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第9幕 この気持ちには嘘をつきたくない。
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あれから少し時間が経った...
「どうしようか...」
朝の政務室ーーーー。ここでは、珠羅が仕事をする部屋である。
その政務室の中で珠羅は椅子に座って頭を悩ます。
「どうしたんですか?貴方らしくない...まあ、大体理由は分かりますけど。」
按司は「零殿ですよね?」と言いながらお茶の入ったカップを珠羅の近くの机に置く。
「...なんで分かるんだ。」
「そんなもの、彼女の態度を見れば一目瞭然ですよ。最近の態度はよそよそしかったですからね。」
珠羅は「やっぱりか...」とため息を漏らす。
「この前までの態度と比べると、どうせ貴方様がどこかの日、夜中彼女の寝室へ立ち入り、無理矢理やることしたんでしょう?」
按司がやれやれ...といった表情で珠羅を見ると珠羅は仏頂面で睨み返す。
「...そんなことはしてないぞ。ただ...」
「ただ...?」
「その場のノリで鼻を噛んだ。」
按司は「は?」と言葉を漏らし思わず動きを止める。それに対して珠羅は頭を抱えてブツブツと呟く。
「いや、私はただ彼女が幼なじみの話を嬉しそうにするから私はなんとも言えない気持ちになって思わず...」
「したんですか?無理矢理。」
「してない。だから、噛みついた。」
按司は「はぁ...」と眉間を押さえて大きくため息をついたあと、珠羅の目を見て部屋からの立ち去り際に言う。
「彼女をからかうのも程々にしてくださいよ?いずれ彼女は帰る人なんですから。」
ーーーーーーーーどうしたものか...
それからというものの珠羅は零にずっと避けられてばかりだった。
部屋を出ていく按司に心の中で舌打ちをしたあと珠羅は窓から青空の中にひとつ浮かんだ雲を見る。
「...謝ろう。」
思い立ったのか、珠羅は腰を重そうにゆっくりあげて部屋を出ていった。
◆ ◆ ◆
ーーーーーーーーどうしよう。
珠羅からの思いがけない行動で頭が上手く回らない。
昨日の事を考えるとどうしても恥ずかしくなってしまう。穴があったら入りたい気分だ。
しかも最近は珠羅から逃げっぱなしで上手く会話が出来ていない。
(想いを伝えたい...けど...)
ーーーーそれで断れてしまったらもう零は立ち直れないかもしれない。
そう思うと上手く1歩踏み出せない。
そう思いながら辺りを歩き回っていると、背後から声が聞こえてくる。
「我が妃は面白い遊びをしている様だな。」
ーーーー以前にも聞いたこの台詞。まだ珠羅の本当の性格を知らずに怖がっていた時に聞いたものだ。
後ろを振り返ると、珠羅が部屋の入口に立って不敵な笑みを浮かべていた。
しかし、表情はどことなく緊張しているようだった。
「へ、陛下!?」
昨日の事を思い出してまた顔が熱くなる。今は珠羅の顔を直視出来ない。ひとまず逃げよう。
「す、すみません。わ、私あっちに用が...」
そう言って零が部屋から立ち去ろうとした時。
「待ってくれ。」
と言って珠羅の暖かい手が、零の細い腕を掴む。
「その...すまなかった。」
「...え?」
「急にあんな事をして、申し訳ない。」
零はこの前の事が恥ずかしかったが、たいして負の感情は抱いておらず、それ以上に珠羅は急にあの様な事をして罪悪感を感じてしまっていたのかもしれない。
そう思うと少し心が苦しかった。
ーーーー悪いのは私なのに...
勝手にときめいて。勝手に恥ずかしがって。勝手に逃げて。
全部私が勝手に動いただけなのに。何故、あなたが...
「わ、私の方こそすみません!!」
そう言って零は思い切り頭を下げる。
「勝手に逃げてしまって...私本当は...本当は...!!」
しかし、珠羅は低い声音で零に言う。
「すまなかった。嫌だったんだな。急にあの様な事をされて。」
ーーーーえ?
その時、零の血の気がサッと引く。
五感の全てが鈍り、さっき珠羅の放った冷たい台詞だけが頭をまわる。
「そ、そんなことは...!!」
「すまない。もう、大丈夫だ。悪かった。」
そう言って珠羅が悲しそうな背中を見せて立ち去ろうとする。
ーーーー去ってしまう。
あの人の背中があんなにも遠くに。嫌だ。離れたくない。
その時、零は思わず珠羅の袖を握っていた。
「待ってください!!私...そんなことはないです。貴方にされて嫌なことなんて...」
「え...?」
珠羅の顔が驚きへと一瞬で変わる。ここで一気に恥ずかしさが零を見舞うが、零は思った事を全て言う気持ちで想いを伝える。
「私は...私は、あなたの事が...」
「好きです。」
「大好きです。もう、揺るぎないくらい大好きなんです。」
「だから...貴方が色々な事を私にしてくれたのも全部、嬉しかったです。」
ーーーー言ってしまったら、もう戻れない。
しかし、せめて、あなたの返事だけでも。
「本当...なの...か?」
珠羅の声が途切れ途切れ聞こえる。彼も困っているのだろう。急にこんな事を言われて。
「しかし...お前はその幼なじみの事が...」
「あれは、陛下が私の身の回りの事を初めて聞いてくれたので思わず嬉しくて...!」
そう答えると珠羅は顔を真っ赤に染めて口に手を添える。
「そうだったのか...しかし、零...今、もしかして...私の事を...」
思わず珠羅の口は無意識にも優しく微笑む。
「私は今。自分の気持ちにようやく気づいた。君はバイトとしか思っていないだろうとずっと考えていたがしかし、私は零の事がどうしても頭から離れない。」
「この気持ちは、まさに...慈しみ?違う。哀れみ?違う。この気持ちは...零を思う...」
『愛しさ。』
「私はこの気持ちにようやく素直になれる。」
「零。私もお前の事が...」
ーーーー好きだ。
「どうしようか...」
朝の政務室ーーーー。ここでは、珠羅が仕事をする部屋である。
その政務室の中で珠羅は椅子に座って頭を悩ます。
「どうしたんですか?貴方らしくない...まあ、大体理由は分かりますけど。」
按司は「零殿ですよね?」と言いながらお茶の入ったカップを珠羅の近くの机に置く。
「...なんで分かるんだ。」
「そんなもの、彼女の態度を見れば一目瞭然ですよ。最近の態度はよそよそしかったですからね。」
珠羅は「やっぱりか...」とため息を漏らす。
「この前までの態度と比べると、どうせ貴方様がどこかの日、夜中彼女の寝室へ立ち入り、無理矢理やることしたんでしょう?」
按司がやれやれ...といった表情で珠羅を見ると珠羅は仏頂面で睨み返す。
「...そんなことはしてないぞ。ただ...」
「ただ...?」
「その場のノリで鼻を噛んだ。」
按司は「は?」と言葉を漏らし思わず動きを止める。それに対して珠羅は頭を抱えてブツブツと呟く。
「いや、私はただ彼女が幼なじみの話を嬉しそうにするから私はなんとも言えない気持ちになって思わず...」
「したんですか?無理矢理。」
「してない。だから、噛みついた。」
按司は「はぁ...」と眉間を押さえて大きくため息をついたあと、珠羅の目を見て部屋からの立ち去り際に言う。
「彼女をからかうのも程々にしてくださいよ?いずれ彼女は帰る人なんですから。」
ーーーーーーーーどうしたものか...
それからというものの珠羅は零にずっと避けられてばかりだった。
部屋を出ていく按司に心の中で舌打ちをしたあと珠羅は窓から青空の中にひとつ浮かんだ雲を見る。
「...謝ろう。」
思い立ったのか、珠羅は腰を重そうにゆっくりあげて部屋を出ていった。
◆ ◆ ◆
ーーーーーーーーどうしよう。
珠羅からの思いがけない行動で頭が上手く回らない。
昨日の事を考えるとどうしても恥ずかしくなってしまう。穴があったら入りたい気分だ。
しかも最近は珠羅から逃げっぱなしで上手く会話が出来ていない。
(想いを伝えたい...けど...)
ーーーーそれで断れてしまったらもう零は立ち直れないかもしれない。
そう思うと上手く1歩踏み出せない。
そう思いながら辺りを歩き回っていると、背後から声が聞こえてくる。
「我が妃は面白い遊びをしている様だな。」
ーーーー以前にも聞いたこの台詞。まだ珠羅の本当の性格を知らずに怖がっていた時に聞いたものだ。
後ろを振り返ると、珠羅が部屋の入口に立って不敵な笑みを浮かべていた。
しかし、表情はどことなく緊張しているようだった。
「へ、陛下!?」
昨日の事を思い出してまた顔が熱くなる。今は珠羅の顔を直視出来ない。ひとまず逃げよう。
「す、すみません。わ、私あっちに用が...」
そう言って零が部屋から立ち去ろうとした時。
「待ってくれ。」
と言って珠羅の暖かい手が、零の細い腕を掴む。
「その...すまなかった。」
「...え?」
「急にあんな事をして、申し訳ない。」
零はこの前の事が恥ずかしかったが、たいして負の感情は抱いておらず、それ以上に珠羅は急にあの様な事をして罪悪感を感じてしまっていたのかもしれない。
そう思うと少し心が苦しかった。
ーーーー悪いのは私なのに...
勝手にときめいて。勝手に恥ずかしがって。勝手に逃げて。
全部私が勝手に動いただけなのに。何故、あなたが...
「わ、私の方こそすみません!!」
そう言って零は思い切り頭を下げる。
「勝手に逃げてしまって...私本当は...本当は...!!」
しかし、珠羅は低い声音で零に言う。
「すまなかった。嫌だったんだな。急にあの様な事をされて。」
ーーーーえ?
その時、零の血の気がサッと引く。
五感の全てが鈍り、さっき珠羅の放った冷たい台詞だけが頭をまわる。
「そ、そんなことは...!!」
「すまない。もう、大丈夫だ。悪かった。」
そう言って珠羅が悲しそうな背中を見せて立ち去ろうとする。
ーーーー去ってしまう。
あの人の背中があんなにも遠くに。嫌だ。離れたくない。
その時、零は思わず珠羅の袖を握っていた。
「待ってください!!私...そんなことはないです。貴方にされて嫌なことなんて...」
「え...?」
珠羅の顔が驚きへと一瞬で変わる。ここで一気に恥ずかしさが零を見舞うが、零は思った事を全て言う気持ちで想いを伝える。
「私は...私は、あなたの事が...」
「好きです。」
「大好きです。もう、揺るぎないくらい大好きなんです。」
「だから...貴方が色々な事を私にしてくれたのも全部、嬉しかったです。」
ーーーー言ってしまったら、もう戻れない。
しかし、せめて、あなたの返事だけでも。
「本当...なの...か?」
珠羅の声が途切れ途切れ聞こえる。彼も困っているのだろう。急にこんな事を言われて。
「しかし...お前はその幼なじみの事が...」
「あれは、陛下が私の身の回りの事を初めて聞いてくれたので思わず嬉しくて...!」
そう答えると珠羅は顔を真っ赤に染めて口に手を添える。
「そうだったのか...しかし、零...今、もしかして...私の事を...」
思わず珠羅の口は無意識にも優しく微笑む。
「私は今。自分の気持ちにようやく気づいた。君はバイトとしか思っていないだろうとずっと考えていたがしかし、私は零の事がどうしても頭から離れない。」
「この気持ちは、まさに...慈しみ?違う。哀れみ?違う。この気持ちは...零を思う...」
『愛しさ。』
「私はこの気持ちにようやく素直になれる。」
「零。私もお前の事が...」
ーーーー好きだ。
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