速達配達人 ポストアタッカー 新1 〜ポストアタッカー狩り〜

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第31話 俺のダチ狙うなんざ、5億年の千倍早い

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岩山を左に見ながら、岩山の裏に広がる小さな森を目指す。
その森を渡れば向こう側へと抜けるのだが、ここは盗賊の隠れ場所が多く最大の難所だ。
荒野は広くても、地雷の確認がすんでいる安全な「道」は決まっている。
ここを避けるなら、この広い荒野を大きく迂回しなければならない。

渡る小さな森を左に見ながらどんどん離れる。
地雷を懸念して、森から330フィート(100m)離れるが決まりだ。
ダンクは目算で離れるが、まだ近い。これでは250前後だ。

「ダンク!!まだ近い!」

駄目だ、声が流れる。
背中に余裕がない。
恐怖で身体が硬くなっている。

森をチラリと見て、少し離れてダンクの左、森側に並び、馬は全速で駆け抜ける。


「いやがる、いやがるぞ、俺にはわかる。3人だ。金で雇ったな?
くくく、さあ撃てよ、先制攻撃が出来ないんだ、頼むから撃ってくれよ。

そしたら、 殺してやるよ。 」


砂煙を上げて馬が二頭、前方を遠く右から左に駆け抜ける。
女が双眼鏡を手に、男に合図した。

「ポストマークだわ!奴らよ!早く撃って!並んでるわ、好都合よ!」

重機関銃を手にした男が、ニヤリと笑う。
女は残りの金で元軍人の2人を雇っていた。

「焦るなマダム。マーク!援護して足を止めろ。弾が少ない、無駄撃ちが出来ねえ。」

「ラジャー」

マークと呼ばれた男がアサルトライフルを構えて撃つ。

タタタ、タタタ

だが、高速で走る馬に追いつかない。

「何してやがる!前を狙うんだよ!相手は早馬だぞ!」

「うるせえ!わかって……」

カーーーン

ヒュッ

ドカッ!!「 がっ 」タタタタン

いきなりマークの身体が後方に吹っ飛び、乱射しながら木にドスンとぶつかって横倒しになった。

「なっ!なんだ?!!マーク、なにがあった?!」

マークの額にはナイフが刺さり、自分に何が起こったのかさえ、わからない表情で死んでいる。

「いったい……一体何がどうなった?!」

残された男に戦慄が走る。
女が、同じ手口に目を見開いた。

「あいつよ!背中に棒背負ったあいつ!!早く!逃げられるわ!!殺して!!」

女が銃をマークの手から取り、男の横に並ぶ。
すでに2人は中央を越え、難所の出口に向かっている。
女はライフルを撃ちながら男に叫んだ。

タタタン、タタタン、
「早く撃って!!弾が尽きるまで!」

「おう!」

機関銃の男が、トリガーを押した。

ダダダ、ダダダダダンン!!

「サトミ!頭下げろ!!」

シャッシャッシャッ

弾は衝撃破でサトミの背中をかすり、荷物の袋をかすってゆく。

「へえ、上出来!上手いじゃネエかよ!」

サトミの言葉は耳に入る余裕もなく、ダンクが必死で叫ぶ。

「サトミ!!サトミ!!逃げ切るんだ!!」

わかってる。『逃げる』がミッションだ。
残弾が少ないのか、無駄撃ちが少ない。
ライフルの弾は、はるか後ろを流れている。

だが。今度の奴は使い慣れてる。

タタタンッ!

間隙を置いて銃声が響き、サトミの後ろを通り過ぎていた機関銃の弾が、今度はダンクの前を過ぎて行く。
弾が空気を切る音が目の前を過ぎて、ダンクが悲鳴を上げて身を低く小さくする。
ここでスピードを落とせばやられる。落とさなくても当たれば死ぬ。

「ひいいっ!!くそおおおっ!!死んでたまるかよおっ!!」

重機関銃だ、そうだ、頭に当たれば首が吹き飛ぶと考えろ。

しかし最後の一発の弾丸が、身体一つ前を行くダンクの頭を目指す。
サトミが左手に握っていた雪雷をクルリと順手にまわし。グッと握りしめた。
右手が手綱を打ち、瞬時にベンが答えてグンとスピードを上げる。
サトミが腰を浮かせ、目に見えない早さで下から弾丸へと走らせた。

ガイィィィンッッ

刀で機関銃のデカい弾をはじき、2つになった弾丸が前方上にくるくる舞い上がる。
その瞬間弧を描いて右に刀を流し、渾身の力でデカい方の弾丸の尻を叩いて、森の方角へ打ち返した。

カーーーーーーンッッ!!

弾丸は潰れて鉛の弾となり、機関銃へ向けて一直線に風を切る。


ガーーーーーンンッッッ


機銃が大きな音を立ててビリビリと振動が来て、トリガーを握る男が驚愕した。

「な、なんだ?!!一体何の音だ?!!」

タタタンタタタン

「いいから早く!」女が焦って叫んだ。

「早く撃って!逃げられるわ!早く!」

「おう!」

火の付いてないタバコを噛み、今度こそと男が再度機銃を構え、トリガーを押した。
その瞬間。


バーーーーーーーーンッ!!


機銃のバレルが爆音を立てて爆発する。

白煙が上がり、ダンクが思わず森を見た。
サトミが一瞥してフンと息を吐く。


「俺の前でダチ狙うなんざ、5億年の千倍早い。いっぺん死んで出直してこい」


刀を直し、何が起きたのかわからず振り返るダンクの後ろに回る。
二人は止まることなく、そのままデリーを目指した。



血にまみれて木の間に倒れた女が、気がついて耳鳴りに頭を抱えて身を起こした。
頭の中でガンガンと何かが鳴り響き、耳が痛い。
髪の中から顔中にだくだくと血が流れる。

「うう……いた、痛い……」

何かの破片が刺さったのか、気がつくと、右半身が血だらけになっている。
まるで、地雷のベアリングを浴びたようだ。

「な‥に……何が起きた、の?」

激しい痛みの右目を押さえ、よろめきながら右足を引きずって立ち上がり機銃を見ると、バレルが爆発して、男は顔が血だらけで後ろに吹き飛び死んでいた。

「い、いったい何?何がどうなったのよ!」

女がパニックを起こしながら、サトミ達を探す。
だが、彼らはすでに通り過ぎて、見えなくなっていた。


何があったかわからないのも当然だ。
サトミは、弾いた弾の破片を口径12.7mmのバレルに正確に打ち込んだのだ。

あり得ない、だから、思いも付かない攻撃に、女は呆然とその場に立ち尽くした。
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