王宮での値段の良いバイトの正体は国王の花嫁役でした...

名前はまだ決めてない。

文字の大きさ
6 / 19

第6幕 初めてのお忍び。

しおりを挟む
「懐かしいな~。なんも変わってないな。」

    帝都を出発して東の国へ行って早2年。

   久しぶりに帰って来たが、町の賑わいは以前とあまり変わってはいなかった。

    男は馴染みの店に顔を出しながら町を練り歩いていると1組の男女を発見する。

ーーーー?まさか。

     男の方にはどことなく見覚えがあったが、女性の方は見た事があるという確信があった。いや、忘れるわけがない。あれは...俺の...

      ◆  ◆  ◆

    帝都はすっかり夏は終わり少し朝は肌寒くなってきた。

「どうだ?楽しいか?」

    珠羅は零の顔の方を向いて聞く。それに対して零は、大きく笑顔を顔に咲かせて、

「はい!楽しいです!今日はお誘いありがとうございます!」

ーーーー話は昨日へ遡る。

   昨日、珠羅は立ち去る前に零に質問する。

「明日...暇か?」

   暇...以外に答える事はあるだろうか。いくら、妃のバイトといえど妃の端くれだ。

    皆恐れ多いのか、誰も零に頼み事をして来ず零は暇を持て余していた。

「明日、暇なら私と帝都へこっそり遊びに行かないか?」

「それって...按司さんには...?」

「無論、内緒だ。」

    内緒にしてくれ。とイタズラっぽく笑う珠羅を見て零は絶対に言わない。と心に誓って、「はい!大丈夫です!」と答えた。

ーーーーそして、今となる。

   正直言って帝都は楽しい。

   市場を覗いたり、歌を聴いたり、演劇を見たりと、零の興味をそそるものばかりだった。

「どこかで何か食べないか?」

   珠羅はそう提案する。零も、そろそろお腹が空いてきた頃だったので最初に目に入ったお店を指さして「あそこはどうですか?」と提案する...が、

ーーーー失敗した...

と、零は心から思う。お店に入った時、ちょうど2人用の席が一つだけ空いていたのは良かった。

    ただ、お店が賑わっており他の客がいる中、一際目立つのが珠羅だった。

「ねえ!あの人格好いいよね!」「だよね!」等と様々な所から声が聞こえ珠羅に視線が集まる。

    そしてその後必ず零へ視線が集まり「あの人の隣にいるあの女は何者...?」といった空気が漂っていた。

   そして気まずい雰囲気の中、料理がやってきた。

   零は料理は同じだが、味付けが珠羅とは違う物を選んだ。

   すると珠羅は思いがけないことを口にする。

「食べ比べしないか?」

「ーーーー!?」

   何を言い出すのだろうか...。店内の女性達が騒がしくなるのを感じた。

「それを、食べさせてくれないか?」

と珠羅は零の料理を指さす。

「へ!?は、はい!!」

    零は恐る恐るスプーンに料理を1口のせ、ゆっくり珠羅の口元へ運ぶ。

    そして珠羅は口を開きその料理を1口食べる。そして口元を緩める。

「ーーーー悪くない。とても美味しい料理だ。さあ、次は零の番だ。」
 
    そう言うと珠羅もスプーンに料理を1口のせ、零へ向ける。

「!!へ、陛下ーーーーッ、食べなきゃ...ダメ...ですか?」

   こんなにも他の人が見ている中食べさせてもらうだなんて恥ずかしすぎて出来ない。

   すると珠羅は、物淋しそうな表情を浮かべ、

「そうか...やはり、無理なのか...」

と呟き、私はなんとも言えない罪悪感に包まれ、つい言ってしまう。

「あ、いや、そういう訳では!!い、頂きます!」

    どうとでもなれ。そういう勢いで零は1口食べる。

「どうだ?美味しいか?」

    柔らかい表情見せて微笑む珠羅を見て零は恥ずかしさでいっぱいになる。

「は、はい!美味しいです!」

   零が恥ずかしさと珠羅と一緒にいるということの嬉しさで顔がつい綻んでしまい、その表情をみて珠羅も頬を赤く染める。

    また、その珠羅の顔をみて店内に歓声が響き渡る。

「そっ、そろそろ出ましょうか!」

「あぁ、そうだな。」

    そう言って外へ出る。すると珠羅は零に話しかける。

「手、握っても良いか?」

「え!?は、はい!!」

    そう答えると珠羅は優しく零の左手を握る。

ーーーー暖かい。

    珠羅の手の温度が直に伝わってきて零の頬は熱を帯びる。

    そして町を少し歩いた時だった。

「れ、零じゃないか!?」

と背後から声をかけられた。すぐさま仏頂面で振り向いた珠羅は、

「お前は誰だ?」と聞く。すると男はヘラヘラと笑う。

「僕ですか?僕は煌雅(コウガ)と申します!」

    そう言うと煌雅は零に手を差し出し、零の全く予想もしていなかった台詞を言う。


「零。迎えに来たよ。」

「!?」

     零は思いがけない台詞に冷や汗がたらりと頬を流れる。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

私の作るおにぎりが、騎士団の士気を異常に上げています(犯人は副団長)

星乃和花
恋愛
おにぎりを配っただけで、騎士団の士気が異常値になりました。 団長は警戒、監察部は呪術検査、国まで動きかけるのに――副団長だけが平然と断言。 副団長「彼女のご飯は軍事物資です」 私「えっ重い」 胃袋で落ちた策略家副団長の“最適化溺愛”に巻き込まれ、気づけば専属補給係(=婚約)寸前!? ほのぼの爆笑&甘々の騎士団ラブコメです。 (月水金21:00更新ー本編16話+後日談6話)

一条さん結婚したんですか⁉︎

あさとよる
恋愛
みんなの憧れハイスペックエリートサラリーマン『一条 美郷(※超イケメン)』が、結婚してしまった⁉︎ 嫁ラブの旦那様と毒舌地味嫁(花ちゃん)....とっ!その他大勢でお送りしますっ♡ ((残念なイケメンの一途過ぎる溺愛♡))のはじまりはじまり〜 ⭐︎本編は完結しております⭐︎ ⭐︎番外編更新中⭐︎

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない!~

伊吹美香
恋愛
ウエディングプランナーとして働く菱崎由華 結婚式当日に花嫁に逃げられた建築会社CEOの月城蒼空 幼馴染の二人が偶然再会し、花嫁に逃げられた蒼空のメンツのために、カモフラージュ婚をしてしまう二人。 割り切った結婚かと思いきや、小さいころからずっと由華のことを想っていた蒼空が、このチャンスを逃すはずがない。 思いっきり溺愛する蒼空に、由華は翻弄されまくりでパニック。 二人の結婚生活は一体どうなる?

処理中です...