速達配達人 ポストアタッカー 新1 〜ポストアタッカー狩り〜

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第25話 殺しのない、普通の世界を勉強する

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うわーー、ヤバい!
今まで怒る方だったのに、怒られんのオヤジ以来じゃん。
ドキドキする。
何か新鮮だなー、いや、喜んでどうする。
つか、マジでまずいだろ。いや、めっちゃマズイと思う。
部下が指示破って勝手な行動したんだ、俺だったら峰打ち骨折確定だろ。
どうなんだろ、下界は殴られるのか?うーん、楽しみだ。
いやいや、違うぞ、俺。
あーーー、2日目なのに。そう!まだ2日目だぞ?すげえマズい。
昨日なんて言われたっけ。

そうっとドア開けて、チラリと見ると、思い切りガイドのおっさんがにらみ付けている。
目をそらすか、にらみ合うか、迷いに迷って目をそらした。

「さっさと入れ!」

命令されると、ちょっとムカつく。
中に入ると、バンッとドアを閉めた。

「なんだよ。」

「座れ!俺が何言いたいかわかってるだろう?」

「んー、ちょっとだけ」

「ちょっとだけだあ??この野郎、俺は手を出すなと言ったはずだ!」

「あの状況で出さなかったら死ぬだろ、あいつら。
黙って見てろって??」

「それは、 お前のようなガキが出る幕じゃないって言ってんだ!」

機関銃のようなやりとりのあと、ガイドが頭を抱えた。
あーマズいだろ、下界は暮らしにくい。
のんびり家で畑仕事でもしてりゃ良かった。

サトミがどうしようもなく、ポケットからあめ玉取りだし、口に放り込む。
俺はひとまず今、落ち着くのが仕事だ。そのためには砂糖だ。
ガリガリ食ってると、頭抱えていたガイドがパッと顔を上げた。

「この野郎、アメばっか食いやがって、何だその態度は!俺達舐めるのもいい加減にしろ!
ウソばかり言いやがって、やり合いたかっただけだろうが!」

 ああ、   うん、それはあり得る。
確かに俺は、強盗とかち合うのワクワクしてた。
うん、やっぱバレたか。

サトミが目をそらし、苦い顔でそっぽ向く。
ガイドが大きくため息を付いた。

「それ見ろ、やっぱりそうだろうが。まったく話にならない。
ああ、まったく、お前は心配してた通りの奴だ。
機関銃の弾、一発当たればどうなるかは、お前さんがよく知っているはずだろ?
自分で言ったじゃないか、オーバースペックだと。」

「それは、当たればね。」

「怖くないのか?!当たるのが!」

「すまない、俺は怖くない。」

「 なんて……こった 」 呆れて、ダンクとガイドが顔を合わせる。
ガイドが、ため息をついてがっくりとソファに座った。

「ダンクよ、俺のキャパ超えてる。理解不能だ、どうしたらいい?」

ガイドがギブアップした。
俺のスペックはだいたい初対面には理解不能だ。
まあ、なんでか知らねえけど、宇宙人に出会ったような物らしい。
ダンクがサトミの腕を掴み、肩に手を回した。
おお、言い合いの最中で、こんな馴れ馴れしさは軍じゃなかった、なんかビックリする。

「なあ、サトミの能力が高いのはわかるよ。
でも、俺たちはお前が心配だ。
今までは軍がバックに居て不安はなかっただろうけど、今はお前の後ろを守る奴はいないんだ。
俺は、見習い期間終わったらいないんだぜ?一人で対処しなきゃなんない。」

「わかってる、心配するなとは言わない。
でも、心配は無用だ。どう言えばいいのかわからないけど、俺は、そうやってきたんだ。」

皆、言葉を失う。
ガイドたちはその時、サトミが軍でひどい状況に置かれていたのだと察して同情していた。
俺達がこいつに普通の生活を取り戻してやりたいと思う。
ガイドはそうやって、リッターもダンクも救ってきたのだ。
サトミはそんな事考えも付かず、あめ玉をまた口に放り込み、彼らの渋い表情を眺める。
いきなりダンクが、バンッとサトミの背を叩いた。

「よし!俺がしばらく付き合う!
ガイド、いいな、こいつの独り立ちの期限、一週間伸ばしてくれ。」

アタッカーの仕事で、一番難しいのは戸別配達だ。
それは一般郵便も合わせてみんなでサポートするとして、普通デリー行きと3局周りがアタッカーとしての重要な仕事なので、独り立ちは早い。
道さえわかれば、翌日からでも出来る。
だが、それを一週間延ばすのだ。

「こいつはスキルはあるけど、1人が心配だ。
閉鎖されたところに長く居たんだから仕方ない、一人でもやっていけるだろうけど、今はきっとただ死体を増やすだけだと思う。
でも、ここは郵便局だ、もう軍じゃ無い。
外の世界に慣れるまで、これはリハビリ期間だ。オッケー?」

ガイドがわかったと手を上げた。

「わかった、その方が安心できる。
俺はもう、あんな物見たくないんだ。笑って仕事したい。それはリッターも同じだ。
いいか?良く聞けよ?
俺らはお前をまだ信用出来ない。
わかるか?信用だ、とにかく!普通の生活を取り戻して、普通の生活に慣れるんだ。」

普通、普通って、普通ってなんだよ。
俺が思ってる普通は……えー、なんだっけ?
なんかずいぶん下界と離れすぎてて良くわかんねえようになってきたぞ。
とにかく、殺しだけは駄目だって事だ。

「うーん、わかっているつもりだったけど、なんかよく、わからない。でも、何とかする。」

まあ、そうだよな、軍で友達って言うと、あの『ジン』ぐらいしか思い浮かばねえ。
ジンだぞ?ネコでも避けて通るような奴だ。
確かに、俺は普通からちょっと遠い。

ロンドでは殺しは御法度だ。
実は今んとこ、そのくらいしかわかってない。
家族がいないのは、だから余計不安なんだと思う。


バンッと背を叩かれた。
何年もそんな事忘れていたから、叩かれるとビクッとする。
まあ、俺叩く命知らずはいなかったし。

「よし!サトミ、この俺と10日の付き合いだ、よろしくな。」

ダンクが手を差し出す。
サトミはどうしていいかわからず手を出すと、グッと握られた。
その、力強さが、気持ち良かった。
ダンクの笑い顔に、笑って返せる。
俺は今、きっとダンクに借りが出来た。それはいつか、きっと返せると思う。

「よろしく、先輩。」

「おう、面倒見てヤンよ」

こうして、鉄砲玉のサトミを心配して、結局次の1週間も見習い期間でダンクと同行することになった。
ダンクは気さくな青年で、若いのに涙もろい。
彼とは以外と気が合って、いい友達になって行った。
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