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くりすますとは…?5
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私は執事服のアルフォンス様と一緒に屋敷のみんなにクッキーを配って歩いた。笑顔で受け取ってもらえてほっと一安心である。みんな、アルフォンス様にせっかくだからと用事を言いつけようとしたが、涼しい顔をして「私はお嬢様のエスコートをしておりますので」と断っていた。
そして、夕方からパーティーが行われた。料理長のアークさんがとても大きなブッシュドノエルを用意してくれた。私は、絵本でしか見たことのなかったブッシュドノエルに興奮が止まらなかった。
使用人たちに「せっかくだからこき使わせろ!!」と言われたアルフォンス様は飲み物をサーブしていた。真面目一徹のイルマさんは頭を抱えていたが、アルフォンス様は楽しそうだった。
夜も更けてくると、アルフォンス様は私の手を引いた。その頃には執事の役割は放棄していた。
「おいで。そろそろ寝る時間でしょ。でもその前のお楽しみ」
なんだか相変わらずのお子様扱いに少し唇が尖る。
「行こう」
彼は玄関に向かい、私に置いてある自分のコートを着せかけると外に連れ出した。
雪が、降っていた。
明日は雪かきの手伝いをしないと、と思う。余り力仕事は戦力と思われていないのだが。
彼は裏庭に向かうと私を抱き込んで石段に座った。
「寒くない?」
「大丈夫です」
むしろ、アルフォンス様の方が寒くないのか不思議だ。
そう問うと「俺はアリスのおかげで温かいよ」と言われた。
「今日、楽しかった?」
「とても楽しかったし、幸せです」
「そう?本当に?」
「はい。クリスマスって幸せな日なんですね」
「そうだよ。よかった」
アルフォンス様が笑う。大切な人が笑うと私も嬉しい。
「じゃあ俺からのクリスマスプレゼント」
「え?いっぱいもらいましたよ?」
こんな綺麗なドレスを着せてもらえて、一日中、一緒にいてもらえた。本当はそのことが一番嬉しかった。
「そう言わずにこれは形に残らないからもらっといて」
アルフォンス様がすっと指先を動かす。
それだけで、裏庭の杉林に数多の光が灯る。真っ白の雪の中でキラキラと宝石のように輝く杉林。
「綺麗…」
「よかった、アークのブッシュドノエルよりと喜んでもらえて」
「なんですか、それ…」
「あ、これ。私からのクリスマスプレゼントです」
「え?クッキーだけじゃないの?」
アルフォンス様が目を輝かせる。
「手作りで申し訳ないんですけど」
私が差し出したのは栞だ。アルフォンス様はよく私に花をプレゼントしてくれる。それは指先から魔法で生まれた花や、屋敷の庭の花を束ねた物など様々だ。もらった花は全てドライフラワーにして使用人部屋で保管している。そのドライフラワーの中から厳選した花で栞を作ったのだ。
「大事にする。絶対大事にする」
アルフォンス様はとても大切な物を扱う手つきで栞を受け取ってくれた。私も彼の与えてくれる物をいつだって大切に受け取りたい。
それから私は「そろそろ家に入る?」と何度も尋ねるアルフォンス様に「まだ見ていたい」と言い続けてそのままアルフォンス様の膝の上で寝入ってしまった。
「そこまで安心されてもなあ」
アルフォンス様がボヤいていたことを私は知らない。
そして、夕方からパーティーが行われた。料理長のアークさんがとても大きなブッシュドノエルを用意してくれた。私は、絵本でしか見たことのなかったブッシュドノエルに興奮が止まらなかった。
使用人たちに「せっかくだからこき使わせろ!!」と言われたアルフォンス様は飲み物をサーブしていた。真面目一徹のイルマさんは頭を抱えていたが、アルフォンス様は楽しそうだった。
夜も更けてくると、アルフォンス様は私の手を引いた。その頃には執事の役割は放棄していた。
「おいで。そろそろ寝る時間でしょ。でもその前のお楽しみ」
なんだか相変わらずのお子様扱いに少し唇が尖る。
「行こう」
彼は玄関に向かい、私に置いてある自分のコートを着せかけると外に連れ出した。
雪が、降っていた。
明日は雪かきの手伝いをしないと、と思う。余り力仕事は戦力と思われていないのだが。
彼は裏庭に向かうと私を抱き込んで石段に座った。
「寒くない?」
「大丈夫です」
むしろ、アルフォンス様の方が寒くないのか不思議だ。
そう問うと「俺はアリスのおかげで温かいよ」と言われた。
「今日、楽しかった?」
「とても楽しかったし、幸せです」
「そう?本当に?」
「はい。クリスマスって幸せな日なんですね」
「そうだよ。よかった」
アルフォンス様が笑う。大切な人が笑うと私も嬉しい。
「じゃあ俺からのクリスマスプレゼント」
「え?いっぱいもらいましたよ?」
こんな綺麗なドレスを着せてもらえて、一日中、一緒にいてもらえた。本当はそのことが一番嬉しかった。
「そう言わずにこれは形に残らないからもらっといて」
アルフォンス様がすっと指先を動かす。
それだけで、裏庭の杉林に数多の光が灯る。真っ白の雪の中でキラキラと宝石のように輝く杉林。
「綺麗…」
「よかった、アークのブッシュドノエルよりと喜んでもらえて」
「なんですか、それ…」
「あ、これ。私からのクリスマスプレゼントです」
「え?クッキーだけじゃないの?」
アルフォンス様が目を輝かせる。
「手作りで申し訳ないんですけど」
私が差し出したのは栞だ。アルフォンス様はよく私に花をプレゼントしてくれる。それは指先から魔法で生まれた花や、屋敷の庭の花を束ねた物など様々だ。もらった花は全てドライフラワーにして使用人部屋で保管している。そのドライフラワーの中から厳選した花で栞を作ったのだ。
「大事にする。絶対大事にする」
アルフォンス様はとても大切な物を扱う手つきで栞を受け取ってくれた。私も彼の与えてくれる物をいつだって大切に受け取りたい。
それから私は「そろそろ家に入る?」と何度も尋ねるアルフォンス様に「まだ見ていたい」と言い続けてそのままアルフォンス様の膝の上で寝入ってしまった。
「そこまで安心されてもなあ」
アルフォンス様がボヤいていたことを私は知らない。
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