幻、これはまだ仮初めの姿ゆえ普通の鳥と変わらぬ。
お前はお前のしもべを得よ、これはもうすぐ消える。当てにしてはならぬ。」
そう言って、ヴァルケンが自分の指輪をはずしてリリスに見せる。
その指輪は確かにリリサレーンの持つ指輪と同じ石が付いているが、かなりデザインは違っていた。
「世の指輪はこの黄泉で名残を結晶した物。
しかし、お前の今つけている幻の指輪よりも火に近いであろう。
ほんの一時でも、必要なときはお前の身体に火をつけるはず。それは火の巫子としての力の転生となる。
さあ、手を出すがよい。お前に火を灯してやろうぞ。」
「は……い」
ヴァルケンが恐る恐る出すリリスの手を取り、大きな手でリリサレーンの指輪に重ねてつける。
「あっ!ああっ!」
その瞬間、リリスは今まで感じたことのないほどに、身体の奥底からちろちろと灯り、どんどん勢いを増して身体が芯から熱く、耐え難いほどに燃え上がってゆく火の存在を感じた。
「あ、熱い!身体が熱い!」
「それでよいのだ!
世の肉体は転生をすでに済ませ、現世と魂を分かちお主がここへ来るのを待っていた。
だがそれも仕舞いじゃ、お主にこの指輪を与え、行く末を見守ったのちに黄泉の川を渡るとしよう。
さあ、行くがよい、そしてまたまみえようぞ、我が血族の子よ。」
「でも!私はまだ指輪を手に入れることができるのかもわからないのです!
私は、命を落とすかもしれ……」
「わっはっは!何を言う!お主の周りを見よ!忠臣を得たお前に敵など恐れるに足りぬ!
我が道を信じて行け!火の巫子の精神は現世に生まれたときより戦いの道を歩むのだ!
怒れ!もっと怒れ!お前は怒りが足りぬ!
そして……
そして、生まれては死する事しかできなかった、お前の先代となるはずだった者達の意志を継ぐのだ。
フレアを……頼むぞ……」
遠くヴァルケンの声が響き、そして、現世に戻ってきた。
ずっと不安だった巫子としての口伝も引き継ぎ、ほんの少し火の巫子に近づけた気がする。
それにしても、なんと重いのだろう。
一旦途切れた神殿の復活は、自分が思っている以上に大変な事なのだ。
しかし今はただ、ひたすら誤解を招かぬよう祈るのみ。
自分は一切王位には興味が無いのだとどうすれば伝わるのか。
「フレア……ゴート様……」
どうか、助けて欲しい、自分を皆の前で巫子だと公言して欲しい。
手を合わせ、ひたすら願いを込める。
その願いがこの国のどこかにいるフレアゴートに届く事を祈りながら、リリスは眠りについた。
リリスが横になり、指にある指輪を見る。
それは幻のリリサレーンの指輪とそして、もう一つの巫子の指輪。
またそれもこの世の物ではない仮初めの物。
目を閉じて、口から火が出そうなあの熱さを、黄泉の国で起こったことを思い返した。
信じられない事だが、あの仮死状態になった数分を、リリスは黄泉の国で体感半年ほど修行してきたのだ。
夢見心地をミランの矢に射貫かれ気がつけば、一緒に死んだキュアが頭をつつき、満天の星の下の暗い川の畔。
ふと見ると、仁王立ちの体格の良いヒゲを蓄えた壮年の男、ヴァルケンが腕を組み怒りの表情で見下ろしていた。
ただ真っ白い服を着た男が誰か想像も付かず、ここはどこでしょうと尋ねてもそれの答えはなく、砂の中に突然現れた尖った砂利の上に正座させられ、ミスリルごときの術にかかるとは何事かと延々修行不足を説教された。
そしてようやく事態を飲み込み、一刻も早く帰ることを望みながら、ヴァルケンの元で火の巫子としての口伝や大切なことをたたき込まれたのだ。
ヴァルケンは王であった名残か気位が高く、気が短いことこの上ない。
そして時間がないこともあったのだろう、会話はほぼ一方的な物で、夜も昼もない世界でひたすら暗唱と知識の詰め込みばかり。
またヴァルケンには忠実なキュアは、リリスの言うことを少しも聞かず、その扱い方を聞くも振り回され馬鹿にされる。
さすがのリリスも忍耐力が品切れを起こし、ヴァルケンに怒って文句をぶつけたところ、なぜか笑って修行の終わりを告げられた。
そしてようやく現世に戻れるその日、リリスはヴァルケンと初めてまともに会話が出来た。
「さて、世が伝えるは以上である。
が、これはお主の指輪を持って完成となる。
だが、未完成であっても我ら火炎の巫子は火の化身、この火は汚れを払い、自ら聖域を作り出す。
しかし、指輪はないよりあった方がよい。お前は指輪を得た時、それが身に染みてわかると思え。」
「あの指輪は一体何なのでしょう。」
ニイッと巫子らしからぬヒゲもじゃの顔が、不気味に笑う。
「あれは火打ち石じゃ。」
「は?」
「あれは普通の宝石ではない。火の神が血の結晶、純粋な火の固まりじゃ。
普通の人間が指を通さば、燃え上がり炭になる。が、我ら火の巫子がつければ我が血に火の神の血が流れ、それは一つになり大いなる力を受ける事となろう。
お前のかたわらにいるキュアは、世がこの指輪より生み出したる火の化身。
指輪と共にあるが本来の姿。だが、今のお主の指輪は幻、これはまだ仮初めの姿ゆえ普通の鳥と変わらぬ。
お前はお前のしもべを得よ、これはもうすぐ消える。当てにしてはならぬ。」
そう言って、ヴァルケンが自分の指輪をはずしてリリスに見せる。
その指輪は確かにリリサレーンの持つ指輪と同じ石が付いているが、かなりデザインは違っていた。
「世の指輪はこの黄泉で名残を結晶した物。
しかし、お前の今つけている幻の指輪よりも火に近いであろう。
ほんの一時でも、必要なときはお前の身体に火をつけるはず。それは火の巫子としての力の転生となる。
さあ、手を出すがよい。お前に火を灯してやろうぞ。」
「は……い」
ヴァルケンが恐る恐る出すリリスの手を取り、大きな手でリリサレーンの指輪に重ねてつける。
「あっ!ああっ!」
その瞬間、リリスは今まで感じたことのないほどに、身体の奥底からちろちろと灯り、どんどん勢いを増して身体が芯から熱く、耐え難いほどに燃え上がってゆく火の存在を感じた。
「あ、熱い!身体が熱い!」
「それでよいのだ!
世の肉体は転生をすでに済ませ、現世と魂を分かちお主がここへ来るのを待っていた。
だがそれも仕舞いじゃ、お主にこの指輪を与え、行く末を見守ったのちに黄泉の川を渡るとしよう。
さあ、行くがよい、そしてまたまみえようぞ、我が血族の子よ。」
「でも!私はまだ指輪を手に入れることができるのかもわからないのです!
私は、命を落とすかもしれ……」
「わっはっは!何を言う!お主の周りを見よ!忠臣を得たお前に敵など恐れるに足りぬ!
我が道を信じて行け!火の巫子の精神は現世に生まれたときより戦いの道を歩むのだ!
怒れ!もっと怒れ!お前は怒りが足りぬ!
そして……
そして、生まれては死する事しかできなかった、お前の先代となるはずだった者達の意志を継ぐのだ。
フレアを……頼むぞ……」
遠くヴァルケンの声が響き、そして、現世に戻ってきた。
ずっと不安だった巫子としての口伝も引き継ぎ、ほんの少し火の巫子に近づけた気がする。
それにしても、なんと重いのだろう。
一旦途切れた神殿の復活は、自分が思っている以上に大変な事なのだ。
しかし今はただ、ひたすら誤解を招かぬよう祈るのみ。
自分は一切王位には興味が無いのだとどうすれば伝わるのか。
「フレア……ゴート様……」
どうか、助けて欲しい、自分を皆の前で巫子だと公言して欲しい。
手を合わせ、ひたすら願いを込める。
その願いがこの国のどこかにいるフレアゴートに届く事を祈りながら、リリスは眠りについた。
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