冒険者ゴートの一生

ケバブ

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四章

旅立ちの下級冒険者10

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「あ、ゴート君、リンの街が見えてきたよ」

朝方取引を済ませた後ヴァンの村を出て、今は三時頃だろうか。街を見つけたネルさんが声をあげる。

荷馬車の後ろから前方を覗き込むとセカの街と比べて歴史を感じる外壁と門が見える。

「なんというか、年期が入ってますねえ」

「セカの街は割りと新しい街なんだよ。歴史有る街はどこも割りとこんなもんだよ」

「セカの街は新しい街だったんだ…。って目的地まで後少し、油断せずに行きますね」

「はは、そうだね。門に着くまではしっかりと護衛してくれよ!」

「はい!」

いくら目的地が視界に入ったとはいえまだ依頼中。それに遠くに見えてはいるもののまだ結構な距離が有りそうだし、ここで油断してはいけない。

「ゴート君、どのくらいでセカの街に戻る予定なんだい?」

「一応一年か二年経ったら一度戻ろうかと思ってます。それこそ別の街に住むことになっても挨拶はしたいですし。まあ、そんな予定は一切無いんですけどね…」

とらぬ狸ではないが、なにも決まっていない先の事を話すのは少し恥ずかしい。

「そうか…。もしその時は是非うちの商会にも顔を出してくれよ!」

「勿論です!」

セカの街にいた三年でネルさんには何度か指名依頼を受けているし、縁も出来たのだ。頼まれなくとも顔を出すだろう。


「セカの街の商人とその護衛の冒険者だな。協力感謝する」

リンの街の門兵に各々が身分証を見せ街に入る。荷馬車等一定量の荷物を運びいれる場合は身分証の提示が必要らしい。

セカの街を出て三日、遂に俺はリンの街に到着したのだ。

「ゴート君、護衛任務お疲れ様。これ依頼書の写しと完了証明ね」

普段は完了証明を貰うだけで大丈夫なのだが街を跨いでの依頼のため依頼書の写しも合わせて受けとる。

「ネルさん、本当にありがとうございます。護衛依頼なのに色々お世話になってしまって…。戻る時も気を付けて下さいね!」

「ゴート君こそ気を付けないと。知らない土地っていうのはそれだけで危ないから」

「…肝に命じておきます」

商人であるネルさんのこの言葉は今までとは違った重さを感じた。騙されたり、詐欺に会わないように気を付けないとな。

「それじゃあゴート君元気で!」

「はい!また!」



ネルさんと別れ、俺は一人街中へ向かう。

改めてリンの街を見渡して見るとセカの街との違いが良くわかる。

一言でいうならば雑多。

屋台や、こじんまりとした店がとにかく多く、道もやや狭い。そのせいか常に店主の啖呵や客とのやり取りが聞こえてくる。

またセカの街は街の中心を通るように十字に大きい道があったが、ここは街を囲むように大きい道があり、中心に行くに連れて小路、裏路地が増えていくようだ。街の中央に行けば行くほど生活感のあふれる様子がうかがえるのも興味深い。

「元々はもう少し小さな街だったのかも知れないなあ」

誰に話すわけでもなく独り言を呟きながら、目移りしつつ右往左往している様は正に田舎者に見えないだろうな。実際田舎者だし。

更に街を散策していると各組合が集まっている場所を見つけた。ここはお世話になる機会が多くなりそうだからしっかりと把握しておかないと。位置としては街の南東。可能なら宿もここら辺にとりたい所だけど。

取り敢えず依頼報告を済ませなければ。

初めての違う街の冒険者組合に少しだけ緊張しながらも扉を開く。

「明日までに七級冒険者を二人雇いたいんだが可能だろうか?」

「少々お待ちください…。はい大丈夫です。明日指定の場所に向かわせますので用紙に記入をお願いします」

「おお、助かる」

いきなり聞こえてくる馴染みの無いやり取りや、冒険者組合にしてはやけに静かなことに若干違和感を感じつつも報告をしに受付へ向かう。

「すみません、依頼の完了報告なんですが」

受付の職員に依頼書の写しと完了証明を渡す

「ゴート様ですね。確認いたしました。只今報酬をお持ちしますので少々お待ちください」

「あ、宜しくお願いします」

「お待たせいたしました。こちら報酬金となっております。ご確認を宜しくお願いします」

「えーと、はい、問題ありません。あ、冒険者にお勧めの宿屋とかって有りますかね?」

「宿屋でしたら後ろの棚に提携している宿屋一覧が有りますので予算に合わせてお好きな宿をお選びください」

「え、あ、ありがとうございました」

受付から離れ後ろの棚へ向かう。最後も綺麗なお辞儀をしていたし凄く丁寧な対応ではあるのだが、なんというか商人組合に来てるような感じだ。

セカの街との雰囲気の差に戸惑いつつも宿を決めるべく一覧を見るとピンからキリまでけっこうな数があるがここで悩んでも仕方がない。

一泊食事付きで三千エルの手頃な宿を見つけた。

『宿屋鉄板』

食事付きでこの値段は凄く安いし、ここし決めてしまおう。あとなんか強そうだし。

飯を寄越せとお腹も主張を始めた事だし早速向かおう。

宿屋鉄板は冒険者組合からしばらく南に向かった所の少し入り組んだ場所にあった。少し迷いかけたがどうにかついた。

「いらっしゃい!」

店のなかに入ると恰幅と威勢の良い女将さんが大皿になにか料理を乗せて運んでいた。あまり見慣れないがとても美味しそうだ。

「すいません一週間泊まりたいんですけど大丈夫ですか?」

「勿論!お客様は大歓迎さ!そこの紙に名前を書いてもらえるかい?今行くからさ」

受付にあった用紙に名前を記入し終えるのと同時に女将さんがやってきた。

「ゴートか、うん。良い名前だね!最近流行りの名前より私はこういう武骨な名前が好きだよ」

「あ、ありがとうございます。これ料金です」

凄まじい女将さんの勢いに気圧されながらも支払いを済ませる。

「確かに頂きました。これ部屋の鍵ね。夕食は
もしお腹が空いてるんだったらすぐ食べれるからさ」

「着替えてすぐ戻ってきます!」

「お腹に正直なのは良いね!そういえば言い忘れてたけど私の名前はマージ、今奥で料理してるのが旦那のボイド、そして今は居ないけど娘のリリーがいるわ。何かあったら気兼ね無く声を掛けて頂戴」

「こちらこそ宜しくお願いします」

挨拶もそこそこに匂いに急かされるように部屋に戻り、防具を外し体を拭ったあと夕食に。

何でも今日のメニューはお好み焼きとい食べ物らしく、小麦粉を溶かしたものに色々な具材が入っていてそれを焼いたものらしい。

とにかく美味しいので問題無しだ。

今日はリンの街についた記念でもあるしビールも頼んだのだが、またこれがビールに合う。
とはいえ明日も街の中の探索や冒険者組合で依頼を見てみたい。飲みすぎないように気を付けなければ。

お腹も心も満たされ部屋に戻り中を見渡す。
さっきは夕食にしか考えが回らなかったが、この部屋かなり狭い。三千エルにしては随分と夕食が豪華だと思ったが納得がいったし少し安心もした。それに俺はこのぐらいの部屋の広さには愛着が有るし。

ベッドに自前のマントを重ね寝転がる。気持ち柔らかくなったかな。


ふと初めて駆け出し荘で泊まった時を思い出す。あの頃もこれからの人生に胸踊らせていたと思うが今はそれ以上かもしれない。それは昔と比べて出来る事が格段に増えたからなのだろう。

一週間になるのかはたまたそれ以上か。いつまで続くか解らないリンの街での生活を今は目一杯楽しもう。
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