速達配達人 ポストアタッカー 新1 〜ポストアタッカー狩り〜

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第27話 ダンクとほのぼの仲良しする

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「おーい、新入りのお兄ちゃん、速達だろ?頼めるかい?」

「オッケー、そっち行きます!ほら、サトミ行ってこい。」

「わかった。わからん時は呼ぶ。」

配達終わって戻ってると、路上で果物売ってるおっちゃんに呼び止められた。
受付もするとか、伝票に書くこと多くて俺は死ぬ。
スペルがわからんので、テキトーに写す。

「お兄ちゃん、最近町で話題だよ。可愛い子が入ってるってさ。
爺さん婆さんたち、孫みたいってウキウキしてたぜ?はっはっは」

「ははっ」可愛いは余計だろ。
金と引き換えにもらった伝票見て、おっちゃんが派手に眉を動かした。

「んーー??字がテキトーだねえ。読めてないだろ。」

「あー、すいません、勉強します。」

「戦後だからね。そんな事もあるさ、頑張りな。
ほら、リンゴ食いなよ、お仲間にも1個。」

「ありがとうございます、じゃあお預かりします。」

読めてないのバレた。
クソ、これだ。これだけは生活する上で困ってる。
俺は点字だと読める。だが、俺の脳みそはいまだその点字と文字の共通化が成されてない。
それもこれも、勉強する暇が無いせいだった。
と言うか、軍じゃ全部耳からの情報で、勉強させない感じだった。
しかし、今更勉強はかったるい。

「どうだった?やり方わかった?」

リンゴ1個口にくわえ、ダンクにもう1個のリンゴ渡す。

「えーー、今度はリンゴかよ!!何で?なんでお前にはみんな甘いんだよ!」

「いいから黙って食えよ。はー」

「どうした?何かあった?」

「んー、字が読めないのはなあ。どうにも今更勉強する気にもなれないし。」

「今更って、お前まだ15じゃん。教会行けよ、何でも教えてくれるぜ?」

教会って、俺にはもっっとも遠い存在じゃん。
やだなー今更アーメンとか言いたくねえし。

「そう言えばさ、ダンクとガイドのオッサンは盗られたことあるの?」

急にダンクが渋い顔になった。
思い出したくも無いんだろう。

「なんで聞くんだよ、言いたくねえ、言いたくねえんだ、俺の黒歴史だろ?!
く、く、く、クソ……」

「は?聞きてえなあ!あー聞きてえ!先輩、ぜひ失敗談もヨロしく!」

ダンクが悶絶して黙り込む。
無言で待って、プレッシャーで押した。

「……ンコしてたら取られちゃった。」

「はあっ?」

「ウンコ!!!してたら!郵便取られた!!」

ブフッと、向かいから歩いてくるおばさんたちが吹きだした。

「し、しまった。」

ダンクが慌てて通り過ぎたおばさんの方を振り向く。
「ちょっとちょっと、」おばさんは、手近の人を捕まえて耳打ちしている。

「はあああああ!!しまったーーーっ!」

いきなりダンクが馬を軽く走らせた。
サトミが追いつき並んで走り、やがて商店街を抜けて住宅街に出る。
郵便局は、住宅街を抜けた所だ。
利便性が悪いと思うけど、戦前は郵便局の周りも商店があって賑わっていたらしい。
町を離れて郊外にある。
それでも、昼飯にここまで来る奴もいるらしい。
サトミの家は商店街の裏手なので、昼飯はパン持って行ったりここまで食いに来たりしている。
行ったり来たりの道だ。

「どしたの?」

「くっそおおお!!ロンドのおばちゃん連合にバレた!」

「なにそれ?」

「馬鹿野郎!国境の町は横の連携が早いんだ。俺の噂なんてあっという間に広がっちまう。
俺にはきっと、明日からあだ名が付く!きっとうんこアタッカーって呼ばれるんだーー!!」

「へえ、面白いなー、それでみんな俺が入ったこと知ってるんだ。」

「あなどるなよ、悪い噂も一気に広まるんだぜ?
まあ、細かいことにはうるさくないけど、戦中みんなが情報を欲しがった名残さ。
昼飯、決めてなかったらバーガー屋に行こうぜ」

「バーガー?そう!それ!俺食った事無いんだ、そのバーガーって奴。
人に聞いた事はあるんだけど、一度食ってみてえ!」

「マジかよお前、いったいどんな生活してんだよ?
軍だって休暇あったろ?外も出なかったのかよ。」

「そうだなあ……
まあ、そう言う奴もいるってことさ。」

自由時間なんてさ、外に出る時は監視付きだ。
監視殺して逃げてもいいけど、自分の意思で殺しやる事だけはしたくない。
外に友達を作らないように、周りから人はことごとく排除される。
一人になれる時間は無いし、お菓子買いたくても自由に行動も出来ない。
周りには王様呼ばわりされていやな気分だったし、ほどほどの立ち位置になると忙しさもあって自分のことで外に出ることは無くなった。
それはジンも同じなんで、我慢出来た気がする。

「まあさ、エジソンもそんな感じだったよな。
バーガーって言葉も知らなかったからな。
あいつコーラを初めて飲んで、ゲップでゲロッたんだぜ?マジ信じらんねえ~。」

「コーラか……コーラは昔飲んだ事あるなあ。
軍の食事は決まったメニューのローテーションだからさ、その中でなんかちょっぴり楽しみ見つけなきゃ、やってられねえ訳よ。
俺は水曜日のクソ不味いポテサラだけが楽しみだった、あれにちょっとソース落として食うんだ。
水曜日、バッドでラッキーな水曜日……」

家でジャガお湯で煮て、町で買ったマヨネーズにゅるにゅるして混ぜたけど、あの味が出ない。
下界のマヨは美味すぎる。
あの一体何が入ってんのかわからない、変な薬品の臭いがするゲロマズマヨネーズがまた食いたい。

「やっぱ軍は、寂しい食生活だよなあ。
俺も犬のエサ以下だったし。
サトミ~、バーガーおごるぜ。好きなだけ食え。」

「やった!サンキュー!」

やっぱりなあ、通りでシロイ亭のメシが高級料理に思えたはずだ。
こんな町で高級料理なんてあるはずもねえ。
つまり、戦時中の食事なんて、軍は大所帯養う金は最低限で最悪だったって事だ。
まあ、俺はそんなところで成長期の4年いて、そんなところから退職金に口止め料までもぎ取ったわけだからラストで逆転ホームランという訳か。


2人、馬に乗ってバーガー屋に向かう。

「ここー、ここだぜ、こんちわー!」

「あらダンク、ごきげんよう!あれ?その子、もしかして噂の新人さん?」

店先にいたエプロン姿の女性がかぶっていたキャップを取って笑った。
サトミが馬から下りて、キッチンカーのボディに貼ってあるメニューを見る。
何がどう言うものか全然わからない。
馬から下りてきたダンクが、彼女に笑って返した。

「噂になってんの?アハハ!マジ?」

「なんか可愛い子が帰って来てるって、えーと、サトミちゃん?」

「マジ?俺の名前まで知ってんの?」

「だって、近所だってよ?パン屋のミセスマリー、嬉しそうだったわよ?
ちっとも変わって無くてうれしいって。」

「何だあのババアか。チェッ、ガキん時から知ってるんだ。
ミセスになったくせにミスマリーって名前の店だから、詐欺じゃんって言ったらトレーで殴られた。」

「やだあ!アハハハ!今日は何?お昼ご飯?」

中の厨房では、なんか焼いてていい香りがする。
ダンクがメニューを指さして、お勧めの名前を言うけど、パンに何かが挟まっている絵と文字でさっぱりだ。

「やっぱ迷うよなー。ミセス・ピア、お勧めは何?」

「テリヤキバーガーね、うちはショーユ仕入れてるから本格的なソースちゃんと作ってんのよ!」

「ショーユ?!ショーユ味なの?!俺、それにする!きっとお母ちゃんの味だ。
それ2個にする!」

「ああ、サトミちゃん日系なんだ。ショーユ知ってる人少ないんだよね。」

「お母ちゃんが日系で、オヤジは知らねえや、謎の人だから。」

オヤジの素性なんか、アンノウン。この国の人間かどうかもわかんねえ。

「アハハ!謎の人か~、ダンクは?」

「じゃあ俺も、テリヤキとベーコンエッグ。」

「はーい!それじゃちょっと待ってて。」

出来るまで、おとなしく車の前のベンチで待つ。
ベンは道に生えた草を食べ始めて、エリザベスは繋がれた木陰でボーッとしてる。

「お前、外国人だったの?」

「いや、オヤジは恐らくこの国の人。詳しくしらねえんだわ。」

「オヤジの素性知らねえの??母ちゃんは?」

「よく知らねえ、見たこと無いし。声はニホンゴ喋ってた。」

「ニホンゴ??」

「コンニチハ、キョウハイイテンキデスネ。って奴。
お母ちゃんは英語駄目なんだけど、何故かニホンゴで近所の人とは、なんかさっぱりわからんけど、だいたいこうだろって感じの会話してたなー。
わからねえ時は俺と妹が通訳してた。」

「なんだよそれ!面白え家族!」

ギャハハハ!ダンクが腹押さえて馬鹿笑いする。
ダンクの両親は亡くなってるらしいから、聞いていいのか分かんねえや。

「お待たせー!ハーイこっちがテリヤキ2個ね。お代は~」

「俺が払うから、今日は俺のおごりだ。」

「あら、良かったじゃない、サトミちゃん!」

「サトミ!ちゃんは余計!」

「あらやだ、ごめんなさいね?サトミちゃん、はい!テリヤキ2個!」

うぬううううう!!
怒り心頭だが、ショーユの美味そうな香りに顔がふにゃっとする。

「な、美味そうだろ?帰って食おうぜ!」

「うん!」

ミセス・ピアが笑って手を上げる。
俺はだんだん呼び方なんてどうでも良くなってきた。

「ありがとー!また来る!」

「毎度ー、またよろしくねー!」
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