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13、望まれない帰還
第127話 青い部屋
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青く揺れる火に照らされ、部屋の中がまるで水中のように冷たく、青く揺らめく。
トランの美しい白亜の城の一角には、魔導師の塔とは別にリューズの部屋が設けてある。
彼は魔導師らしからぬ、部屋の方角も地面からの距離も関係なく、ただ湖が見渡せる見晴らしのいい一角を自分の部屋に決めて使っていた。
彼が使う火は青く輝き、熱も無く、ただ見ていると吸い込まれるように落ち着いてくる。
不思議な炎はいっそう彼の神秘性をあおり、王の覚えを高くしていた。
痩せて華奢な手を、部屋の中央にある大きなカメの中の青い火にかざした白いローブの青年が、ゆっくり顔を上げる。
息をついて横に浮いた自分の杖を持ち、杖の先端に付いた水晶の結晶を撫でた。
「リューズ様、こちらに向かっております地の巫子一行はいかがいたしましょう。」
まるでトカゲのような顔をした側近が一人、頭を下げて伺いをたてる。
白いローブに身を包んでいるが、背は丸く身長も低い。
「セレスは厄介な相手だ、お前達には太刀打ちできぬ。放って置くがよい。
上手く利用すれば、それをきっかけにアトラーナに攻め込む理由ともなろう。」
「は。
それと、右のゼルと左のローが、明日の夜にもレナントの城を落として良いかと申しておりますが。
メイス様を取り戻しに馳せ参じましょうと国境に控えております。
今ならレナントには2番目の地の巫子が一人でございますゆえ。容易いことでございましょう。」
「メイスか……」
杖の水晶には、カナンと楽しげに食事をするメイスの姿が映っている。
リューズは愛おしそうにその姿をなで、目を細めた。
久しく、このような微笑みなど見なかった……
しばし休息するも良かろう、敵中なれば使いようもある。
「良い、捨て置け。」
「その……メイス様の件ですが。
愚かな小枝がメイス様を乗っ取ろうとして暴走した折りに、地の巫子によってメイス様に封印されていたキュアが解放されたようでございます。」
「そうか……あれは小枝ゆえ致し方あるまい。
火の巫子が力を得ねばキュアは大した戦力ではない、普通の鳥よ。
皆に伝えよ、リューズが告げる。
すべての枝は待機せよ。
アトラーナの王が我が愛し子の願いを聞き入れ、火の巫子と火の神殿の再興を果たすのかしばし見守ることとする。」
「承知しました。」
城にいる白い魔導師すべてが、リューズのいる方角へ頭を下げた。
側近が丸い目を細め、頭を下げ部屋を出る。
「小枝め、余計なことを。
リューズ様のためにもメイス様を取り戻さねば……」
側近が部屋を出たあと、リューズは一人になって目を閉じ、自分の手を見る。
「この手……人間の、手……か……
この違和感はなんだ……?ああ、何かが、何か忘れているような……」
眉をひそめ、王城の王子を写していた杖の水晶に、今度はリリスを映した。
そこには、明るい表情の中に時折暗い影を落とすリリスの顔がぼんやりと写っているが、時折揺らめいてはっきり写らない。
王城の結界が強く、1度王子を写すと干渉して揺らぎがひどく、水晶が安定しない。
「今度の長はルークと言ったか、侮れぬ。」
ゲールが長を務めている時は結界がザルのように抜けていたのに、最近は長がルークに変わって良い魔導師を連れてきたのだろう。
結界の質が上がり抜け目がない。
メイスは本来巫子だけに、結界の中に彼がいれば結界などあって無いような物だった。
それを上手く利用していたのだ。
だが、メイスはもう城にいない。
『私との契約は遂行して貰うぞ』
ふと、ゼブリスルーンレイアの声が浮かび、顔の半分を覆う仮面を指で撫で、クッと笑った。
「そうだったな。いざという時に、一つ穴を開ければよいのだ。
キアナルーサの側近の小僧よ、時が来ればお前の身体利用させて貰う。
我が力は思う存分使えばよい、だが、私にはそなたの身体を捧げよ。
裏切ることは許さぬ。
その命を賭しても私との契約は遂行して貰うぞ。」
部屋にあるすべての炎が、青く燃え上がる。
しばし考え、手を差し出してその手の中に青い炎の鳥を生み出すと、その鳥は水晶に向かって吸い込まれるように飛んでゆく。
「見えなければ、見に行く。塔が崩れた今、あの方も解放されたに違いない。
この言いようのない迷いを打ち晴らして頂かねば……」
リューズは長いすに腰を下ろして杖に身を任せ目を閉じ、鳥に同期して城の中を見に行く。
彼は何度もそうやって距離は関係なくアトラーナの王城の様子を見ている。
そして、ゼブラとの交信を試み、操っていた。
トランの美しい白亜の城の一角には、魔導師の塔とは別にリューズの部屋が設けてある。
彼は魔導師らしからぬ、部屋の方角も地面からの距離も関係なく、ただ湖が見渡せる見晴らしのいい一角を自分の部屋に決めて使っていた。
彼が使う火は青く輝き、熱も無く、ただ見ていると吸い込まれるように落ち着いてくる。
不思議な炎はいっそう彼の神秘性をあおり、王の覚えを高くしていた。
痩せて華奢な手を、部屋の中央にある大きなカメの中の青い火にかざした白いローブの青年が、ゆっくり顔を上げる。
息をついて横に浮いた自分の杖を持ち、杖の先端に付いた水晶の結晶を撫でた。
「リューズ様、こちらに向かっております地の巫子一行はいかがいたしましょう。」
まるでトカゲのような顔をした側近が一人、頭を下げて伺いをたてる。
白いローブに身を包んでいるが、背は丸く身長も低い。
「セレスは厄介な相手だ、お前達には太刀打ちできぬ。放って置くがよい。
上手く利用すれば、それをきっかけにアトラーナに攻め込む理由ともなろう。」
「は。
それと、右のゼルと左のローが、明日の夜にもレナントの城を落として良いかと申しておりますが。
メイス様を取り戻しに馳せ参じましょうと国境に控えております。
今ならレナントには2番目の地の巫子が一人でございますゆえ。容易いことでございましょう。」
「メイスか……」
杖の水晶には、カナンと楽しげに食事をするメイスの姿が映っている。
リューズは愛おしそうにその姿をなで、目を細めた。
久しく、このような微笑みなど見なかった……
しばし休息するも良かろう、敵中なれば使いようもある。
「良い、捨て置け。」
「その……メイス様の件ですが。
愚かな小枝がメイス様を乗っ取ろうとして暴走した折りに、地の巫子によってメイス様に封印されていたキュアが解放されたようでございます。」
「そうか……あれは小枝ゆえ致し方あるまい。
火の巫子が力を得ねばキュアは大した戦力ではない、普通の鳥よ。
皆に伝えよ、リューズが告げる。
すべての枝は待機せよ。
アトラーナの王が我が愛し子の願いを聞き入れ、火の巫子と火の神殿の再興を果たすのかしばし見守ることとする。」
「承知しました。」
城にいる白い魔導師すべてが、リューズのいる方角へ頭を下げた。
側近が丸い目を細め、頭を下げ部屋を出る。
「小枝め、余計なことを。
リューズ様のためにもメイス様を取り戻さねば……」
側近が部屋を出たあと、リューズは一人になって目を閉じ、自分の手を見る。
「この手……人間の、手……か……
この違和感はなんだ……?ああ、何かが、何か忘れているような……」
眉をひそめ、王城の王子を写していた杖の水晶に、今度はリリスを映した。
そこには、明るい表情の中に時折暗い影を落とすリリスの顔がぼんやりと写っているが、時折揺らめいてはっきり写らない。
王城の結界が強く、1度王子を写すと干渉して揺らぎがひどく、水晶が安定しない。
「今度の長はルークと言ったか、侮れぬ。」
ゲールが長を務めている時は結界がザルのように抜けていたのに、最近は長がルークに変わって良い魔導師を連れてきたのだろう。
結界の質が上がり抜け目がない。
メイスは本来巫子だけに、結界の中に彼がいれば結界などあって無いような物だった。
それを上手く利用していたのだ。
だが、メイスはもう城にいない。
『私との契約は遂行して貰うぞ』
ふと、ゼブリスルーンレイアの声が浮かび、顔の半分を覆う仮面を指で撫で、クッと笑った。
「そうだったな。いざという時に、一つ穴を開ければよいのだ。
キアナルーサの側近の小僧よ、時が来ればお前の身体利用させて貰う。
我が力は思う存分使えばよい、だが、私にはそなたの身体を捧げよ。
裏切ることは許さぬ。
その命を賭しても私との契約は遂行して貰うぞ。」
部屋にあるすべての炎が、青く燃え上がる。
しばし考え、手を差し出してその手の中に青い炎の鳥を生み出すと、その鳥は水晶に向かって吸い込まれるように飛んでゆく。
「見えなければ、見に行く。塔が崩れた今、あの方も解放されたに違いない。
この言いようのない迷いを打ち晴らして頂かねば……」
リューズは長いすに腰を下ろして杖に身を任せ目を閉じ、鳥に同期して城の中を見に行く。
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