速達配達人 ポストアタッカー 新1 〜ポストアタッカー狩り〜

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第3話 馬は普通喋らねえよ

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「暇つぶしにもなりゃしねえなあ」

標識を見つけて馬を止める。
標識は明後日を向いて、どっちがどこかわかったもんじゃ無い。
地図を広げて、街で買った簡易GPS測定器で現在地を探る。
GPSのスイッチを入れるのは地図を広げるときだけだ。
緯度経度がわかればそれでいい。
サトミはため息をつき、そしてコンパスを取りだし丸で囲った目的地に向けて方角を確認した。

「もう少しだなー、ん?」

少し北で、煙が上がっている。
赤い煙は、救助を要請する煙だ。

「向こうも強盗か……」

つぶやき、少し考える。

「戦争は……終わったはずなのに……
この荒野渡るのは、普通の奴らには命がけなんだな……」

ピシリと手綱をうち、馬を北へ向かわせた。
やがて煙の上がる下には、乗合馬車の姿が見える。
タチの悪い強盗か、馬車の乗客を追い剥ぎ、銃声がひびいては逃げる人々が倒れていた。

「くそったれ、遅かったか。」

サトミに気がつき、盗賊の二人がこちらに向かってくる。
サトミは背の刀を抜いて、馬のスピードを上げた。

銃声が数発ひびく。
サトミが風を切り、刀をナナメに振り上げる。
鋭い金属音がして、銃弾が火花を散らしはじかれた。

見る間に二人が迫ってくる。
撃ってくる弾を切り捨て、二人の間を駆け抜けながら瞬時に二人を切り裂いた。
二人は声も上げず馬に突っ伏し落馬する。
サトミはそのまま盗賊団へと突入し、馬から飛び降り次々と殲滅して行った。

「何だ貴様あ!」

「ただのガキ」

弾はさっぱり当たらず、仲間が次々倒されて行く。
斬り殺される恐怖に、逃げる奴までで出した。

ヒヒヒーーーーン!

興奮した馬がおびえ、流れ弾に当たって倒れた。
見ると、さっきまで乗っていた自分の馬だ。

「マジかよ、運悪りぃ!くそー!」

サトミが舌打ち、残った夫婦に刀を向ける。
こうなったら仕方ない、馬を頂くしかない。

「その馬よこせ……って、なんだよ、すっげえちっせぇ馬!」

それは盗賊の首領か、小さな不格好な馬の上に窮屈そうに夫婦二人で乗り、手下に最後まで指図していた男だ。
向けられた刃にすくみ上がり、手を挙げながら馬に足で必死に合図している。
しかし馬は妙に表情豊かにサトミをながめ、微動だにしない。
やがて男は後ろの妻と共に馬から転げ落ち、荒野を這々の体で逃げ出していった。

「くそ、使えそうにねえなー、こっから歩きかよ。ちぇっ
ま、いっか、たまには運動しなきゃ身体がなまる。
あー、これじゃ誰も生きてねえな。」

サトミがポケットから小さく切った新聞紙を出して刀についた血糊をふき、背のさやにもどす。
振り返り馬車を見ても、すでに生き物の気配はない。
馬車を出て撃ち殺された少女の手から転げ落ちたぬいぐるみを拾い上げ、少女の手に抱かせた。

「ごめんな、もう少し早く通れば良かった」

馬車の中の通信機は、エマージェンシーランプが付いている。

『……状況は?!おい!大丈夫か?!』

乗合馬車の本部からか、通信機が心配してずっと叫んでいる。
サトミが通信ボタンを押した。

「通りがかりの者だ。
盗賊は追い払ったが、生存者はいなかった。残念だ。」

『そ、そうか………駄目だったか……
ポリスがそちらに向かっている、申し訳ないが立ち会えますか?』

「いや、先を急ぐので、すまない。」

『いや、通信ありがとうございます。助けて頂いて感謝します。』

助けられなかったのに、感謝されて複雑な思いで通信を切る。
中に発煙筒があったので、それを使って馬車の脇に置いた。

「さて、俺も被害は甚大だ……」

辺りを見回して、サトミが馬を見に行き首を振ってため息をつく。
見事に頭を撃ち抜かれ、すでに事切れている。
ずいぶん世話になった馬だが、運が悪い。

「しょうがねえ、まあのんびり行くか。次の町に行ったら乗合馬車探すか」

馬から荷物を降ろし背負うと、荒野を歩き始めた。

「おい」

突然、声が聞こえた。
振り向いても、みんな死んでいる。
サトミにも、人の気配を感じない。
鼻の頭をポリポリかいて、また数歩進む。

「おい」

間違いなく声をかけられ、ドサリと荷物を落として背の刀に手を回し振り向いた。

「ひどい奴、殺す気か。」

フンッと鼻息荒い、あの盗賊夫婦の乗っていた小さな馬がそこに一頭。
サトミが呆然と立ちつくす。

「お前、しゃべった?」

「他に誰がいる。みんな殺したくせに。」

「殺したのは半分……って、お前馬だろ?いや、ポニーか?え?ロバ?」

「馬だ。」

「馬が何で喋るよ?」

「お前はなんで喋るんだ。」

「そりゃあ……人間だし。」

「なら人間だ。」

「イヤ、お前どう見ても馬だろ。」

ふんっ、馬が鼻息をサトミの顔に吹きかける。

「不愉快。失礼しました御主人様といえ。」

青臭い息に前髪がフワリと舞って、サトミが大きくため息をついた。

「そりゃあ……悪かったな、御主人様。」

馬がどういうワケかニヤリとほくそ笑み、エヘンと顔を上げた。

「良し、今度からビッグベン様と呼べ。」

「ビッグベン?そりゃあむか~しどこかの国にあった、でっかい時計の名前じゃネエの?」

「しらん。」

ビッグベンが、サトミが落とした荷物をくわえ、ポイと後ろに放って背中に乗せる。

「あれ、俺を乗せてくれるんだ。」

「そこにある物は利用しろ、とソクラテスは言った。」

「言わねえだろ、ソクラテスって誰だよ。」

「立ってる奴は、親でも使えと聖書にある。」

「ねえよ。聖書っての見たことねえけど。」

サトミが荷物を載せて、ベンの背に乗った。
小柄のサトミには、小さい馬はジャストフィットで結構乗りやすい。

「へえ、俺には丁度いいかもな。」

「チビだから。」

「お前が言うなよ。」

プッと吹き出し笑った。
人に言われるとムッとする言葉だが、小さな馬に言われても腹も立たない。

「まあ、チビ同士で舐められて、強盗の標的で暇つぶしに丁度いいか。」

「どこ行く?」

「ロンドだ。この荒野を抜けて、一つ町を越えたその向こう。」

「付き合ってやる。」

「よろしく、ビッグベン。俺の名はサトミ・ブラッドリーだ。」

「お前はどうでもいい。」

「ああ、そうですか。変な奴。」

こうしてサトミは、ベンと出会い故郷ロンドへと向かった。
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