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主人と首輪
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3日後、あれから未だに呼び出しはない。
いつもの日常と、変わりはなくて。
ただ一つ。変わったことは、周りの視線。
そりゃそうだ。こんなに地味で存在感もない女が首輪に選ばれたんだから。
「ねえ、みゆちゃん、蓮様とどんな感じ!?」
「やっぱり結構ひどいことされるの?」
「蓮様が首輪を選ぶ基準ってなんだと思う?」
今まで話したこともない女達が、休み時間ごとに私の机に来るようになった。
適当に返すと、それに自分たちだけ盛り上がる。ああ、めんどくさい。
興味の目、羨望の目、ひどい嫉妬の目。
女たちが私に抱く感情は、人それぞれだ。
そんなこと、いちいち気にしちゃいられない。
(ピロンッ)
私は、私のやるべきことをするだけ。
ー"首輪"として。
ここに来るのは、2回目。
いつ見ても、豪勢で後ずさりしてしまいそうな部屋。
(ガチャッ)
扉が開くと、南雲さんが綺麗にお辞儀をする。
私も、少しお辞儀をすると、奥の方へ足を進めた。
「久しぶりだね、みゆちゃん」
「お久しぶりです、蓮様。」
大きな窓の前に立って、外を見ていた主人はゆっくり私の方に振り返る。
その手には、一輪の綺麗な花があった。
「綺麗な花ですね」
「うん、俺が1番好きな花なんだ。」
ピンク色の可愛い花は、
美しい主人とよく似合ってる。
「この花の花言葉は、危険な美しさ」
綺麗な花には、
「こんなに綺麗な見た目なのに、毒を持ってるんだ。」
トゲがある。
「すっごく魅力的でしょ?」
その花は、あまりにも主人に似合いすぎてる。
「ええ、美しいですね」
共感できる私はやっぱり主人と似ているのかも知れない。
ただ綺麗な花よりも、毒があってこそ、この花は美しい。
主人は、花を見る私を数秒見つめた後、少し微笑み、私の方へ近づく。
「危険だね」
「え?」
私の前でぴたりと止まった後、また私を見つめる主人。
目を背けてしまいそうなぐらい、熱い視線に目を逸らしたくなる。
「君も、この花と同じくらい…」
気づいた時には、もう遅かった。
主人の唇は、しっかりと私のにくっついていて。
柔らかい感覚に、頭の奥がぐらりと揺れた。
「すっごく危険だね」
状況を理解するのに、時間がかかった。
私は今、主人と……
主人は、頭の整理がつかない私を見て、ニヤッと笑った。
「これぐらい俺にとって挨拶程度だから君が慣れてね?」
「…蓮様」
「ん?」
「これも全部、計算のうちですか?」
「え?」
主人は面食らったような顔をする。
「蓮様の計算では、私はどんな反応をするのが正解ですか?」
「はは、計算?さっきから何言ってるの?」
「わかってますよ、全部。」
私の言葉に、主人の微笑みがぴたりと止まる。
部屋の空気が、一瞬凍りついたように感じた。
冷たい綺麗な瞳が、じわじわと私を射抜く。
まるで私の心の奥を覗き込むように。
そして、ふっと息を吐き出すように笑った。
「やっぱり、君は俺の本性見抜いてたんだね」
遡ること3日前。
「あ、みゆ帰ってきた!おかえり!今日東雲蓮と会ったんでしょ?どうだった?ねえねえ、」
学校から帰ってくるや否や、すっごく人を面倒臭くさせるのは、私の兄。
「ねえ、お兄ちゃん。その歳でその着ぐるみパジャマいい加減やめてくれない?恥ずかしい」
いい年してモコモコのペンギンのパジャマを着てる兄。
あー恥ずかしい。
「えー、可愛いじゃん。お兄ちゃん、最近このキャラクターにハマってさ。って、俺の質問答えてよ」
「…私何もしなくていいらしい、ただ側にいれば。ただ、絶対に好きになってはいけない、首輪外される理由はこれだけ。」
「それだけ?意外に簡単だね、よかったじゃん」
「…まさか。それは、上部のルール。」
「ん?どうゆうこと?」
お兄ちゃんは私のその言葉に首を傾げる。
「私は、東雲蓮の"ゲーム"に利用されるんだよ」
「ゲーム?」
「あの人は、首輪に対して自分のことを好きになるなって言いながら、甘い言葉や、行動で自分のことを好きにさせようとしてる。」
それが私が気づいた主人の本性。
「ん?何で?超矛盾してんじゃん」
「それが東雲蓮がやってるゲームみたいなもんなんだよ。自分を好きにさせたらゲーム終了。女はその時点で用済み。」
「うわ、趣味悪。でも、わかんねーな。何でそんなゲームなんか。」
「さあ、女の心を操るのが楽しいんじゃないの?」
「サイテーだな。」
お兄ちゃんはそう言うと顔をしかめる。
主人は、きっと相手に自分を好きにならせることで、心を満たしてる。
ほんとは人一倍、
愛に飢えてるのかもしれない。
「みゆ、大丈夫か?」
「ふっ、なに今更。どうせ拒否なんてできないんだから耐えるしかないでしょ。」
「でも、…」
「それに、これが1番手っ取り早いんだよ。私達の家も、東雲財閥がバックについたらある程度安定するでしょ?」
「みゆごめん…1人で背負わせて」
お兄ちゃんは悲しそうな顔をして私の頭を撫でる。
「やめてよ、らしくないなあ。大丈夫、私はやれるよ。天国にいるお母さんのためにも。」
「何かあったら絶対言えよ。頼むから、無理せずに。お兄ちゃんは、絶対みゆの味方だから。」
「…うん、ありがとお兄ちゃん」
お兄ちゃんは、いつでも私に力をくれる。
私は、居間にでかでかと飾ってある、お母さんの写真を見る。
お兄ちゃんが、いつ何時も忘れないようにって、飾ったその写真。
柔らかな顔で笑ってるお母さんは、いつ見ても、綺麗だ。
そうだ、私にはこの家もかかってる。
お母さん、私忘れてないよ。
私が耐えなきゃいけない理由。
……あの"約束"を。
いつもの日常と、変わりはなくて。
ただ一つ。変わったことは、周りの視線。
そりゃそうだ。こんなに地味で存在感もない女が首輪に選ばれたんだから。
「ねえ、みゆちゃん、蓮様とどんな感じ!?」
「やっぱり結構ひどいことされるの?」
「蓮様が首輪を選ぶ基準ってなんだと思う?」
今まで話したこともない女達が、休み時間ごとに私の机に来るようになった。
適当に返すと、それに自分たちだけ盛り上がる。ああ、めんどくさい。
興味の目、羨望の目、ひどい嫉妬の目。
女たちが私に抱く感情は、人それぞれだ。
そんなこと、いちいち気にしちゃいられない。
(ピロンッ)
私は、私のやるべきことをするだけ。
ー"首輪"として。
ここに来るのは、2回目。
いつ見ても、豪勢で後ずさりしてしまいそうな部屋。
(ガチャッ)
扉が開くと、南雲さんが綺麗にお辞儀をする。
私も、少しお辞儀をすると、奥の方へ足を進めた。
「久しぶりだね、みゆちゃん」
「お久しぶりです、蓮様。」
大きな窓の前に立って、外を見ていた主人はゆっくり私の方に振り返る。
その手には、一輪の綺麗な花があった。
「綺麗な花ですね」
「うん、俺が1番好きな花なんだ。」
ピンク色の可愛い花は、
美しい主人とよく似合ってる。
「この花の花言葉は、危険な美しさ」
綺麗な花には、
「こんなに綺麗な見た目なのに、毒を持ってるんだ。」
トゲがある。
「すっごく魅力的でしょ?」
その花は、あまりにも主人に似合いすぎてる。
「ええ、美しいですね」
共感できる私はやっぱり主人と似ているのかも知れない。
ただ綺麗な花よりも、毒があってこそ、この花は美しい。
主人は、花を見る私を数秒見つめた後、少し微笑み、私の方へ近づく。
「危険だね」
「え?」
私の前でぴたりと止まった後、また私を見つめる主人。
目を背けてしまいそうなぐらい、熱い視線に目を逸らしたくなる。
「君も、この花と同じくらい…」
気づいた時には、もう遅かった。
主人の唇は、しっかりと私のにくっついていて。
柔らかい感覚に、頭の奥がぐらりと揺れた。
「すっごく危険だね」
状況を理解するのに、時間がかかった。
私は今、主人と……
主人は、頭の整理がつかない私を見て、ニヤッと笑った。
「これぐらい俺にとって挨拶程度だから君が慣れてね?」
「…蓮様」
「ん?」
「これも全部、計算のうちですか?」
「え?」
主人は面食らったような顔をする。
「蓮様の計算では、私はどんな反応をするのが正解ですか?」
「はは、計算?さっきから何言ってるの?」
「わかってますよ、全部。」
私の言葉に、主人の微笑みがぴたりと止まる。
部屋の空気が、一瞬凍りついたように感じた。
冷たい綺麗な瞳が、じわじわと私を射抜く。
まるで私の心の奥を覗き込むように。
そして、ふっと息を吐き出すように笑った。
「やっぱり、君は俺の本性見抜いてたんだね」
遡ること3日前。
「あ、みゆ帰ってきた!おかえり!今日東雲蓮と会ったんでしょ?どうだった?ねえねえ、」
学校から帰ってくるや否や、すっごく人を面倒臭くさせるのは、私の兄。
「ねえ、お兄ちゃん。その歳でその着ぐるみパジャマいい加減やめてくれない?恥ずかしい」
いい年してモコモコのペンギンのパジャマを着てる兄。
あー恥ずかしい。
「えー、可愛いじゃん。お兄ちゃん、最近このキャラクターにハマってさ。って、俺の質問答えてよ」
「…私何もしなくていいらしい、ただ側にいれば。ただ、絶対に好きになってはいけない、首輪外される理由はこれだけ。」
「それだけ?意外に簡単だね、よかったじゃん」
「…まさか。それは、上部のルール。」
「ん?どうゆうこと?」
お兄ちゃんは私のその言葉に首を傾げる。
「私は、東雲蓮の"ゲーム"に利用されるんだよ」
「ゲーム?」
「あの人は、首輪に対して自分のことを好きになるなって言いながら、甘い言葉や、行動で自分のことを好きにさせようとしてる。」
それが私が気づいた主人の本性。
「ん?何で?超矛盾してんじゃん」
「それが東雲蓮がやってるゲームみたいなもんなんだよ。自分を好きにさせたらゲーム終了。女はその時点で用済み。」
「うわ、趣味悪。でも、わかんねーな。何でそんなゲームなんか。」
「さあ、女の心を操るのが楽しいんじゃないの?」
「サイテーだな。」
お兄ちゃんはそう言うと顔をしかめる。
主人は、きっと相手に自分を好きにならせることで、心を満たしてる。
ほんとは人一倍、
愛に飢えてるのかもしれない。
「みゆ、大丈夫か?」
「ふっ、なに今更。どうせ拒否なんてできないんだから耐えるしかないでしょ。」
「でも、…」
「それに、これが1番手っ取り早いんだよ。私達の家も、東雲財閥がバックについたらある程度安定するでしょ?」
「みゆごめん…1人で背負わせて」
お兄ちゃんは悲しそうな顔をして私の頭を撫でる。
「やめてよ、らしくないなあ。大丈夫、私はやれるよ。天国にいるお母さんのためにも。」
「何かあったら絶対言えよ。頼むから、無理せずに。お兄ちゃんは、絶対みゆの味方だから。」
「…うん、ありがとお兄ちゃん」
お兄ちゃんは、いつでも私に力をくれる。
私は、居間にでかでかと飾ってある、お母さんの写真を見る。
お兄ちゃんが、いつ何時も忘れないようにって、飾ったその写真。
柔らかな顔で笑ってるお母さんは、いつ見ても、綺麗だ。
そうだ、私にはこの家もかかってる。
お母さん、私忘れてないよ。
私が耐えなきゃいけない理由。
……あの"約束"を。
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