赤い髪のリリス 戦いの風

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12、本城ルランへ

第121話 守る者、守られる者

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数時間仮眠を取り、少し頭がはっきりした所で出発して本城に向かう。
何度か休みを取り、順調に飛行を続けた。
そろそろ最後のポイントとなる小高い丘の、大きな3本の木が右手に見えてくるはずだ。
青い空には鳥が数十羽群れをなし、遠くを優雅に飛んでゆく。
少し風が吹き、ヒヤリとした冷たい空気と雲を運んできた。

「ブルース殿、天気が……」

ミランが心配して空を仰ぐ。

「いや、あの雲の色なら今日中は大丈夫だろう。
もし降り始めたら、下りて休むしかないな。」

チラリと離れた所を飛ぶリリスの姿を見る。
リリスはこちらを向いて、手を上げた。

「お天気ならまだ大丈夫ですよ!」

叫ぶように返す彼に、苦笑してミランが手を上げて答えた。
こっちを見ていたんだろうか。それにしても……

「ブルース殿、私は時々リリス殿の勘の良さにビックリしますよ。何も言ってないのに、ちゃんと天気の話だってわかるんですから。」

ミランがブルースに、ぼそりと呟く。

「あいつはきっと、悪口も全部聞こえてるぜ。」

ブルースが笑って、全くだとうなずいた。
そして、ふとブルースが横を向く。
ミランが身を乗り出し、耳をそばだてた。

「なあ、ミランよ。どうも正面からってのはマズイと思わねえか?」

「と、言いますと?」

「どうも、なあ。
巫子ってだけじゃないような気がするんだ。
ここまで手の込んだことをされるってのはよ。」

「他に帰られては困る理由が?」

「そうだな、あの子が高い地位に上がると困る輩がいるんだろうな。」

「それは…………ブルース殿、あの鳥おかしいと思いませんか?」

ミランの指さす方から、先ほど見た鳥の群れが列を乱し、狂ったように飛び交いながらこちらへ一斉に向かってくる。

「まずい!こっちに来るぞ!」

ブルースが前に出て、ガーラントに合図する。
二人はグルクのスピードを上げて、追いつく鳥を振り切ろうと高度を下げ、森の木々ギリギリを飛んだ。
振り向くと、見るからに正気ではない鳥が高速で追いかけてくる。
その中の数羽が高い木に引っかかって落ちるが、やはり逃げ切れる物ではない。

「ブルース殿!」

「喋るな、舌をかむ!」

次第に間は狭まり、後ろを飛ぶブルースの背にいるミランに鳥が追いついてぶつかってきた。

「ガーラント様、私の魔導は印を組んだ方が効果的なのです!どうかスピードを落として!」

「駄目だ、術者から離れたら鳥も正気に戻るはず!
今、一人離れるのはまずい、術を唱える間は無防備であろう!状況がわからぬうちは勝手をするな!」

リリスが唇をかみ、鞍につけた命綱をチラリと見る。そしてガーラントの腰から手を離して印をくんだ。
身体がふわりと浮いて、思わず驚いたガーラントが片手で足を掴む。

「馬鹿野郎!」

「惑いし鳥よ!風の力を持って邪な術を払い我が身を取り戻せ!リム・ラ・ファーン・ラナス!
鳥を惑わせし者よ、世を乱すは聖地を乱す者なり、リム・ラ・ファーンセラフ!
風よ!惑わせる者を捕縛し、我が前より消せ!」

びょうと風が大きく鳴り、鳥たちを巻き込んで渦を巻き離れてゆく。
そして遠くでは術者なのか、人が一人手足をばたつかせながら、どこかに遠くへ吹き飛ばされて行くのが見えた。

「馬鹿者!お前が命をかけてどうする!」

「だって!わっ!!命綱をはずします、私には風が付いてますから!」

「駄目だ!ゆるさん!下りるぞ!」

リリスの身体がキュアの背に戻れず、風圧で舞う。
命綱は端にベルトで腰を繋ぐのだが、大人用でリリスは腰が細い分、余剰分が長い。
風圧であおられ身体が逆さまになり、風の精霊達も彼の力になれず困惑していた。

「この……俺の身体をどこか掴め!」

「やってます!」

手を伸ばし、懸命にガーラントの服を掴む。
必死に身体を引き寄せ、彼のベルトを何とか掴むが腕力が足りない。
掴むだけで精一杯だ。
ガーラントが引き寄せてくれるので、彼の力を借りて彼の腰に手を回す。

ガーラントもリリスを何とか片手で抱き込んで、キュアを操り森へと下りていく。
そして無事地上に降りると、あとからブルースたちも降りてきた。

「ああ、良かった。あれだけの大群に襲われては地に落ちていたかも。リリス殿、助かりました。」

背中をつつかれていたミランが、グルクを降りて一息つく。
頭もつつかれて少しケガをしたけれど、血がにじむくらいで助かった。

「あれ?ベルトが絡まって……」

なかなかグルクから離れずにいるリリスのベルトを見ると、グルグル巻いて外せないでいる。
ガーラントが無言でキュアを降り、はずれず困っているリリスの命綱をはずしてやると、思わず彼の頬を打った。
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